ノーベル賞の吉野氏「チャンスいっぱいある」 若者にエール

「朝刊の見出しを見て、ようやくドッキリカメラでも、まぼろしでもないと実感した」――。

日本化学会の川合眞紀会長から花束を受け取る吉野彰・旭化成名誉フェロー

ノーベル化学賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェローが10月10日、都内で受賞記念記者会見を開き、現在の心境をユーモアたっぷりに語った。将来の化学界を担う子供たちに対しては、「身近で分かりやすいテーマや製品があれば、子供は必ず好奇心を抱く」と、自身の幼少期を振り返りながらアドバイスした。

化学研究の鍵を握る産学連携について理想的な形を問われ、「比較的うまく進んでいるのはドイツ。産業界がリードする形で予算とテーマを下ろし、官学はそのテーマに対して責任を持っている。産学連携のあるべき形でもある。日本の産業界は群雄割拠的なところがあって、そういう意味で官学を引っ張っていくだけのリーダーシップを発揮し切れていない」と指摘した。

化学に興味がある若者へのメッセージを求められると、「若い人には『もう全て(研究を)やり尽くされたんじゃないか』と、理系に対する一種の閉塞(へいそく)感があるかもしれない。だが、実際は自然界で起こっている現象の中で、われわれ人間が理解できていることは1~2%しかない。手つかずで残っている98%の中から、自分で仮説を立てて、実現する手段を見つけた人は必ずノーベル賞をもらえる。そういうチャンスはいっぱい残っている」と強調。

「ずぬけていい特性をひとつ持つこと、広い分野で関心を持ち続けること。この2つがそろうと、独創的なアイデアが出せるようになる」とエールを送った。

また、吉野氏が研究者を志すきっかけとなった本として脚光を浴びた、英国の科学者ファラデーの『ロウソクの科学』が書店で在庫切れになっていることについて、ある出版社から現代版の『ロウソクの科学』の執筆を打診されたと明かした上で、「時間がないので執筆は難しいが、私がそうだったように、今の子供たちにも何かのとっかかりになってくれるのではないか」と話した。

小中学生の理科離れが懸念される中、好奇心を持つためにどのような環境づくりが必要かという教育新聞の質問に対しては、「今回の私の受賞がひとつのきっかけになってくれれば。子供の頃を振り返ってみると、先ほども話した本が大きなきっかけになった。身近で分かりやすいテーマのシナリオや製品があれば、子供は必ず好奇心を持つ。出身地の千里山(大阪府吹田市)は、万博以前は竹やぶが多く、自然いっぱいの環境でセミをとったりしながら育ったのも(化学への好奇心が芽生えた)ひとつだと思う」と語った。

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