「入試はミッションが決める」大学入試センターがシンポ

大学入試の在り方を考える、大学入試センター主催のシンポジウムが9月19日、「高大接続における特別選抜の意義と課題-広義の育成型入試に焦点を当てて-」と題して、都内で開催された。基調講演では、川嶋太津夫・大阪大学高等教育・入試研究開発センター長が海外の大学入学者選抜の考え方を紹介した上で、日本の大学入試が抱える課題を指摘した。続いて、受験生に課したレポートを何度も書き直させる独自のAO入試や、受験前の高校生に個別面談を繰り返すアサーティブプログラムで、入試改革に成果を上げた大学の事例が報告された。

基調講演を行う川嶋太津夫・大阪大学高等教育・入試研究開発センター長

開会のあいさつに立った山本廣基・大学入試センター理事長は「大学入学共通テストの実施が迫ってきた。新テストの作題方針や英語民間試験の活用に社会的関心が集中しているが、今回の高大接続改革では、学力の三要素を多面的総合的にどのように評価するかが重要な課題だ」と指摘。

その上で、「試みの一つである育成型入試は、入学後の教育が円滑に行われるよう、学習の意識付けや動機付けをみることが特徴だ。入学者の特性に応じて、学内の教育体制やカリキュラムを調整する大学もある。こうした試みは高大接続改革の具体的事例として、大きな意味を持つ」と述べ、今回の大学入試改革で高大接続を前提にした育成型入試の意義に改めて注目するよう促した。

基調講演では、川嶋センター長が高大接続による大学入試改革について、「大学がどのようなミッションを掲げ、それにふさわしい入学者を選ぶかが重要だ。ミッションとは使命、目的、役割、存在意義という意味であり、全ては大学が自ら掲げるミッションから始まる」と述べ、海外の事例を紹介した。

例えば、米ハーバード大学では社会変革に貢献することをミッションに設定し、そのために多様な学生集団を形成する必要があるとして、出身地や人種など多様性に富んだ学生の確保を入学者選抜の基本方針に掲げている。

日本の大学では、多面的総合的な選抜を行う前提として、一貫した教育理念(ミッション)の下で、AP(アドミッション・ポリシー=入学者受け入れの方針)、CP(カリキュラム・ポリシー=教育課程編成・実施の方針)、DP(ディプロマ・ポリシー=卒業認定・学位授与の方針)の3つのポリシーに整合性を持つことが重要だと訴えた。

その上で、日本の大学入試が抱える課題として▽入試の精緻化よりも、入学後の教育の在り方を変えるべき▽入学定員制度がある限り、選抜基準をより明確にすると弊害が大きくなる――と指摘。こうした課題があるために、ほとんどの大学がAPを完全に実現できなくなり、受験生も不合格による自己否定感を味わうことになる、と説明した。

川嶋センター長は具体的な改善策として、▽個別学力試験を廃止して、書類審査と面接で入学者選抜を行う▽秋入学を導入して入学者選抜に十分な評価時間をとる▽都会の私立校と地方の公立校の違いなど受験生の背景を考慮した上で、一律的なテストではなく、公正な評価で入学者を選抜する▽大学はどのような学生と学生集団を求めるのかを明確にする――ことを提言した。

大学入試改革の事例報告では、まず、渡邉正人・聖学院大学基礎総合教育部長が、受験生に1~2カ月かけた事前相談によるレポート作成と数度の書き直しを課す独自のAO入試について説明した。渡邉氏は「入学者選抜は、入学前から始まる大学教育。『面倒見の良い大学』『入って伸びる大学』として評価を得ており、一人一人の学生を見て育てることができる」と説明した。

次に志村知美・追手門学院大学教務部アサーティブ課長は、志願者数の下落に危機感が高まり、学生の実態調査を行ったところ、他の大学に不合格となり不本意なまま入学した学生が多い実態に衝撃を受けた経緯を説明。オープンキャンパスなどを通じて高校生約1000人に職員が個別面談を繰り返すとともに、高校生の基礎学力を支援するウェブサイトなどを通じて、高校生の将来を一緒に考えるアサーティブプログラムを導入した結果、第1志望での入学者が2011年度の12.7%から、19年度には52.5%まで高まった事例を報告した。

また、美濃地裕子・島根大学教育・学生支援機構大学教育センター准教授は、16年度から導入した地域貢献人材育成入試の成果を説明した。将来的に地元での活躍を目指す学生向けの募集枠を各学部に設定し、それぞれの領域の専門知識を身に付け、地域のリーダーとなるプログラムを導入。大学4年生となった1期生の多くが地元での就職が内定していると話した。

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