【中邑賢龍教授】コンセプトはスクランブルエデュケーション

「渋谷区が目指す多様な子どもたちが共に学ぶ場―スクランブルエデュケーション」と題したトークイベントが7月16日夜、都内で開催された。本紙電子版掲載中の特集「学級に馴染めない子供たちをどう伸ばすか?」の中邑賢龍教授(東京大学先端科学技術研究センター)のトークセッションなどが行われた。

事業コンセプトを語る中邑賢龍教授(右)ら

同イベントは、東京都渋谷区が展開する「特別な才能に着目した新たな教育システムの構築事業」の一環で、教員ら約100人が聴講。

オープニングで長谷部健区長は「渋谷区では、全ての子供がそれぞれに合った方法で、教室と時間割を超えて学べる仕組みづくりに取り組んでいる」と述べ、「今まで周囲から『ふた』をされ、閉じ込められてしまっていたような子供たちに光を当てたい」とあいさつした。

中邑教授は同区の委託を受け、「渋谷区ラーニング・リソースセンター」をこの日オープンさせたと発表し、「日本財団と連携して展開する『異才発掘プロジェクトROCKET』が開発したABL(Activity Based Learning)プログラムと、渋谷区が全小中学生に1台ずつタブレットを配るなどして進めてきたICTプログラムを提供する」と説明。

ABLについて、「企業や他地域と連携した体験的な活動を通して知識とスキルを習得し、問いを立てる力や深く探究する力を育む」と語り、「障害の有無に関わらず、教室を飛び出して学びたい子供や、教科書とノートだけでは学びにくい子供が、『スペシャルエデュケーション』を受けられる場にする」と語った。

トークセッションには、長谷部区長と中邑教授に加え、東京大学先端科学技術研究センターの湯浅誠特任教授が登壇。

中邑教授は「渋谷区の事業のコンセプトは『スクランブルエデュケーション』だ。渋谷駅前のスクランブル交差点のように、いろいろな方向に向かっていく子供たちが、ぶつからずに進んでいくことを目指す」と語った。

それに対し、湯浅教授は「ぶつかり合うことも必要だ」と持論を述べ、NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の理事長を務める経験から、「食堂にはいろいろな子供が来る。説教する高齢者もいる。ぶつかるのが良い経験になっている」と話した。

これを受け、あらためて中邑教授は「ルールがなくても交差点でぶつからないのは、経験から互いに注意し合い、他人の動きを想像しながら動くから。それと同様に、子供同士が自然発生的に、殴り合うのではなく、互いを尊重し合いながら進んでいく力を身に付けさせたい」と述べた。

長谷部区長は「人間同士のぶつかり合いに対し、行政が過敏になりすぎる傾向がある」と話し、「渋谷区では各自が自分で責任を取る条件で、『自由に遊べる公園』を作ったところ、利用者が突出して多い場所になった。昨今の公園は、住民の苦情を聞き入れさまざまな制約を設けているが、行政は『サイレントマジョリティー』の要望に向き合うべきではないか」と強調。

「同様に、学校に対して果たすべき責務を過度に期待しすぎている風潮があり、学校教育が担わなくてもいい役割を課せられている。『いざとなったら弁護士が対応する』といった強固な姿勢で、地域や家庭が果たすべき役割を見直すべきだ」と締めくくった。