全員参加型の討論形式 早稲田小で道徳の研究授業

互いに尊重し合える人間関係を築くには――。学級の児童全員が参加する討論形式で進める道徳の研究授業が6月26日、東京都新宿区立早稲田小学校(宇山幸宏校長、児童553人)で実施された。見学した教員による協議では、日本道徳科教育学会で事業委員長を務める東京都教職員研修センターの朝倉喩美子(ゆみこ)教授が講評した。

座席をコの字型にし、学級全体で意見を交わした

授業は6学年28人を対象に、「自分と異なる意見や立場を尊重する態度を養う」という狙いで展開された。扱ったのは子供と大人の意見が対立する教材「『ダン』をどうする?」。目が見えない子犬のダンを保護し、団地の敷地内で飼いたいという子供たちと、「動物は飼わない規則だ」と拒否する団地役員との間で言い争いになるという内容だ。

児童は三つのグループに分けられ、「子供」「役員」「客観的に判断する観客」として全員が討論に参加。「子供」役は「ダンが死んでしまう」「自分たちも住民だ」と訴え、「役員」役は「認めたら他の動物も受け入れることになる」「犬がいないから、この団地を選んだ人もいる」と反論。

討論は白熱したが、授業者から「『子供』と『役員』、次は逆の立場で討論して」という指示が出ると、ハッとして言葉に詰まる様子が見られた。

見ていた「観客」役からは「命と規則はどちらも大事で、正解を見いだすのは難しい」「新たな案を考えてはどうか」「自分の希望だけを訴えるのは良くない」といった声が上がった。

講評する東京都教職員研修センターの朝倉喩美子教授

終盤では「理解し合うために必要なことは何か」をテーマに意見交換。最後に「授業前の自分に何と伝えるか」という問いを投げ掛けると、各自ワークシートに「相手の言うことが嫌だと思っても、自分も嫌なことを言っているかもしれない」「対立から逃げずに正直に自分の考えを伝え、相手の意見を取り入れると、もっといい案が生まれる」などと書き入れた。

協議では、授業者の東幸恵主任教諭が「思春期になり、進路への悩みが生まれるなどして、子供の立場からの主張に終始する児童もいる中で、役割を交代させたことは有効だった」と振り返り、他の教員は「時間内に収めようとして教員が議論をまとめようとしがちだが、今回の授業では授業者は児童の意見を受け入れながら、授業後の変容に各自の意識を向けさせていた」と評価した。

朝倉教授は「授業の冒頭で、意見が対立した過去の経験を想起させたことで、討論に必然性を持たせたことが深い学びを導いた」と講評。授業のポイントとして▽話し合いの過程を体験させる▽相互理解と寛容の大切さを理解させる▽学習の目的を理解させ、活動に取り組ませる――などを挙げ、「児童の話し合いを価値付け、深めさせるのは、教員の音声言語。考え、議論する道徳では、さまざまな展開への対応力が求められる」と語った。