「いじめ防止法に欠陥」主張 文科省、川口市教育長指導

埼玉県の川口市立中学校の元生徒がいじめ被害を巡り市を相手取って起こした裁判で、市側がいじめ防止対策推進法について「欠陥がある」と主張したことについて、文科省が10月16日までに、同市の茂呂(もろ)修平教育長を呼び出し、法を守るよう異例の指導を行っていたことが分かった。

市側が同法を「欠陥がある」と主張したのは9月18日、さいたま地裁(岡部純子裁判長)の第6回口頭弁論で提出した準備書面。それによれば、市側は同法がいじめを「行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義していることに対し、「定義は被害者の主観に基づくもので、いじめを広く認めている」と主張。

「苦痛を受けたと声高に非難する者が被害者になり、精神力や社会適応能力の高さなどから相手を非難しない者が加害者にされる」と述べ、「法律として整合性を欠き、教育現場に与える弊害を看過しがたい欠陥がある」と訴えた。

同法に基づき設置された第三者委員会が2018年3月に元生徒へのいじめを認定したことについても、「第三者委は定義に該当するか認定したもので、違法な加害行為を認定したものではない」とし、市側に不法行為はないことを訴える新たな主張を展開した。

これについて文科省は10月10日、記者団に対し、「川口市教委が行政機関でありながら、国権の最高機関である立法府が定めた法の趣旨を理解せず、さらに法が誤っているなどと公的な場で主張したのは、あってはならないことだ」とコメント。

翌日には地方教育行政法に基づいて同市の茂呂教育長を呼び出し、法を遵(じゅん)守するよう指導した。同省生徒指導室によれば、茂呂教育長は「同法に欠陥があるとは思っていない。準備書面に記載されていることは、川口市の本心ではない」などと釈明し、「法律は守る」と応じたといい、同室は「市教委が今後しっかり対応するよう見ていく」としている。

市側が準備書面で同法を「欠陥がある」と主張したことについて、市側を訴えた元生徒の代理人を務める石川賢治弁護士は、「川口市の主張は、いじめの定義を法以前の欠陥のある定義に戻してしまおうというもので、とんでもないことだ」と指摘し、「法の欠陥の有無を述べるなど許されない」と厳しく批判した。

同市内では先月、自殺したとみられている市立中学校の元生徒が、市教委を「大ウソつき」と非難する記述を残している。文科省はこのいじめを巡り市教委に何度も指導を繰り返してきたが、トップの教育長を呼び出したのは今回が初めて。


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