高度情報技術による教育革新 研究開始した国研がシンポ

今年度から「高度情報技術の進展に応じた教育革新に関する研究プロジェクト」に取り組む国立教育政策研究所は7月9日、同プロジェクトのキックオフシンポジウムを文科省で開いた。教育関係者ら330人が参加。AIとビッグデータの活用事例に関する講演や、研究者らによるパネルディスカッションが行われた。

AIによって児童生徒の発話を可視化した京都市の実証実験の事例報告

講演では、京都市教育委員会の佐々木圭・学校指導課次世代教育推進担当係長が、京都大学やNECと連携して取り組んでいる「未来型教育京都モデル実証事業」の成果と課題を報告。

市内の小中学校で昨年10月から始まった同事業では、協働学習における学びのプロセスを把握することを目的に、AIによって児童生徒のリアルタイムな発話をテキストやグラフで可視化することを試みた。

当初は授業の後で教師に結果をフィードバックしていたが、現在は授業中に発話が少なかったり、キーワードが発せられたりするとバイブレーションで知らせるアラート機能をスマートフォンに実装し、試験を重ねている。

佐々木係長は「まだ短い発話やつぶやきはうまく捕捉できない課題は残っているが、従来のワークシートの記述だけでなく、発話を見ることで、学習の過程に起きている有意義な発言や気付きを評価できるようになった」と述べた。

パネルディスカッションでは、登壇者が高度情報技術を活用した教育の具体像や、現状の課題を議論した。

コンピューターを用いたテスト(CBT)による学習評価の課題を挙げた聖心女子大学の益川弘如(ひろゆき)教授は「CBTによって問題を解く際の思考過程を詳細に記録することができれば、深い学びで得た知識や技能をいかに活用しているか、思考力、判断力、表現力をいかに発揮しながら、問題解決をしているかなどを診断できるようになる。今後は、そうした方向からの技術的検討が必要だ」と強調した。

教育革新を進める上での課題を議論したパネルディスカッション

教育データを収集・分析する情報基盤システムを開発している京都大学の緒方広明教授は、教育データの分析を進める上での制度上の課題を指摘。同教授は「未成年の教育データの利用は、現行制度では保護者の同意が必要になり、手続き上の難しさがある。法律面での検討が必要だ。また、教育データを国レベルで管理するための方法や、利活用ポリシーの策定も必要だ。教科書や教材などのデータを活用する上では、著作権制度の見直しも求められる」と述べた。

公立はこだて未来大学の美馬のゆり教授は、デジタル技術の進展によって、生活や産業が良い方向に大きく変化する「Digital Transformation」(DX)を迎え、教育でも「Learning Transformation」(LX)が到来すると予測。

「人は生涯学び続け、AIやロボットと共生する社会がやってくる。LXでは、人の活動の全てが学習の機会と捉えられるようになり、子供だけでなく、あらゆる年代で学習の変化が起こるだろう」と語った。

同プロジェクトは、今年度から21年度までの3カ年計画で、AIやビッグデータなどの高度情報技術の進展に応じた教育革新の課題に焦点を当て、産官学が連携して課題解決に向けた実証的な政策研究に取り組む。


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