日本型教育の海外展開 EdTechや『学産協働』浮上

日本の教育の海外展開を推進するため、関係省庁や教育関係機関で構成する「日本型教育の海外展開官民協働プラットフォーム」(EDU-Portニッポン)は7月8日、ステアリングコミッティ(運営委員会)を都内で開き、今後の運営方針について協議した。会議では、EdTechの進展やSTEAM教育の浸透などを踏まえて、従来の文科省だけでなく経産省を事務局に加える案や、民間資金の活用を視野に大学と企業の『学産協働』によって事業計画を立て直すという方向性が浮上した。

官民協働プラットフォームの運営方針を協議したステアリングコミッティ

日本型教育の海外展開推進事業は▽日本の教育の国際化▽親日層の拡大、SDGsへの貢献▽日本の経済成長への還元――の3点を目標に掲げ、2016年度から五カ年計画で進められている。実施主体として「日本型教育の海外展開官民協働プラットフォーム」が組織され、文科省が事務局を担っている。

この日の会議ではまず、18年度の取り組みとしてWEBサイトやSNSの運営、セミナーやシンポジウムの開催など官民協働プラットフォームの運営状況、アジアを中心に各地で実施された計12件の公認プロジェクトの概要が報告された。続いて、19年度には、官民協働プラットフォームを引き続き運営するとともに、ウガンダとエジプトで新たに計2件の公認プロジェクトが展開されていることが示された。

また、プロジェクトに関わった委員から、カンボジアで教員養成に日本のデジタル教材を活用した事例や、日本の高等専門学校が培ってきた技術者養成のノウハウが評価され、モンゴル、タイ、ベトナムで高専をモデルとした教育システムが導入された事例が紹介された。

会議の後半は、来年度予算の概算要求に先立ち、五カ年計画の最終年度となる20年度の事業内容と、21年度以降の事業の在り方について意見交換が行われた。

出席した委員から「日本の教育が世界的にみて優れているのは、規律や礼儀などを含めて社会性を身に付けさせる初等教育と、技術者養成のノウハウを持つ高等専門学校だ。残念ながら、高等教育には国際的な優位性がない」「初期段階で日本型教育を評価してくれた国が、途中から英米型教育に切り替えてしまう例がある。これを避けるために工夫が必要になる」「日本の教育が苦手とする分野に注目すべきではないか。英語のネーティブではない日本人が蓄積した英語学習のノウハウを海外で展開して、海外の人たちと一緒に自分たちも成長するといった発想が大切だ」といった意見が出された。

高専関係者からは「技術者を養成する高専のノウハウを輸出できることは喜ばしいが、日本の高専の生徒たちを国際化するメリットがある。何かを『してあげる』のではなく、学生が相互に行き来して一緒に学ぶことが大切だ」との体験的な説明があった。

こうした発言に対し、「優れたものを海外に提供する発想ではなく、双方向で学ぶ姿勢が大切だ」「ICT環境やEdTechの発達で、海外とのコミュニケーションは格段に容易になった。次の五カ年計画は、こうした視点を踏まえて策定されるべきだ」との意見が出された。

一方、文科省関係者からは、現行の五カ年計画の成果を踏まえ、現状のままでは今後の事業継続に対して財政当局から厳しい見方が出てくるとの見通しが示された。

こうした議論を踏まえ、21年度以降の次期五カ年計画について、委員から「文科省だけでがんばるのではなく、EdTech関連の実証実験を海外でやるなど経産省と一緒に進めることもできるだろう。EdTech関連の企業に声をかけて、民間資金を組み合わせていくことも選択肢になる。EdTech、STEAM、個別最適化といった5年前にはあまり出ていなかったキーワードを反映した計画に作り直すべきではないか」との意見が出た。

その上で、別の委員は「予算については民間資金なども含めて、資金源の多様化に尽きる。今後は文科省が引き続き事務局をやる選択もあるが、大学のコンソーシアムに民間が加わった学産協働という考え方もある。大学ならば、外務省や経産省の関連予算や民間資金の受け皿として動きやすい」と、大学が日本型教育の海外展開にもっと役割を果たす形で次期五カ年計画を考えるべきだとの方向性を提案。こうした次期五カ年計画を部分的に先取りする形で、20年度の予算要求に盛り込むよう促した。

文科省担当者は「文科省がこの事業をやる目的は、教育の国際化にある。大学では国際化の旗印が掲げられているが、初等中等教育でも国際化して、日本の教育を良くしていかなければいけない。海外展開の視点と日本の教育を良くする視点がかみ合うようにしたい」と次期五カ年計画に向けた考え方を説明した。