【未来の先生展】教育の不易とは 工藤勇一校長が鼎談

教育のさまざまな課題に取り組むイノベーターらが集まる日本最大級の教育イベント「未来の先生展2019」が9月14~15日、東京都千代田区の明治大学を会場に開かれた。開催記念として、「学校教育の不易流行をつむぎだす」をテーマにした鼎談が15日に開かれ、大勢の立ち見客が出る中、工藤勇一・同区立麹町中学校長や土屋恵一郎・明治大学学長、出口治明・立命館アジア太平洋大学学長が登壇した。

学校教育での手段の目的化を指摘する工藤校長

定期テストの廃止や全員担任制の導入、企業と連携した多様なプログラム実施などの改革で注目されている工藤校長は「現在の学校が抱えている課題は、手を掛ければ掛けるほど、生徒が自律できなくなることだ。学校が学力を上げることだけに注力し続けた結果、つまずいたところを繰り返しやらせて勉強時間を増やし、子供の自律性を失わせてしまった。日本の労働生産性が低いのも学校が原因だ。学校の教育活動の中にある手段の目的化は山ほどあり、教員はそれに忙殺されている」と問題提起。

出口学長は、全学生の半数を留学生が占める立命館アジア太平洋大学の教育理念に触れながら、「これからの教育を考える際に、今の日本がどういう状態に置かれているかを踏まえなければならない。平成の30年間を振り返っても、GDPは下がり続け、国際競争力も低下した。これまでの日本の教育は製造業のモデルを取り入れてきた。これでは、スティーブ・ジョブズのような未来を創造する人材は育たない。新しい産業を興さなければ、この国に未来はない。今までの教育とは真逆に、好きなことを徹底的にやるような子供や、自分の考えをはっきり言える子供を育てなければならない」と述べた。

土屋学長は明治大学の建学の精神を振り返りながら、これからの大学教育の役割について言及。「大学は主体的に学ぶ場所、まさにキャンプだ。その考え方を日本の大学はどこかで忘れてきてしまった。大学に行くことが目的ではない。大学の教員は学び合いやファシリテーターの役割を担うようになる。図書館をはじめとする施設も、人が集まり議論をするための学びの共同体にしていかなければならない」と強調した。

学校教育における不易と流行を議論した鼎談

「教育における合意形成をどう図っていくか」との話題が振られると、工藤校長は「EUを創設したとき、欧州各国のトップは平和を乱す原因を全て取り除こうと本気で対話した。日本ではこうした上位目標を設定し、対話することをしていない。『みんな違ってみんな良い』という段階まではできているが、全員が納得することまではやっていない。もしそれを教育で根付かせることができれば、日本は変われる」と応じた。

さらに「日本の教育は忍耐や協力、礼儀を求めがちだが、いつの時代にも変わらない教育における不易とは、子供が自分で考えられるようになることではないか」と語った。

今年で3回目となる「未来の先生展2019」は、2日間で約130のプログラムが組まれ、教育関係者ら延べ約3400人が参加した。実行委員長の宮田純也Teacher’s Lab.代表理事は「未来の先生展も3回目を迎え、過去最大の盛り上がりとなった。次回はさらに洗練させ、参加者や関係者により貢献できるように努めたい」と成果を語った。