【藤原和博氏】学校で「なくなっていく仕事」を考えよう

次世代の人材育成について企業と教育関係者が考えるイベント「教育CSRフォーラム2019」が7月11日、都内で開かれ、東京・杉並区や奈良県奈良市で民間出身の校長を務めた藤原和博氏が基調講演で、今後の教育現場の変化について「なくなっていく仕事が何で、なくならない仕事が何かをよく考え、ICTをうまく使いながら対応していくしかない」と語った。

ホワイトボードで教育現場の課題を説明する藤原和博氏

このイベントは、Society5.0時代を見据えて産業界と教育界が育てたい人物像を共有し、次のアクションを考えることを目的に開催された。主催はキャリア教育プログラム開発推進コンソーシアム(事務局・キャリアリンク)で、教員と教委関係者、企業で人事やCSRを担当する社員など140人が参加した。

基調講演を行った藤原氏はまず、「今後10年間に、すごい変化がおきる。世界で50億人がスマホでつながり、動画でイメージを共有できるようになる。そこにAIやロボットもつながる。そして、いまの仕事の半分がなくなってしまう」と問題を提起した。

その上で「分野を決めて考える方が、皆さんが意識を共有できる」として、鉄道の改札が自動化された例を挙げ、「いまの小学生は、改札で切符を切る仕事があったこと自体を知らない」と説明。「鉄道会社の仕事で、次になくなる仕事をあげてほしい」と述べ、参加者同士がアクティブ・ラーニング方式でディスカッションを行うよう求めた。

会場の雰囲気がほぐれたところで、これからの教育は学校が閉じられた空間で行うのではなく、地域社会や企業などが積極的に関わってくる必要性を指摘。「企業が教育に関わるとき、自分たちの仕事を説明しようとして、これからなくなっていく仕事の魅力を子供たちに話して動機付けしてはいけない。へたに職業の知識を身に付けさせるのではなく、なくなっていく仕事が何で、なくならない仕事が何か、それを一緒に考えることが大切だ」とアドバイスした。

続いて、教育現場の課題について、ホワイトボードに書いたグラフを示しながら、2点を挙げた。

ひとつは、勉強ができる子供とできない子供が、はっきり分かれる傾向ができていること。「勉強ができる子供とできない子供の分布は、以前は釣り鐘型で自然な分布になっていたが、現在は両者がフタコブラクダのようにはっきり分かれている」と指摘。これを解決していくには「ICTをうまく使っていくしかない」と述べた。

もうひとつの課題として挙げたのは、教師の質。教員の採用倍率が3倍を切っている現状について、「企業の人事担当者からみると、募集人員の7倍くらい応募がないと、人材の質を維持できないのは常識だ。今後ますます人手不足が深刻になる中、教師の質を保つことは容易ではない」と言及。対応策として「まずICTを使うこと。その上で、チーム学校と言われるように、地域や企業を含めて、みんなで子供を育てるしかない」と語った。

ICTを積極的に導入し、地域社会や企業などが積極的に関与するという近未来の教育現場で、教員はどのような役割を果たさなければならないのかについて、藤原氏は「知識を教える行為は、AIを含め、どんどん機械化されている。だから、教師に求められるのは知識を教えることではない」と説明。

これからの教師像について「算数、歴史、古文、生物なんでも構わないが、学ぶことが好きで教師になり、いまも学び続けている人は、学ぶことがうれしいというオーラを出している。教育は伝染し感染していくものなので、学びが好きな先生がいると、学びが好きな生徒が育つ。だから、教師は教えることよりも、学ぶことで勝負すべきだ」と持論を展開。「学ぶのが好きな教師の仕事は絶対に残る。これは人間にしかできないから」と結んだ。

イベントでは、企業教育プログラムの事例として、阪急阪神ホールディングスが小学校5・6年生向きに街づくりを支える人々や先人の努力を知ることを通じて、児童が自分と街とのつながりに気付いていくプログラムを紹介。経産省と文科省の担当者がEdTechを活用した「未来の教室」や新しい学習指導要領の考え方を説明した。

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