変形労働時間制導入は見送りを 現職教員らが署名提出

臨時国会での審議が始まろうとしている給特法改正案について、その柱である1年単位の変形労働時間制の導入に反対する署名活動を展開した、現職の高校教員である斉藤ひでみ氏(仮名)らは10月28日、文科省と国会に対し、集まった3万3155筆の署名を提出し、変形労働時間制の導入見送りを求めた。

藤原文科次官(右)に署名を提出する斉藤氏(左)と工藤氏(中央)

署名に合わせ文科省に提出された要望書では、変形労働時間制を導入することにより、延長した定時にまで会議などが詰め込まれ、業務がいっそう増えたり、教員の過労死につながりやすくなったりするだけでなく、子育てや介護を抱えている教員が働きにくくなると指摘。

各自治体で学校の働き方改革が十分に進んでいない中での導入は、働き方改革に逆効果をもたらすとした。

署名を受け取った藤原誠文科次官は「法案として考えているのは、休日のまとめ取りをするための1年単位の変形労働時間制であり、その活用についての不安や疑問点などの懸念を払拭(ふっしょく)するために、文科省としてきちんと丁寧に説明する。仮に法案が通れば、制度設計を具体化させていきたい」と応じた。

その後開かれた記者会見で、斉藤氏は「変形労働時間制が導入され、定時が延びれば、学校現場ではノンストップ労働、エンドレス労働の現状がますます悪化する。こんな働き方では多くの教員が死んでしまうし、そんな職場を若者は目指さない。一体なぜ、法改正をしようとしているのか、さっぱり分からない。日本の公教育が崩壊しかねない分岐点に来ている」と語気を強めた。

署名活動の発起人の一人であり、教員である夫を過労死で亡くした工藤祥子氏は「変形労働時間制が学校現場で運用され、過労死が起きてしまったときに、責任は誰にあるのか。文科省は教育委員会への指導や運用の具体策を出した上で、きちんと説明すべきだ」と述べた。

記者会見に同席した内田良名古屋大学准教授は、石川県の公立学校における月ごとの勤務時間をグラフで示し、「8月でも教員は時間外労働をしており、8月は閑散期と言えない。そもそも、国や多くの自治体はそうしたデータすらも持ち合わせていない。教員にとって8月は年次有給休暇を取得しやすい時期だが、変形労働時間制によって、その分の年次有給休暇はどこへ行くのかなど、議論が不十分だ」と指摘した。

また、同じく記者会見に同席した嶋﨑量弁護士は「民間の変形労働時間制は本来、労使協定を結ばなければ導入できないが、公務員である教員はそれができず、歯止めがかからない恐れがある。変形労働時間制は割増賃金を抑制するためのもので、長時間労働を抑制するものではないのに、教員に対してはなぜか労働時間を短くするものとして導入されようとしている。こんなばかな話はない」と法案を問題視した。

10月18日に閣議決定した給特法改正案では、公立学校教員の超過勤務時間の上限を1カ月45時間、年360時間以内と定めた文科省の「上限ガイドライン」を、文科大臣が策定する「指針」に格上げした上で、1年単位の変形労働時間制を、自治体が条例を定めて導入できるようにすることを目指している。

変形労働時間制によって、教員は授業のある学期中の勤務時間が延びる分、業務時間が比較的短いとされる夏休み中に、休日のまとめ取りをできるようにする狙いがある。


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