【山本崇雄教諭・山藤旅聞教諭】変化の波を感じるなら…

公立学校から私立学校に活躍の場所を移した新渡戸文化学園の山本崇雄教諭と山藤旅聞教諭。20年以上在籍した公立学校を去ることに不安はなかったのだろうか。3回にわたるインタビューの最終回では、これまでの道のりにあった葛藤や不安、二人が描く今後のキャリアプラン、現在悩んでいる教員へのアドバイスなどを聞いた。


山藤旅聞教諭(左)と山本崇雄教諭
正直つらくなるときもあった
――20年以上在籍した公立学校を去ることに、不安はありませんでしたか。

山藤 私立学校に移る前、何のために教員をしているのか自問自答を繰り返しました。その上で教育のプロフェッショナルとして社会にインパクトを与え、より多くの子供たちを笑顔にするという目標を実現する上で、今回の選択が最適だと判断しました。

公立学校の運営は税金で賄われ、教員は募集対策など考えずに済むため、本来なら公立でこそ真の教育を追求できるはずです。しかし、今の公立学校は違っていて、自分の中で先行きが少し見えづらくなっていました。最後の2~3年間は理想と現実とのギャップにつらくなるときも正直ありました。

山本 公務員ではなくなるので経済的には不安定になります。家族にも相談したのですが、幸い挑戦を後押ししてもらえました。

決定的だったのは、新渡戸文化学園の平岩国泰理事長が、私たちの働き方を応援してくれたことです。さらには私たちの教育法を学園だけにとどめたくない、いろんな学校に広めて日本の学校教育全体をよくしていってほしいとも言ってくださりました。だから他校や企業でも仕事ができているんです。

子供たちの幸せを長い時間軸で考える
――学校現場には、さまざまな要因で理想とする教育を実現できず、もどかしい思いをしている教員も少なくないと思います。

山本 教育実践は「探究型でなければいけない」とか「アクティブ・ラーニング以外はだめだ」とか、オール・オア・ナッシングの考え方に陥ってしまうと、しんどくなります。

私自身、「アクティブ・ラーニングの第一人者」とメディアに取り上げていただくことが多いですが、一斉授業や受験指導を否定しているわけではありません。私も山藤も、一斉授業はできますし、その良さも知っています。ただ最上位目標である子供の幸せを考えたとき、板書だけの授業でよいのか、と問題提起をしているのです。

一斉授業が絶対にだめというスタンスではなく、その良さを認めながら、さらに発展させるための方法を一緒に考えましょうということです。

教員が子供たちの幸せを描くとき、いかに長い時間軸で考えられるかが大切です。卒業までの数年間よりもずっと先の、その子供が成人して、社会に出て、さらに成長を続けていく姿まで考えていけるかどうか。

もちろん、一斉授業で知識を得て受験に合格することも、一つの幸せかもしれない。でもそれで終わりではなく、社会に出た後の子供たちの幸せも一緒に考える必要があります。

視点を広げて、物事を長いスパンで見れば、子供たちが理想と現実の間で苦しい思いをすることは少なくなるはずです。

決して児童生徒同士を比較しないことも大切です。子供たち一人一人の「好き」や成長スピードを尊重してほしいです。

変化の波を感じるなら今変わろう

山藤 未来を生きる子供たちを育てる私たちは、プロフェッショナルとして常に時流を読み解かなければいけません。そういう時代がついに到来したのだと日々痛感しています。

大きな変化の波は皆さんも感じているでしょう。それが分かるのなら、今変わろうとするのか、そのままでいるのか。目先のことを考えると難しい部分もありますが、間違いなく変わらなければいけないはずです。

だからそれぞれの立場で自分が感じる波を信じて、子供たちの笑顔や未来の幸せを考え、一緒に学び続け、未来の教育デザインを創(つく)っていきましょう、と言いたいです。

教室には、「子供たちファースト」の実現に向けた教員たちの約束が掲示されている

山本 今注目されている教育改革や成果を上げている学校には、共通している部分があると思います。そこにはこれまでの学校の常識を覆すものもあります。それに気付き、今の自分の教育をメタ認知し、常にバージョンアップしていかなければ、これからの教員は務まらないでしょう。

例えば、私は「最終的に、教員は生徒から見えない位置に立つことを意識しなければいけない」とよく言うのですが、授業や行事で先頭に立つ教員は多いと思います。こういったことも柔軟に変化させていかなければいけない。自分の経験や自分の学校の常識だけにとらわれている先生は、子供たちを社会につなげることはできません。

後悔は全くない
――改めてお二人は教育者として、あるいは社会人として幸せに働けていますでしょうか。後悔はないでしょうか。

山本 大変なこともありますが、後悔は全くありません。今受け持っている中学1年生が中学3年生になるまでには、何かしら成果が出るだろうと手応えを感じています。子供たちが自律的に動くように「子供たちファースト」で考えれば、大人は変わらざるを得ないでしょう。全ての教員、大人で子供たちの幸せを全力で願っていく教育を全国に広めたいです。

山藤 私も後悔は全くありません。100%やりたいことしかやっていませんし、今は新しい学校で理事長や管理職、職員の皆さん、そして児童生徒たちと創りだしている全ての活動にワクワクしています。手段は変わったかもしれませんが、公立学校時代から目指しているゴールも教育に対しての想(おも)いも一切変わっていません。

(板井海奈)


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