【PISA2018】デジタル時代の読解力に遅れ OECD局長

日本の生徒の読解力が低下した最大の理由は、デジタル時代に求められる能力の不足であり、それが記述式問題で露見した――。生徒の学習到達度調査(PISA)の2018年調査を取りまとめたOECD(経済協力開発機構)のアンドレアス・シュライヒャー教育スキル局長は12月4日までに、インターネット経由で日本人記者団と会見し、読解力の低下について、「デジタル時代が到来し、読む行為には重要な変化があった。日本の生徒たちはデジタル世界で複雑な文章を読む行為を十分に経験していないし、日本の試験や成績評価もまだ十分に対応できていないのではないか」と述べ、デジタル時代に求められる読解力に対し、日本の教育の対応が遅れているのが原因との見解を示した。

PISAについて説明するアンドレアス・シュライヒャー教育スキル局長

今回のPISA2018では読解力が参加79カ国中15位となり、前回調査の8位から大きく後退した。平均得点も504点で、前回の516点から落ちた。

シュライヒャー局長は、日本の特徴として、正答率が選択式問題で2%落ちた一方、記述式問題では12%も下落したことを挙げ、「デジタル時代は、読む行為が以前よりも複雑で難しくなっているため、日本の成績が下がったのではないか」と指摘。日本人の生徒が読解力を改善する方向として「もっと複雑なものを読む経験を積むのが大事だろう。比較したり、批評的な見方で熟考したり、あいまいな情報の中で自分の考え方を導いたり、事実と意見の区別をつけたりといった経験だ」と述べた。

さらにPISAが注目している、デジタル時代における読解力の変化について説明した。

まず、従来の読解力について「生徒が読むものは、教科書のように専門家がきっちりと内容を吟味したものを読んでいた。分からないことがあれば、百科事典を引いた。百科事典に書いてあることは正しいと、真っすぐに信頼できた。すでに権威が与えられている書物や文献から知識を抽出することが読む行為の中心だった」と語った。

続いて、デジタル時代に求められる読解力について「ウェブでは出てきた情報が本当なのかうそなのか、正しいか間違っているか分からない。何かを調べようとしても、答えがひとつ出てくるのではなくて、可能性のある答えが大量に出てくる。真っ向から対立するような答えもウェブでは出てきてしまう。わざとフェイクなニュースを流していることもある。フェイクを検証する必要は、従来とは比べものにならないほど大きくなっている」と話した。

そうしたデジタル時代に求められる読解力として、シュライヒャー局長は「曖昧な中で情報をナビゲートしていくためには、メタプレゼンテーション(メタ表示)能力が必要になる」と指摘。「オンラインの先で、直接目の前にないかもしれない情報とのつながりを想像する能力が必要になってくる。いま見えていないものとのつながりを想像しながら読む行為は、従来の印刷されたものを読む行為とは、とても違う」と説明した。

その上で、日本の教育政策について「正しい方向に進んでいると思う。私は悲観的に考えていない」と述べ、新学習指導要領について「OECDの2030年の教育に関する枠組み(Education 2030)とも方向性は一致している。生徒一人一人が行為の主体として自らの考えにのっとって動くように強調するのは正しい方向性だ」と評価した。

今回のPISAでは、解答はコンピューターで入力され、選択式問題が70%、記述式問題が30%の割合で出題された。記述式問題を重視する理由について、OECDでは「PISAは、学校のカリキュラムで何を覚えたかだけではなく、学校で学んだ知識や能力をどういう形で応用して課題に対応できるかをみている。課題対応力を調べるには、生徒が自由に考えを働かせて表現する記述式のテストは不可欠だと考えている」(ベルファリ・ゆり教育スキル局就学前・学校教育課長)と説明している。


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