世界の教育研究者が日本に集結 世界教育学会が記念大会

世界各国の教育学会が加盟する世界教育学会(WERA)の第10回記念大会が8月5日、東京都文京区の東京大学で始まった。翌6日から豊島区の学習院大学で開かれる日本教育学会第78回大会と共催で、同8日まで講演やシンポジウムなどが行われる。初日は開会式と基調講演があり、約60カ国・地域から約1300人の教育学研究者らが参加した。

開会宣言するイングリッド・ゴゴリン会長

開会に当たり、WERA会長でハンブルク大学のイングリッド・ゴゴリン教授は「世界中の教育学研究者が一堂に集まり、グローバルな視点で教育研究を推し進める場として、2009年に米国でWERAが創設されてから10年を迎えた。WERAの創設時から日本教育学会は重要な役割を果たしてきてくれた。記念大会を日本で開催でき、うれしく思う」とあいさつした。

日本教育学会会長の広田照幸日本大学教授は「これまで日本の教育学は日本語という世界的にマイナーな言語で国内のための研究をしており、内向き傾向が強かった。グローバリゼーションが進み、国境を越えて教育を議論する必要性が高まる中、日本の教育学も変わらなければならない。今大会を日本が世界の教育学研究とつながる契機としたい」と歓迎した。

基調講演では、オタワ大学のアンディー・ハーグリーブス客員教授が登壇し、現代の教育におけるアイデンティティーの重要性を訴えた。同教授は、世界中で起きている社会的な分断の背景には、経済格差の拡大があり、個人のアイデンティティーがおとしめられ、子供たちは不安を抱えて学びから逃走していると指摘。

基調講演するオタワ大学のアンディー・ハーグリーブス教授

「これまでは子供を一人も取り残さないために、世界はテストのスコアを上げることを重要視し、格差の解消を目指してきた。しかし現在は、新しい時代に入っている。子供たちのアイデンティティーや幸福(well-being)を大切にし、彼らが自信を持って社会に貢献してくれるようになるためには、成績や競争を越えて社会への帰属感を高めていく必要がある」と語った。

また、こうしたアイデンティティーと幸福を重視した教育を実現するには、教師の協業的な専門性を発揮させていく必要があると指摘。「教師は連帯と自主性を高めていく教育活動を展開しなければならない。成績や学力だけにとらわれず、多様な感性を持つ子供たちと向き合いながら、将来にわたる成長につなげていく学習のコミュニティーが必要だ。多様なアイデンティティーを持った子供たちを教師が包摂し、社会への帰属感を高めていくことが、子供の学びに対する不安を払拭(ふっしょく)することにつながる」と教師の役割に期待を示した。