山中伸弥氏、池上彰氏ら 理系人材育成を語る

科学技術振興機構(JST)は8月22日、「国際科学オリンピック日本開催シンポジウム」を東京大学(東京都文京区)で開催した。2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授による講演や、ジャーナリストの池上彰氏をモデレーターとしたパネルディスカッションなどが行われ、教員や小中高校生ら約500人が聴講した。

iPS細胞について説明する山中伸弥教授

山中教授は「iPS細胞がひらく新しい医学」と題して基調講演し、冒頭で自身の父について、町工場の経営者を務めていたが、教授が高校生のときに輸血によって肝臓が病に冒され、入院したと語った。

「『父を救いたい』と1987年に臨床医になったが、翌年に58歳で死去した。何もできなかった悔しさから、研究の必要性を痛感し、大学院に入って研究者の道を歩むようになった」と説明。父の病が、当時は世界でも知られていなかったC型肝炎だったことが89年に分かったと明かした。

iPS細胞作製成功までの過程を振り返り、「きっかけは『父のような患者の力になりたい』という願いだった。『必要は発明の母』だったと言える。一方、予想もしなかった実験結果が成功につながった。これは、『偶然は発明の父』と表現できるのではないか」と締めくくった。

続くパネルディスカッションには、山中教授のほか、2005年に日本人で初めて国際生物学オリンピックのメダリストとなった東京大学大学院助教の岩間亮さん、19年国際化学オリンピックで金メダリストとなった栄光学園高校2年の末松万宙(まひろ)さんらが登壇。

モデレーターを務めたジャーナリストの池上彰氏が「日本の科学研究の課題は」と尋ねると、岩間さんは「1年後に結果が出る研究でなければ認められないといった風潮がある。すさまじいスピードで物事を考えられるスーパーマンばかりが評価され、じっくり研究する環境になっていない」と指摘。

池上彰氏(左)をモデレーターとしたパネルディスカッション

末松さんは「今の日本の教育は、ある特定の分野を突き詰めたい人に適していない」と述べ、「中学受験の勉強で難しい問題にチャレンジするうちに、理科や算数が好きになり、中学校の部活動で、研究に興味を持つようになった。一方で、国語や社会も同じ比重で勉強しなければならない。やりたいことに専念できる社会になるといい」と話した。

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院で特命教授を務めている池上氏は「人と違っていても自分の興味・関心を追究することで、SDGs達成など世界に貢献できるなら、これほど素晴らしいことはない」とコメントした。

最後に会場へのメッセージを求められ、山中教授は「小さかった頃に毎月読んでいた子供向けの科学雑誌とその付録が、科学に関心を抱くきっかけになった」と述べ、科学の面白さを幼少期に伝える大切さを訴えた。

「国際科学オリンピック」の日本開催は、東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせ、20年に生物学、21年に化学、22年に物理、23年に数学が予定されている。