【参院選2019】若者と政治 主権者教育の課題を聞く

7月21日に投開票される第25回参院選は、2016年に選挙権が18歳に引き下げられてから3度目の国政選挙となる。全国の学校で模擬投票などの主権者教育の実践が行われている中、政治や選挙を若者に分かりやすく伝えようと、情報発信や学校と連携した教育事業を展開する「POTETO Media」の取り組みが注目を集めている。同5日に東京都立高島高校で行われた、高校3年生対象の「政治・経済」の授業でゲストティーチャーを務めた同社の古井康介代表に、日本の主権者教育の課題を聞いた。
――政治を若者に分かりやすく伝えようと取り組む中で、感じている課題は。
主権者教育の教材開発に取り組む「POTETO Media」の古井代表
日本の政治の問題点は、政策のターゲットとなっている人がその政策について知らないことだ。実際に、授業でも高等教育の無償化を取り上げたが、当事者であるはずなのに、よく知らない生徒が多かった。 例えば、農家がある問題について困っていると政治家に相談するが、実はその問題に対する処方箋はすでに行政で整えられていることも多い。困っている人や挑戦したい人のために作ったいろんな制度がすでにこの国には存在しているのに、当事者が知らない。 政治におけるスキルとは、行政サービスをうまく使っていくことでもある。政治をうまく使っていけば、政治に対する不信感やタブーはなくなり、自分の人生を豊かにするために政治が持つ側面が見えてくるはずだ。 私自身も、高校生のころ、経済的な余裕がない中で、既存の奨学金制度などを活用して大学に行くことができた。一人では超えられない壁にぶつかって、自分の進路を狭めてしまうのはもったいない。壁を越えるためのジャンプ台があるのなら、それを使ってほしい。政治をテーマにした授業を通じて、そういう政治の使い方を知る機会になればいいと思っている。
――主権者教育の授業における課題は何か。
主権者教育の授業をする上での一番の課題は、授業者である教員依存になってしまうことだ。私たちはその解決策として、政治を学ぶためのパッケージ教材を作っていきたいと考えている。人ではなくコンテンツベースだ。
参院選に合わせベータ版がリリースされた「政治検定」(POTETO Media提供)
開発中の「政治検定」は、今回の参院選に向けてプロトタイプとなるベータ版をリリースした。ゲーム要素を盛り込み、政治の知識やスキルを学べるようになっており、スマートフォンからも楽しめるようにしている。 今後は、主権者教育に関わる教員や超党派の政治家、新聞社などに協力を仰ぎながら、今年中に本試験をリリースできればと考えている。 授業で政治を扱うことに教員が萎縮してしまうのは、今の状況では仕方がない面がある。しかし、主権者として知っておいた方がいい生の情報や政治のリアルな話がある。「政治検定」には研究者や行政も関わっている。ある種の権威があり、中立的な主権者教育の教材を民間が作ることで、学校現場でも利用しやすくなると考えている。私たちは、党派を超えて、さまざまな立場とつながりを築いているのが強みだ。その強みを生かしていきたい。
――若者が政治に興味を持つには、どうすればいいか。
一番の処方箋はやはり教育だと思っている。2022年度に高校の公民科に「公共」ができる。これが一番の狙い目だ。今回の授業では、トランプの「大富豪」をやってから、本当に知ってほしいことを生徒らに考えてもらった。テストや座学でも知識は身に付くが、やはり、疑似的な形でも体験を伴わなければ、生徒は社会の問題に気付かない。 さらにその問題を是正したいと思うのか、このままでいいと思うのか、議論させる場も必要だ。こうしたロールプレーイングゲームのような授業が求められている。ほんの1時間の授業でも、生徒がちゃんと考えたことを実感できる仕掛けが大事だ。 模擬投票をやっても、生徒に何も残らなければ意味がない。主権者教育の一番の肝は「自分たちで世の中のことを考えていかなければいけない」と意識させることができるかどうかだ。細かい知識は時代や制度変更によって変わっていくので、必要になったときに調べればいい。 教員はしばしば、生徒に対して「べき論」を語りがちだ。しかし、それは生徒からすればどうでもいいことではないだろうか。生徒からすれば楽しいことが大事だし、心に引っかかるものが一つでもあった方がいい。 知識として覚えていなくても、学校の授業で一度でも学んだことを記憶しているかどうかはとても重要なことだ。いろんなフックを用意して、生徒が興味を持った瞬間に、いかにインパクトの強いものを示せるかが鍵だ。それを今、私たちは体系化しようとしている。高校における「公共」のスタートは、日本の主権者教育が変わるラストチャンスだ。 私は「POTETO Media」を立ち上げる前に、米国と仏の大統領選挙に立ち合ったことがある。彼らには、自分たちで自分の国を作ったという意識がある。自分たちで作った国という意識が強ければ、政治は自分事になる。 しかし、日本人はその意識が低いために、自分たちが主権者であるという当事者意識も低い。日本の若者に、いかに政治を自分事として捉えてもらうか。これこそが、これからの主権者教育のミッションだ。
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