日本史の教科書は想像力で読む 人気予備校講師が講演

現役の人気予備校講師が大学受験に役立つ読書メソッドを伝える連続講座の第1回が8月19日、都内の大型書店で開かれ、日本史が専門の野島博之講師が「教科書を使って頭脳を鍛える」と題して講演した。

中世の裁判制度の図を示しながら、教科書の読み方を説明する野島博之講師

冒頭、学習参考書が並ぶ書棚の前で、野島講師は「最新の研究成果は、改訂によって10年から15年遅れで教科書に反映される。その教科書の範囲を工夫して出題されるのが大学入試。だから、どこが改訂された箇所なのか、よく知っていないと、入試で一番よく出るところを勉強しないまま、試験会場に向かうことになってしまう」と説明。鎌倉時代の土地所有をめぐる裁判を題材に講演を進めた。

裁判の流れを説明した図を手に持った野島講師は「中世の土地所有をめぐる裁判は日本史の教科書に必ず出ており、受験で頻出するところ。2015年の教科書改訂では、この図にキャプションが追加された」と述べ、「教科書を読むときには、この図をみて何を思うかが、ポイントになる。想像力を働かせて読むことが大切だ」とアドバイスした。

その上で「この裁判は世界史的に見ても、極めて公正公平に行われたことで知られている。公正公平はこの裁判制度のプラス面だが、ではマイナス面は何だろうか。想像力を働かせて、そのマイナス面を考えることが日本史を学ぶ面白さであり、教科書から出題される大学入試への対策でもある」と話した。

会場を日本史関連の書籍を収めた文庫や新書のコーナーに移動して講演は続いた。野島講師は「中世の裁判制度のマイナス面を考えるときには、定評のある書籍を読むことが参考になる。マイナス面を挙げれば、まず訴訟に時間がかかりすぎること。これは現在に至るまで、長い時間をかけて審議すれば公正な答えが出るという日本人の意識を育むことにもなった。次に訴訟に時間がかかるため、旅費や滞在費など多額の費用が必要になることもマイナス面だ。高いレベルの訴訟能力が必要なこともマイナス面になる」と回答を挙げた。

さらに「最後に考えてほしいのは、こうしたマイナス面があるために、資金も訴訟能力もないため、裁判を起こすことができず、泣き寝入りした一般人がたくさんいたであろう、ということだ。これは教科書には載っていないが、そこまで想像力を膨らますことができれば、さまざまな記述式の問題にも対応できるようになる」と述べた。

参加した高校1、2年生らとの質疑応答では、日本史を選択する高校生が減っている中、「あえて日本史を選択する意味はどこにあるのか」との質問が出た。

野島講師は「いまの入試の問題点が背景にある」として、理系志望の高校生のほとんどが点数の取りやすさから社会の科目から地理を選んでいる現状を指摘。「でも、大学受験を終え、海外に出て行ったとき、あなた方は日本人として必ず日本のことを聞かれるはず。そのときにきちんと答えるためにも、日本のことを知っておくことは将来の役に立つでしょう」と返した。

連続講座は「ジュンク堂書店で学ぶ 高校生のための本棚会議」と題された全5回シリーズ。次回は8月22日に、英語をテーマに東京・池袋のジュンク堂書店池袋本店で行われる。野島講師は黒いサングラスをトレードマークにした「グラサン講師」として知られ、現在、学研プライムゼミで講師を務めている。