変形労働時間制は再考を 署名活動の現職教員らが集会

現職の高校教員と過労死遺族らによる「給特法のこれからを考える有志の会」は10月8日、都内で緊急集会を開き、給特法改正案で導入される変形労働時間制について、再考を求めた。呼び掛け人で高校教員の斉藤ひでみ氏(仮名)が実施した変形労働時間制の反対署名には、4日までに3万1830筆の賛同が寄せられた。有志の会では集まった署名を踏まえ、衆参両院議長宛てに請願を提出するほか、萩生田光一文科相にも面会した上で署名を手渡す意向。

変形労働時間制の問題点を訴える斉藤ひでみ氏(左)

臨時国会に提出される予定の給特法改正案では、公立学校教員の超過勤務時間の上限を1カ月45時間、年360時間以内と定めた「上限ガイドライン」を文科相が定める「指針」として位置付けた上で、1年単位の変形労働時間制を自治体が条例を定めた上で導入できるようにする。

集会で有志の会は、変形労働時間制の導入は、子育てや介護などの事情を抱える教員にプレッシャーを与え、教職の魅力向上にはつながらないと批判。導入見送りを求めた。

斉藤氏は「1年単位の変形労働時間制の目的は何なのか。休日のまとめ取りならば、岐阜市のような2週間の閉庁日を設ければよい。業務量を削減したり、現在の業務量に合わせて教員定数を増やしたりするなど、給特法は抜本的な改正が必要だ」と訴えた。

中学校の体育教員だった夫を過労死で亡くした工藤祥子さんは「現場の声が国に届いていないだけでなく、国の動きも現場に届いていない。中教審答申を受けて自治体や学校で働き方改革が進んでいるが、実感がないという声があるのも事実だ。教員の働き方が注目される中で、現場が当事者意識を持たないと良くなるものも良くならない。教員が疑問を投げ掛けたり、声を上げていったりしなければいけない」と呼び掛けた。

「学校の働き方を考える教育学者の会」の内田良名古屋大学准教授と、広田照幸日本大学教授(日本教育学会会長)も出席し、変形労働時間制の問題点を指摘。

内田准教授は複数自治体の教員の勤務時間データから、8月であっても教員は時間外勤務をしている実態を示した上で、導入の条件として▽毎月の労働時間が大幅に減るまでは導入しない▽これまで教員が8月に取得していた有給休暇を確保する▽変形労働時間制を導入する場合の具体例を国が明示する――ことを要請。

「どの教員もゆとりを持てなければ、変形労働時間制は導入できない。現場では、定時が延びる気持ち悪さや、夏休みも結局休めないのではないかという行政への不信感がある。国は現場が前向きになれるような約束を示すべきだ」と批判した。

広田教授は、変形労働時間制の問題点として、実質的な教員の労働は減らないことや、制度の運用段階でなし崩しになってしまう可能性を懸念として挙げ、給特法を抜本的に見直す必要性を指摘。

「業務の大幅な削減は努力目標のようになっていて、現状のままでは変形労働時間制を導入するのは危険だ。学校の教員が人間的な生活をすることはもちろん、これからの教員は常に学び続けることが求められている。教員が本を読む時間すらもないような状況では、日本の教育はだめになる」と強調した。


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