【山本崇雄教諭・山藤旅聞教諭】学び続ける子供を育てる

20年以上にわたる公立学校教員のキャリアに区切りをつけ、今年4月から私立新渡戸文化学園で教鞭を執る山本崇雄教諭と山藤旅聞教諭。インタビューの第2回では、学園全体の教育プラン構築を任された二人に、いま取り組んでいる改革の内容、子供たちの変化、さらには思い描く学校教育の未来像を聞いた。


山本崇雄教諭

突き返されることが一つもない
――新渡戸文化学園に着任してから3カ月余り。実際に働いてみていかがですか。

山本 理事長や管理職と、私たち二人のやりたいことの方向性が完全に一致していると感じています。「それはできない」と突き返されることが、一つもありません。

公立学校時代は、まず管理職を説得してようやく実践を始めても、3年スパンでの異動がありました。その点、新渡戸文化学園では初めからGOサインを出してもらえる上、実現するための具体的な議論へスムーズに移れるのがありがたいです。

山藤 全学年30人2クラス、高校は3クラスと規模が小さいため、幼・小・中・高と学園全体で目標や理念を一致させやすいところも魅力です。非認知能力を鍛えるためには、幼・小段階からの教育が大切。現在は幼・小・中・高で一本化した教育モデルを構築している段階です。

まずは、全教員で理念の共有を図る。次はそれを手法に落とし込み、同じベクトルで具体策を講じる必要があります。この作業は時間を要するので、じっくりと向き合う必要があるでしょう。

最上位目標はハピネスクリエイター
――具体的な変化は感じますか。

山本 学園全体の最上位目標を「ハピネスクリエイター(幸せ創造者)」という言葉で定義付けしています。より良い社会にするため、利他的にみんなの幸せを創(つく)り出す人という意味です。

そのために非認知能力を持った「自律型学習者を育てる」ことを下位目標に置き、すべての教育活動を束ねていきます。

この二つを職員会議や研修などで繰り返し確認して、共通認識を図っているところです。

最初はやや言葉が先行気味でしたが、研修会を続け、動き出す児童生徒の姿を共有していくことで、何人かの教員が「自律型学習者ってなんだろう」と深く考え始めました。一方的に教えていた授業スタイルを改めて子供たちに選択肢を与えて選ばせたり、「教科書を教える」スタイルから「教科書を利用して学ぶ」スタイルに授業を変えたり、じわじわと変化を感じています。

子供たちが劇的に変わった

山藤旅聞教諭

山藤 子供たちの反応も劇的に変わってきました。

現在、私と山本が特に力を入れているのが、中学生を中心に展開する「社会を見せる授業」です。生徒が会ってみたいと思うステークホルダーをゲストとして教室に招き、仕事や企業理念について語ってもらう取り組みです。

これまでプラスチックのマテリアルリサイクルの企業や離島の地域おこしに取り組む企業など、10社以上の方に来校していただきました。その方々に共通するのは、より良い未来を最上位目標に据えて生きている点です。生徒たちはそうした姿勢を肌で感じ、社会に出て働くことの意義や本質について考えています。

ゲストの「世の中にないものを作り出す」姿勢に刺激を受け、たった3カ月で「こんなことをやってみたい」と自分たちでプロジェクトを描けるところまで進んでいる生徒たちもいます。

生涯学び続ける自律した人間をつくろう
――この学園で、どのような学校教育を実現したいですか。

山本 依存しない子供、自律して学べる子供を増やしたいです。

各教科の学びは、子供たちのより良い人生、より良い社会を作っていく手段として位置付けています。教員の役割は「こんなおもしろい世界があるよ」「こんな学び方があるよ」と子供たちを社会とつなげ、ワクワクさせながら導き、教科の学び方を教えていくこと。一方的に、一斉に、効率よく知識を教えることから変化しなければなりません。

学びへのモチベーションが生まれ、学び方が分かってくると、子供たちは自主的に、生涯学び続ける自律した人間になります。これが私たちの目指す「自律型学習者」です。

まずは、この新渡戸文化学園でそうした学びの土壌を作らなければならない。ハピネスクリエイターや自律型学習者を育てるために、どんな手法やアプローチがあるのか。3年ぐらいやり続ければ、その本質を理解して実行する仲間も増えてくるでしょう。

仲間が増えれば、私自身は毎日学校に顔を出さなくてもよくなるかもしれません。そうなれば日本中、世界中の学校で、この手法を実践して回りたい。私たちが実現しようとしている学びは、保護者も私たち教員自身も経験したことがない未知のものです。それを多くの学校で実践して、子供たちの変化を直接感じてほしいのです。

教員の能力を個別化し得意分野を磨く

「社会を見せる授業」では2人も座席につき、生徒らに混じって学ぶ

山藤 私は新たな学校の在り方として、教員の能力を個別化するよう提案したいです。

生徒指導や進路指導のプロフェッショナル、教科指導のプロフェッショナル、クラブ活動のプロフェッショナル…。教員がそれぞれの得意分野をさらに磨き、それを尊重した働き方を実現させたいと考えています。

そうすれば、みんなが同じコマ数の授業を持って、部活動を持って、担任か分掌を持って…といった画一的な状況から抜け出せるはずです。

個人的には近い将来、社会と学校をコネクトする新しい役職が、学校の中に生まれると予測しています。学校が多様な人たちと組んで活動していくときには、人脈の作り方や時流の読み解き方などをデザインできる人材が必要になるからです。

今、時代は5年から10年の間隔で大きく変化しています。そして人口減や気候変動など、大人も解決の答えを持たない課題が切迫している。教員の役割は「知識を教え、問題の解き方を解説する」から、社会と連携しながら「生徒とともに創り、学び続ける」メンターとしての役割が重要になると考えています。

(板井海奈)


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