【記述式問題】萩生田文科相会見詳報 経緯と理由を語る

萩生田光一文科相は12月17日、大学入学共通テストで導入予定だった国語と数学の記述式問題について、2021年1月の実施を見送ることを表明した。記者会見では、採点体制や採点ミス、自己採点の不一致など多くの課題について、さまざまな改善策を検討した経緯を説明。結果的に、記述式問題の実施を先送りした判断の理由を語った。冒頭発言と記者団との主なやりとりは次の通り。

(冒頭発言)
記述式問題の見送りを決断した経緯と理由を説明する萩生田光一文科相

大学入学共通テストにおける記述式問題について、国会での指摘なども踏まえ、協議を続けてきた。最終的に先週と昨日、大学入試センターの山本廣基理事長から2度にわたり、検討状況の報告を直接受けた。また、昨日は大学入試センターを訪問した。

文部科学省として、指摘されている課題に対し、どのような改善が可能か、できる限りの方策を大学入試センターと共に検討し、採点事業者に必要な対応を求めるなど、さまざまな努力を重ねてきた。

その結果として、一つには採点事業者に守秘義務を課し、違反した場合の損害賠償なども規定した契約や機密保持契約の締結などにより、採点業務の機密を保つ体制を確保した。また、採点事業者に対し、一切の情報の漏えいや目的外使用の禁止を契約に規定しているほか、採点業務の受託を利用した宣伝行為をグループ全体で自粛し、社会的疑念を招くことのない体制の確保に努めてきた。

さらに、障害のある受験生に対しては、記述式問題の導入に伴い、解答欄の大きさやレイアウトを変更した解答用紙、パソコンやタブレットを用いた入力を可能にするソフトウエアの開発など、新たな受験上の配慮を行ってきた。

同様に、採点の質、自己採点と採点結果の不一致の課題についても、真摯(しんし)に取り組んできた。

大学入試センターによると、採点体制については、採点事業者は期日までに採点を完了するために、質の高い採点者を確保できるめどは立っている。一方で、実際の採点者は、採点事業者が慎重なプロセスを経て適任者を得るとしており、実際の採点者が決まるのは来年の秋から冬になる。

採点の精度では、2度の試行調査の検証結果も踏まえ、採点事業者が当初予定よりも多人数の視点で組織的多層的に採点を行う体制を構築したり、元教員など専門的知見を持つ人による品質管理専門チームを設けたり、ダミー答案や無作為抽出によるチェックを執り行うなど、さらなる採点精度の向上を図ることが可能だ。

しかしながら、採点ミスを完全になくすには、限界があるとのことだった。

このため、各大学での個別選抜の前に、記述式問題の採点結果を本人に開示することも含めて検討した。だが、採点スケジュールや各大学への成績提供時期との関係から解決すべき点が多く、少なくとも来年度からの実施は現実的に困難との判断に至った。

共通テストを12月や1月上旬に早めることも再度検討したが、12月は高校の学習内容を終了することができないことや、体育大会や文化行事の日程から難しく、1月上旬に早めるのも年末年始の時期に試験問題の配送や厳重な保管などを確実に行う上で問題があり、困難との判断に至った。

自己採点については、2度の試行調査で、国語で約3割の採点結果が不一致となった。正答の条件に基づく採点の仕方について説明した資料を年度内に周知することに加え、模擬答案を用いた自己採点動画を提供して自己採点のシミュレーションを支援することも検討した。

これらにより、一定の改善が期待できるが、自己採点の不一致を大幅に改善することは困難であるとのことだった。

また、作問の工夫によって、自己採点しやすい設問にすることも検討した。しかし、論理的な思考力や判断力を評価するという、記述式問題導入の本来の趣旨を損なうことになりかねないとの判断に至ったとのことだった。

これを受け、文部科学省としては、採点体制については採点事業者が必要な人数の、質の高い採点者を確保できる見通しが立っていることは認められるものの、実際の採点者については来年秋以降に行われる試験などを経て確定するため、現時点では採点体制を明示することができない。

採点の精度については、さらなる改善を図れると考えられるが、採点ミスをゼロにすることまでは期待できない。こうした状況の下で、試験の円滑かつ適正な実施には限界があると考えている。

自己採点については、一定の改善ができると確認したが、採点結果との不一致を格段に改善するのは難しい。受験生が出願大学を選択するにあたって支障になるとの課題を解決するには、なお不十分だと考えている。

本件にはさまざまな意見が出され、受験生の立場で早く結論を出すことが何をおいても重要だと考えてきた。これらのことから、再来年1月実施の大学入学共通テストにおける記述式問題の導入については、受験生の不安を払拭(ふっしょく)し、安心して受験できる体制を早急に整えることが現時点においては困難であり、記述式問題は実施せず、導入見送りを判断した。

勉強している生徒や保護者、教師をはじめ関係者には、迷惑をかける結果となり、誠に申し訳なく思うが、理解してほしい。

大学入試改革は、子供たちが未来を切り開くために必要な資質・能力の育成を目指して、高校教育改革、大学教育改革とともに高大接続改革の一環として取り組んでいるものだ。初等中等教育を通じて、論理的な思考力や表現力を育てて伸ばすことは大変重要であり、それらを評価する観点から、大学入試において記述式問題が果たす役割が大きいことに変わりはない。

