EdTech活用の最前線 「未来の教室」中間報告会

2日目となった11月5日のグローバルカンファレンス「Edvation×Summit 2019」では、経産省が取り組んでいる「未来の教室」実証事業の中間報告会が行われた。実証モデル校となっている中学校・高校の計4校から教師や生徒、AI学習教材やコンテンツなどを提供した企業関係者が登壇し、先端的な授業に取り組んでいる体験を説明した。

教師と生徒、企業関係者が並んで報告した武蔵野大学中学校のセッション

参加した中学校・高校は、▽東京都千代田区立麹町中学校▽武蔵野大学中学校▽広島県福山市立城東中学校▽長野県坂城(さかき)高校。会場には、教員や企業関係者ら約500人が詰めかけ、EdTechを活用しながら大きく変化しようとしている学校現場の報告に耳を傾けた。

報告会ではまず、浅野大介・経産省教育産業室長が未来の教室が掲げる「学びのSTEAM化」に関連し、今年10月に大きな被害をもたらした台風19号の被災地で感じた教育の課題について説明した。

浅野室長は「教育の成功者だと思われていた人たちの行動に非常に問題があった。避難者であふれる体育館はエコノミークラス症候群や低体温症が心配される状況なのに、学校で習った知識が使われていないし、課題解決のために誰も話し合いをしない。これがいまの教育の問題点だ」と指摘。

リーダーシップを期待される人たちに欠けていて、今後の教育で養われるべき能力として、▽目の前の「課題の構造」を把握する力▽さまざまな組織や専門家をバインド(束ねる)する力▽科学的に確からしい「解決策オプション」を並べる力▽(ベストだけにこだわるのではなく)「ベターなオプション」を試し、走りながら修正する力▽その場でルールを作る/変える力――の5つを挙げ、「学びのSTEAM化」の必要性を強調した。

麹町中学校のセッションでは、COMPASS社のAI教材キュビナを使い、昨年からスタートした数学に加え、英語でも実証実験を始めた成果が報告された。担当した英語教諭は「理解度の高い生徒は、授業の中で余る時間があった。それが効果的に使える」と評価。

COMPASS社の担当者は「もともと先生が面白い授業をやっていたので、その授業のどこに(AI教材を活用すべき)課題があるのか見極めるのに時間がかかった。知識を定着させる効果が出ている」と話していた。麹町中では、英語の授業を1回で週4回行っており、そのうち合わせて50分程度にAI教材を活用しているという。

また、JTBの担当者は探究学習に観光予報プラットホームを取り入れている事例を報告。雲海で知られる兵庫県の竹田城で、雲海がもっとも出やすい日を気象データから分析し、観光需要を予測する探究学習について説明した。

探究学習の課題として、▽課題内容に応じた教科間の連携▽生徒にモチベーションを伝える教師の役割▽外部との連携を含めて調整するプロジェクトマネジャーの存在▽学校のIT環境――などを挙げた。

武蔵野大学中学校のセッションでは、atama plus社のAI教材を本年度から初めて数学に導入した事例を教師と生徒、企業関係者が一緒に報告するユニークな展開となった。

担当した数学教諭は「すごかったのは、集中力があがったこと。生徒から数学が楽しくなったとの声が出てきて、先生としてはやったと思っている」と笑顔をみせた。一方、生徒からは「タブレットにとまどったが、すぐに慣れた」「自分のペースで進められるのがいい。もともと数学が好きなので、家に帰って2時間くらいやっている」との声が出た。

「未来の教室」の委員から「AI教材があれば、学校なんて行かなくてもいいんじゃないの?」と質問されると、生徒の1人は「学校に行く意味は、コミュニケーションを学ぶため。それが分かるようになると、学校に行く意味があると思うようになった」と即答。つぼを押さえた生徒の答えに会場がどよめいた。

不登校の生徒を対象にした「きらりルーム」の取り組みで知られる城東中学校のセッションでは、今年の2学期から不登校の生徒に1人1台のタブレット端末を与え、個別学習計画を作って指導する取り組みの様子が報告された。

学校側からは「タブレットを入れただけでは、駄目。最初はやるが、飽きてくる。なかなか自分で学習計画を立てるところまでいけない生徒もいる」「やっていて一番思うのは、教員の心をがらっと変えていく必要があること。教員は自分の時間をこなすことに追われているところが多い。子供たちをどうしたいのか、もっと考えるようにならないと。タブレットを1人1台整備するのは大変なこと。(EdTechによる不登校への対応は)それほど簡単ではないように思える」と課題を指摘する声が出た。

坂城高校のセッションでは、NTTドコモの携帯回線を使ったグーグル社製クロムブックに、すららネット社のAI教材を今年の2学期から導入した事例が報告された。

探究学習と国語を担当する教諭は「生徒の適応は思ったよりも早かった。ほとんどの生徒が就職する学校なので、自分で課題を設定し、問いが立てられるようになるといい」と話した。担当した英語教諭は「EdTechに懐疑的な先生もいたが、実証実験のおかげで、同じ教科の教師同士で『こんな使い方がある』といった情報共有が活発になった。そこから教科間の共有も進んだ」と経過を述べた。

ドコモの担当者は「安価なICT環境の構築を考えたときに、モバイル端末を活用する利点を示したい。端末の管理は全て事業者に寄せることで、教師の事務的な負担も軽くなるだろう」と説明。すららネットの担当者は「地方ではICT使った授業を見たことがなく、イメージをつかめない学校も多い。そのなかで、いい事例になると思う」と話した。


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