教師は「一歩を踏み出すべき」 丸山文科省初中局長に聞く

文科省で初めて、いわゆるノンキャリアで、日本の学校教育の根幹を支える初等中等教育局の局長に就任した丸山洋司氏に、初等中等教育分野の重要課題を聞いた。丸山局長は、喫緊の課題として学校における働き方改革を挙げ、学校現場がこれまでの働き方を見直す一歩を踏み出すべきだと強調した。


学校の働き方改革が喫緊の課題
――局長就任に当たっての抱負は。
「与えられた責務は重大」と話す丸山局長

質の高い学校教育を維持し、発展させていくため、教師の業務負担軽減に向けた対応や幼児教育無償化の円滑な実施を目指す。また、教育の情報化への対応では「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」を踏まえた学校での先端技術活用の推進、さらには、いじめや児童虐待防止への対応など、課題は山積している。

それぞれの課題に対応しながらも、世界的に評価の高い日本の学校教育の、今後の在り方をしっかり考えていかなければならない。与えられた責務は重大だと認識している。

――山積する諸課題の中でも、喫緊の重要課題は何か。

やはり学校における働き方改革だろう。これには特効薬と呼べるような方策がない。われわれは「総力戦」と呼んでいるが、文科省でも今年1月に出た中教審答申を受けて、教師の勤務時間の上限を定めたガイドラインを策定したり、社会に対してメッセージを発信したりするなど、大臣を中心とした「学校における働き方改革推進本部」で取り組んでいる。

また、働き方改革を進める上では、教職員定数の改善や部活動指導員の配置なども非常に重要だ。文科省としてこれらの施策をしっかり打ち出し、実行していきたい。

一方、学校現場でも業務の見直しに積極的に取り組んでほしい。多くの教師が過労死ラインを超えて働いている実態がある。文科省はこれまでも、業務改善に関する取り組み状況について調査を実施してきた。この内容を抜本的に見直して、各教育委員会、各学校のグッドプラクティスを収集、整理し、発信していくことで、横展開を図っていきたい。

教師の意識改革が必要
――グッドプラクティスとして注目している自治体は。

例えば、横浜市教育委員会では、ICカードを導入して勤務時間の実態把握を始めた。導入当初の昨年4月時点と1年後の今年4月で、月当たりの時間外勤務が「過労死ライン」を超えている割合は、昨年では23%だったのが今年は18%に、5ポイントも減少し、改善していることが分かった。

また、京都府宇治市教育委員会では、計画的に学校への複合機の導入を進めている。学校現場では丁合機能の付いたコピー機が導入されていないところが多く、放課後になると、手の空いている教師が会議室に集まって、資料を手分けして作成するようなことが日常茶飯事ということが、実態としてあった。一般の事業所では当たり前に導入されているような高機能な事務機器が学校には入っていないし、同じ印刷機を何十年も使い続けている。

私は最近、小中学校に出向くときは、授業を見せてもらった後にその学校の印刷室ものぞくようにしている。また、自治体の教育長や首長と面会するときも、そういう話題を振るようにして、「ぜひ学校現場に足を運んで、働き方改革につながるような事務機器の整備も検討してほしい」と伝えている。

それから、学校現場を見ていてとても感じるのは、ベテラン教師を中心に、何十年もやってきたこれまでのやり方を変えるのが難しいと考えていることだ。

中教審答申では、これまで学校や教師が担ってきた業務を①基本的には学校以外が担うべきもの②学校の業務だが必ずしも教師が担う必要はないもの③教師の業務だが負担軽減が可能なもの――の三つに分けて整理した。

しかし、学校現場の意識として、これらが示す内容を自分事として考えるまでには、少し時間が必要だという印象だ。教育委員会から学校に対して業務改善の手法を働き掛けるのも重要だが、業務改善調査で出てきたグッドプラクティスの中から「これならうちの学校でも実行できそうだ」というものを選んでもらい、それぞれでカスタマイズしながら実践していってほしい。

学校が置かれている状況はさまざまなので、やり方を枠にはめるのは難しい。条件整備を進めると共に、いろいろな事例を示していくことが文科省としてできることだと思う。学校の働き方そのものが変わらないと、改革はうまくいかない。

日本の学校教育を持続可能なものに
――給特法の改正については。

中教審答申でも給特法について触れている。給特法の基本的な枠組みを前提として、超過勤務手当の支出ではなく、教師の業務時間縮減のための取り組みを総合的かつ徹底的に推進することが、働き方改革の大前提だ。

答申では、中長期的な課題として、労働法制や教師の専門性の在り方、公務員法制の動向などを踏まえながら、給特法を含めた法制的な枠組みについて、必要に応じて検討を重ねるとしている。それを念頭に置いて取り組んでいく必要がある。

また、かつて行われていた夏休み中の休日のまとめ取りについては、年間を通じて忙しい時期とそうではない時期があり、一定期間に集中して休日を確保することが可能な教師にとっては、有効な手だてになり得る。地方自治体の判断で1年単位の変形労働時間制の適用ができるように法制度上の措置を求める提言もある。この方策は前向きに取り組んでいきたい。

ただ、具体的な法案の内容や提出時期は現在、検討している段階だ。中教審答申にもあるように、教職の魅力を高め、志もあり、優秀な人が働き続けることができるようにするための勤務時間制度について、必要な検討を進めていきたい。

――読者にメッセージを。

学校の働き方改革は教師個々の意識改革が不可欠で、一人一人が自分事として捉えてもらうことが重要だ。これだけ変化の激しい社会の中で学校そのものも変わらなければならないし、現場もそう感じているはずだ。これまでの仕事のやり方を見直すことの難しさは分かるが、変えるべきところを変えることが、子供たちのためになると考えて取り組んでほしい。

まずはできることから一歩を踏み出す、それが日本の学校教育を持続可能なものにしていくことにもつながる。働き方改革を現場の教師らと一緒に進めていきたい。


【プロフィール】
丸山洋司(まるやま・ようじ) 文科省初等中等教育局局長。1982年、大分医科大学(現大分大学)に採用後、88年に文部省(現文科省)転任。初等中等教育局特別支援教育課長、高等教育局私学部私学助成課長を経て、18年10月から大臣官房審議官。19年7月から現職。57歳。大分県出身。好きな言葉は最澄の「一隅を照らす」