今回、2021年1月の大学入学共通テストでは、記述式問題を実施せず、導入見送りを判断したが、各大学は個別選抜で記述式問題の活用に積極的に取り組んでほしい。

また、私の下に設置する検討会議において、共通テストや各大学の個別選抜における記述式問題の在り方など、大学入試における記述式の充実策についても、検討していきたい。

(質疑応答)
――英語民間試験に続き、大学入試改革の2つの柱がなくなることになったが、どう受け止めているのか。

再来年1月の大学入学共通テストについて、大学入試英語成績提供システムと記述式問題の導入について見送ることにしたが、高大接続改革の中で、英語4技能の評価や記述式問題が果たす役割が大きいことには変わりがない。今後、私の下に設置する検討会議で、大学入試における英語4技能の評価方法、共通テストや各大学の個別選抜における記述式問題の在り方など、大学入試の充実策を検討していきたい。

共通テストに関しては、マークシート式問題でも、より思考力や判断力を重視した作問となるよう見直しを図るなど、大学入学共通テストの実施に備えたい。

――大学入試英語成績提供システムは2024年度までの見送りとしたが、記述式については期限を区切るのか。

期限を区切った延期ではない。大学入試において、論理的な思考力や表現力を評価する観点から、記述式問題の果たす役割が重要と考えており、私の下に設置する検討会議で議論したいと思っている。

――記述式問題の採点ミスをゼロにする件は、当初から問題だったのではないか。

現実問題として考えて、プレテストで(国語の記述式問題で見つかった採点ミスの含有率が)0.3%という数字があり、これが0までいけるかと言われれば、私の判断で困難だと決断した。

――共通テストの配点や問題形式の変更はあるのか。

今後、国語と数学について問題作成や配点の見直しなどの対応が必要となる。文科省と大学入試センターで速やかに協議の上、方針を決定し周知したい。

――見送りの理由として3つ挙げているが、もっとも大きな要因だったのは何か。

国立大学を目指す受験生は、自己採点によって二次試験の願書を提出しなくてはならない。だから解答用紙を本人に戻すことも考えてみた。だが、物理的にそういう時間が確保できるのか。そして返ってきた解答を見た受験生が、自分なりの疑義があった時に、それを問い合わせる窓口を作ることも検討した。しかし、ここまで受験生の不安が拡大している中で、初めての試験なのだから、多くの問い合わせがあるだろう。そうすると、現実問題として、システム的に対応しきれない。こうした判断が、一番の要因だ。

採点の質については、事業者がやれると言っており、それを評価して大学入試センターが応札して契約したのだから、それを今から否定することはできない。ただ、どういう人が採点するのか現時点では説明できない。これも不安解消されていないと判断した。

受験まで1年近くになり、受験生が落ち着いて目標に向かって準備するには、ぎりぎりのタイミングではないかと思い、決断に至った次第だ。

――自己採点の大幅な改善が難しいというが、そもそも個別に大学で記述式を課すのが難しいから、共通テストで課すことになった経緯がある。今後の議論は共通テストに課す方向か、それも含めて見直すのか。

英語成績提供システムの中止以降、大学の対応をみると、価値観の共有が時間的に足りなかったのではないかと、私は思っている。記述式問題が大事だと話す各大学関係者は大勢いるが、自分たちの大学では問題は作らないし、採点もしない。私個人にはふに落ちないところがある。

今後検討を加えた上で、ぜひ各大学に(入試に記述式問題が)必要だと認めてもらえるのなら、例えば、大学入試センターの知見を使って何種類か作問することもできる。問題は提供するから、採点は各学校がやる、というのも可能ではないか。

記述式問題を全てなくしてしまう方向ではなくて、どうやったら試験の中に加えることができるのか、どうやったら公平に受験ができるのか、時間をいただいて検討したいと思う。

――記述式を共通テストで問わない可能性も残されているのか。

(延期を表明した)英語成績提供システムと違い、見送りだ。全くまっさらの状態から対応していきたい。

――大学入試がどうなるのか不安に思っている人は多い。歴代大臣や文科省の責任問題をどう考えているのか。

見送りを決断したのは私だから、私に責任があると思っている。入試改革の議論が始まり、高大接続のさまざまな議論の中で、英語4技能や記述式問題が必要だとの判断は、与党全体で行ってきた。その時々の大臣はそれぞれの環境の中で、ベストを尽くしてきたと思う。最終的に実施段階で私が大臣を拝命した。私が「これ以上前に進めない」「公平性が保(たも)てない」と判断をした。

誰か特定の人の責任でこういう事態が生じたのではなく、目指すべき理想と、それをきちんと評価をするシステムの間にさまざまな齟齬(そご)が生じてしまった。それが埋められると思ったけれども、埋められなかった、というのが現実だと思う。現時点では私が責任者だから、私の責任でしっかり立て直していきたいと思っている。


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