ESDやシティズンシップ教育で意見交換 日本教育学会

日本教育学会第78回大会が8月8日までの3日間、学習院大学(東京都豊島区)で開催された。今大会は世界教育学会(WERA)第10回記念大会との共催で行われた。最終日は公開シンポジウムと課題研究が実施され、持続可能な開発のための教育(ESD)を巡って学校文化の価値観を問い直すよう求める意見や、シティズンシップ教育について米国の研究者から「日本では愛国心を育む視点が不足している」といった指摘が出された。

「持続可能な社会と教育」をテーマにした公開シンポジウム

大会には教員ら約700人が参加。実行委員長を務めた同学の斉藤利彦教授によれば、例年以上に多くの学校教員が集まった。斉藤教授は「新しい時代の学びに対する期待や不安、悩みの表れではないか」と話していた。

8日午後に行われた「持続可能な社会と教育」と題した公開シンポジウムでは、日本社会教育学会など四つの学会とNPOから代表者が登壇した。

日本国際理解教育学会から参加した名古屋市立大学の曽我幸代准教授は、ESDを専門に研究している立場から、「ESDでは、生物多様性の喪失や差別・偏見など、多様性や多文化共生に関わる重要なテーマを扱う」と説明。子供が自己変容し、自身の行動について「環境破壊につながっていないか」「他者を傷つけていないか」と振り返れるようになるためには、まず学校が変容する必要があると強調した。

そのうえで曽我准教授は「学校文化に根付いている価値観や習慣を問い直す必要がある。いじめや給食の廃棄など学校で起きている問題を、教員と子供がグローバルな視点で解決することが求められる」と指摘した。

ゲストスピーカーを務めた金沢学院大学の多田孝志教授は、現在のESDの課題として「人間中心主義に陥っている」と指摘。「感性を磨き、さまざまな生物の多様な声を聞く『生命中心主義』にシフトしていければ」と述べた。加えて、「多文化共生が求められる中で、差異を認め合う学びだけでは不十分だ。対立や論争から何かが生み出されると理解する必要があるのではないか」と訴えかけた。

課題研究では国内外の研究者が登壇した

課題研究では「教育とシティズンシップ」をテーマに、国内外の研究者が成果報告と意見交換を行った。米ミネソタ州にあるオーグスバーグ大学のハリー・ボイト教授は「シティズンシップ教育は、『自分には民主主義社会をつくる責任がある』という意識改革を促す。『選挙権を行使すれば民主主義を実現できる』と伝えるだけではなく、『民主主義を実現しなければならない』と意識させることが必要だ」と強調。

日本国内での教育実践を目にした経験を踏まえ、「愛国心を育むという視点が不足しているのでは」と問題提起。「米国のシティズンシップ教育は、社会科や公民科教育、国際理解教育の中で取り入れられており、いずれも『I love America』をスタート地点としている」と語った。

会場の参加者は「日本のシティズンシップ教育は何を目指せばよいか」と質問を投げかけ、ソウル国立大学のカン・デジュン教授は「日本や韓国にとって、民主主義は欧米から輸入した概念であり、教科書に書かれたものにすぎない」とした上で、「民主主義とは何か、考えを再構築する必要がある」と応じた。