「もう、やってられない」 中教審で現場教師の本音訴え

「この審議会の議論は、もっともだと思う。でも、学校現場がどう考えるかを思うと、気が重くなってしまう。限られた時間しかないのに、学校に期待されていることが、あまりにも多すぎると感じるからだ」――。ICT活用と小学校の教科担任制について論点整理をまとめた10月4日の中教審初等中等教育分科会で、出席した委員から学校の教育現場への配慮を求める、痛烈な意見が表明された。新学習指導要領の完全実施に向けた道筋を議論している中教審初等中等教育分科会は、いわば教育改革の本丸。そこで展開された本音トークは、出席者に強い印象を残したようだ。

教育改革を議論した中教審初等中等教育分科会

発言したのは、初等中等教育分科会の委員を務める西橋瑞穂・鹿児島県立甲南高校校長。ICT環境や先端技術の効果的な活用によって、教育現場に大きな変革を促す論点整理案を巡る自由討論の一場面だった。

「世の中が大きく変わっていて、教育も変わらないといけないことはよくわかる」。西橋校長はこう切り出した。いま高校の教育現場が大学入学共通テストや民間英語検定試験、新学習指導要領の導入に直面し、大学入試改革への対応にも追われていることは、容易に想像できる。相当な作業量であることは間違いない。

「新しいことを教師全員が理解するために研修が必要だ、という声が聞こえてくる。教師が勉強するのは当然だが、研修を増やすと言っても、それが簡単にできるのか」

西橋校長は「本校は授業時間が週35時間なので、7時間目が終わるのは勤務時間終了前25分となる。その後に研修はできない。だから研修するためには、授業をカットするしかない。生徒が学ぶ内容は非常に多いので、本当は授業をカットしたくない。職員会議なども年間計画に組まれている」と続けた。

「本当に時間的には一杯一杯なのに、(残業時間を減らす)働き方改革をやれ、と言われる。そこに新しいことをやらなければならない。現場では『言っていることと、やっていることが、全く違うじゃないか』と思っているのが現実だ」

プログラミング教育を例にとり、「その現実の中で、横文字の新しい概念が次々と飛び出してくる。正直、意味がよくわからない。プログラミング教育と言われても、なんとなくイメージがあっても、実際にはよくわからない」と説明。

「何事も説明した側は『ちゃんと説明した』と言う。でも、それでどれぐらい伝わるのか。説明する側と受ける側が頭の中を一致させることは、かなり難しい。教師は生徒に教えるとき、『だいたい2割しか伝わらない』とよく言っている。『この前教えたのに、全然分かっていない』と話す」と述べ、一方的に方針を通知して終わってしまう文科省や教育委員会をちくりと皮肉った。

西橋校長が強く訴えたのは、学校の教育現場に対する想像力だ。

「もっと想像力を持って施策をやらないと、現場はついてこない。現場がついて行きたいと思っても、ついていけない。次から次に要求があり、そこに働き方改革と言われる。これでは『もう、やってられない』と、現場の教師は思ってしまう」

学校の教育現場に対する想像力が足りなかった例として、西橋校長は大学入学共通テストが採用した英語民間試験を挙げた。

「英語民間試験の問題がいつまでもごちゃごちゃしているのは、制度を設計したときに想像力が不足していたからではないか。例えば、離島の生徒は受験するのに2泊3日が必要になる。悪天候だったら、さらに時間と費用が必要になる。そういう想像力が必要だ」

西橋校長は「急いで改革しなければいけないのはわかっているし、なんとかしなければいけないと本当に思っている。でも、学校の実態をもっともっと尊重してほしい。改革、改革といっても、全国津々浦々の学校には、事情がさまざまある。本当に想像していただければと思う」と言葉を結んだ。

この発言を受け、初等中等教育分科会会長の荒瀬克己大谷大学教授は「私たちは子供たちの未来を考えて議論をしているが、学校の先生には『やってられない』という気持ちもあると思う。私たちの責任の重さを改めて思い知るご発言だった」と述べた。