「知識より、まず意識」 「対話型鑑賞」をテーマに講演

正解のない問いに挑む力が身につく――。京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センターが主催する「対話型鑑賞」に関するセミナーが11月17日、東京都文京区の東京大学で行われた。教育関係者ら150人以上が参加。「アート&コミュニケーションで鍛える 先がみえない時代のサバイバル術」をテーマに、AI時代を生き抜くために必要な能力を養う手法として各界から注目を集める「対話型鑑賞」について、京都造形芸術大学の福のり子教授の基調講演やワークショップが行われた。

基調講演する京都造形芸術大学の福教授

「対話型鑑賞」とは、1980年代にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開発された鑑賞教育で、美術史などの知識だけに偏らず、鑑賞者同士のコミュニケーションを通して美術作品を読み解いていく方法。新学習指導要領施行を前に、「主体的・対話的で深い学び」の一手法として教育界からも注目されている。

MoMAでこの教育を学んだ福教授は、2004年から日本の教育ニーズに合わせた対話型鑑賞プログラム「ACOP(Art Communication Project)」を開始し、幼稚園から大学までの児童生徒を対象とした出張鑑賞授業や、教委などが主催する教員研修、講演活動なども行っている。

ACOPでは、「みる」(単にみえている状態でなく、意識をもって隅々までみる)、「考える」(直感を大切にしながらも、作品のどこからそう感じるのか、その根拠を具体的に考える)、「話す」(考えたことを的確な言葉にして、他者に伝える)、「聴く」(他者の意見に、意識をもって耳を傾ける)の4つの基本プロセスを繰り返し、複数人で対話を介して考えや視点をみんなで共有し、広げていきながら鑑賞を深めていく。

福教授は「知識より、まず意識をもって作品をみることが大切」と話し、「作品鑑賞に唯一の正解はない。作品をみて感じることは、それぞれの価値観や経験に左右され、見え方だけでなく、解釈も異なる」と話した。

また、対話型鑑賞によって養われる力として、▽知的探究心が刺激される▽集中力と目的意識をもった観察力▽正解のない問いに取り組む力=問題解決の能力▽創造的解釈=奥深い意味を読み解く▽体系的・論理的にみる力▽言語能力▽コミュニケーションの基礎▽多様性の受容▽協働で行う作品解釈・再解釈▽自己対話力=メタ認知能力――を挙げた。

福教授は「すぐれた芸術作品は、私たちにたくさんの問いを投げかけてくれている。そこにはすでに、学びに不可欠な自発的な問いを生む仕掛けがある」と強調した。

参加した小学校教諭は「これからの授業では、もっと考えることが必要だと思っている。ACOPの理論ややり方は教育現場に向いている。こうした理論を周囲の教員にも共有して、授業でも取り入れていきたい」と話した。

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