【柴山昌彦文科相・工藤勇一校長】学校は手段にすぎない

柴山昌彦文科相は6月28日、定期テストや宿題の廃止など先進的な取り組みで知られる東京都千代田区立麹町中学校を視察し、同中の工藤勇一校長から学校改革の考え方について説明を受けた。視察終了後、柴山文科相は「ビジョンのあるリーダーシップがあれば、さまざまな学校改革が現行の制度内でできることを実感した」と述べた。

麹町中を視察する柴山昌彦文科相と工藤勇一校長(左)

この日の視察ではまず、工藤校長が柴山文科相と文科省初等中等局幹部に、麹町中の取り組みを説明する座学からスタート。

工藤校長は麹町中学校で最近話題になった取り組みとして、▽定期テストと宿題を廃止し、単元テストの実施と再テスト制によって基礎学力を着実に定着させる▽固定担任制を廃止して、チーム教育による全員担任制を採用▽服装・頭髪指導を廃止し、生徒会による私服登校期間の導入や、PTA主催による新しい制服のコンペ実施▽AIによる数学指導の実施――を挙げた。

こうした取り組みの背景として、目的と手段を区別する重要性を指摘。例えば、「基礎学力を身に付けさせる」ことを目的とするならば、その手段として「つまずいたところを繰り返させる」ことが望ましい。そうであるならば、定期テストよりも、単元が終了する度にテストを行い、必要に応じて再テストを繰り返すことで、基礎学力の定着を図ることが合理的な考え方だと説明した。

工藤校長はさらに、「学校は手段にすぎない」と強調。「カリキュラムをこなすこと、学習指導要領をこなすことは目的ではない」と持論を展開した。その上で、麹町中の教育目標▽自律―自ら考え、判断し、行動する▽尊重―違いを理解し、他者を尊重する▽創造―豊かな発想を持ち、創意工夫する――と、学外との交流授業など実践例について話した。

続いて、柴山文科相は、タブレット端末のAIアプリを使って生徒が自分の履修状況に応じて問題を解く数学の授業を視察した。この授業は経産省の「未来の教室」とEdTech研究会による実証実験として昨年度から行われているもの。生徒によっては、年間140時間の授業時間で履修する内容を40時間で終えてしまった例もあるという。国語などの授業や、通年利用できる屋内プールなども見て回り、約1時間の視察を終えた。

終了後、柴山文科相は記者団の取材に応じ、「目的と手段をはき違えてはならない、という考え方に大変強く共感した。定期テストの代わりに、単元別の習熟度テストをより頻繁にやることによって、きめの細かい教育カリキュラムにつなげていくなど、公立学校でもできることがまだまだある。ぜひ、全国に横展開させていきたい」と話した。

また、AIアプリを使った数学の学習について、「授業時間数が大幅に短縮できるという成果もでているとのことなので、全国的にしっかりとアピールしていきたい」と評価した。