アイヌを巡る最新施策を説明 政府が教科書セミナー

北海道の先住民族アイヌを巡る施策について、政府が最新の情報を教科書出版社に提供する「令和元年アイヌに関する教科書セミナー」が7月23日、都内で開かれ、今年5月に成立したアイヌ施策推進法や、来年4月にオープンする国立アイヌ民族博物館など民族共生象徴空間「ウポポイ」について説明が行われた。

セミナーは内閣官房アイヌ総合政策室が毎年行っているもので、今回で3回目。教科書出版社十数社から担当者らが出席した。

セミナーではまず、アイヌについて、▽日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族▽アイヌ語や独自の風俗習慣をはじめとする固有の文化を発展させてきた民族▽2017年度の北海道アイヌ生活実態調査で調査に協力したアイヌは1万3118人だった――と説明。

続いて、1997年のアイヌ文化振興法の施行と同時に1899(明治32)年に制定された旧保護法が廃止され、2008年に国会がアイヌを先住民族とする決議を全会一致で採択。今年5月にはアイヌ施策推進法が施行され、同時にアイヌ文化振興法が廃止された経緯を確認した。

アイヌ施策推進法は、正式名称が「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」。総則でアイヌが先住民族であるとの認識を明示。アイヌ施策推進地域計画を作成した市町村の事業に国が交付金を交付する新制度や、伝統的な祭祀(さいし)に必要な樹木の採取、サケ漁などを認める法律上の特例措置が盛り込まれている。この交付金制度によってこれまで福祉と文化が中心だったアイヌ政策に、国際交流、産業・観光振興、地域振興・地方創生、環境保全などの政策が加わることになった。

セミナーではまた、2020年4月に北海道白老町で開業する民族共生象徴空間「ウポポイ」について、アイヌ文化の伝承や体験交流活動を行うアイヌ文化復興のナショナルセンターになるとのイメージを説明した。

教科書でのアイヌの記述をめぐっては、新しい学習指導要領で小中高それぞれ、アイヌの存在や文化を取り上げるよう求めている。来年度から使用される教科書では、いまのところ、アイヌ文化振興法の施行やアイヌを先住民族とする国会決議まで取り上げられているケースが多い。

だが、すでに検定を終えた教科書でも訂正申請によって新たな動きを反映できることから、内閣官房アイヌ総合政策室では、今回のセミナーを通じて、今年5月のアイヌ施策推進法の成立など最新の動きを整理して教科書出版社に説明することにした。

セミナーでは、教科書出版社の担当者から「『アイヌの人々』と『アイヌ民族』という言葉はどのような使い分けが行われているのか」との質問が出され、内閣官房アイヌ総合政策室の担当官が「アイヌという言葉には民族の意味も含まれているので、アイヌ民族という表記は使わないようにしている」と答えていた。