いじめデータをAIで分析 滋賀県大津市教委が中間報告

滋賀県大津市教委は10月28日、過去に報告されたいじめ事案のデータ約9000件を人工知能(AI)で分析した実証実験の中間報告を公表した。事態が深刻化する割合を半減させる対策の傾向などが明らかになったとしている。いじめ事案にAI分析を導入した取り組みは全国初で、同市教委では来年度に試験運用し、2021年度から全ての市立小中学校で運用を開始する予定。

自ら命を絶った中学生の命日に「いじめ対策に全力で取り組む」と語った越直美大津市長(左・大津市ホームページより)

同市では中学2年生だった男子生徒が11年、いじめを苦に自殺したのを受け、今年3月、13~18年度に市内の小中学校から報告のあったいじめ疑い事案約9000件のデータを分析し、深刻化の可能性などを予測する取り組みを進めると発表。連携する民間企業と協定を締結した。

分析方法などの本格的な検討は、大学教授ら教育の専門家4人を交えて4月に着手。いじめを把握した経緯やいじめの内容、学校による指導、児童生徒の様子など、学校から提出された詳細な報告書から個人情報を除き、学級規模や教員の経験年数などを合わせてデータ化したものから、いじめの深刻化のパターンを予測するシステムを構築しようと取り組んできた。

今回公表したのは、17、18年度のいじめ疑い事案計5212件を基にした分析の結果。事案のうち9.6%は、「欠席日数が3日以上」「収束までの期間が4カ月以上」など深刻化したケースに当たる。

分析の結果、深刻化を防ぐ方策として顕著だったのは「24時間以内に加害者を指導した場合」だったという。被害者が不登校になるなど事態が深刻化した割合は、未実施時の15.9%に対し、半分以下の7.3%にとどまった。

一方で、「いじめの第一発見者が教員以外だった」「SNSで中傷や無視を受けた」などのケースで、深刻化する傾向が明確に見られたといい、特に「SNSでの中傷や無視」については、加害児童生徒への指導がされていても82%が深刻化。

分析に参加した兵庫教育大学の秋光恵子教授は「SNSでの中傷は教員から見えにくく、慎重で継続的な対応が必要だ」と強調した。

また、▽小学校では体をたたくなどの暴行と比べ、無視や悪口など外見上いじめと把握しにくい方が、3倍以上深刻化した▽SNSによるいじめに限らず、教員が「今後も見守っていく」などとして「今後」という単語を盛り込んだケースでは、80%が深刻化した――なども明らかにされた。

同市教委は教育新聞の取材に、「教員の知識や経験不足をカバーし、誰もがいじめに対して適切に対応できるよう、AIによる分析を活用していく」と説明。調査に関心を示しているさいたま市や岐阜市など他の自治体との連携も進めているといい、日渡円教育長は「他の自治体から得たデータを活用しながら、分析の精度を高めたい」としている。

来年度の試験運用を経て、21年度からシステムを本格活用し、各小中学校のパソコンに教員がいじめ事案の報告を入力すれば、深刻化の可能性が分かるようにする方針。

越直美市長は今月11日、自ら命を絶った中学生に黙とうをささげ、「今日は亡くなった中学生のために何ができたのか、これから何をしていくべきなのかを考える日。大津市だからしなければならない、大津市だからできるいじめ対策に全力で取り組んでいく」と述べたといい、中間報告を受け「注意すべきときや取るべき策を目に見える形にして、誰でもしっかりとした対応をしていけるようにしたい」と語った。


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