ノーベル賞の大隅教授が講演 児童生徒も研究成果を発表

中谷医工計測技術振興財団が主催する科学教育振興助成事業の成果発表会(東日本大会)が12月26日、東京都文京区の東京大学で開かれた。特別講演では、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典・東京工業大学栄誉教授が、子供たちに研究することの楽しさを伝えたほか、同財団の助成を受けた小、中、高校の児童生徒らが研究成果を発表した。

研究を続けるためのアドバイスをする大隅教授

大隅教授はノーベル賞受賞につながった、細胞におけるオートファジー(自食作用)のメカニズムを解明した過程を解説。研究を始めた当時、細胞の分解についての研究がほとんどなかったことに触れ、「人がやらないことをやろうと考えた」と着想のきっかけを披露した。

「若い人がオートファジーにも関心を持ってくれていることはうれしいが、もし私が今、若い研究者であったなら、きっとオートファジーには手を付けなかっただろう。誰もやっていないようなテーマから新しい発見をすることで研究は進む」と子供たちにアドバイス。

「私が研究者として30年以上、オートファジーを追いかけられたのは、面白い現象と出合えたことはもちろん、共同研究者や新しい技術の存在が大きい。新たな発見をすれば次の疑問が生まれる。科学研究に終わりはない」と語った。

また、同財団の助成を受けた52校の小、中、高の児童生徒や教員らによる研究成果の発表がポスターセッション形式で行われ、研究内容について活発なディスカッションが行われた。

札幌市立札幌旭丘高校生物部は長年、学校の近くの沼に生息するトンボの個体数を調査している。近年、北方系のアキアカネが減少し、南方系のナツアカネが増えていることを受け、「地球温暖化によって、北方系のアキアカネは冬が来る前にふ化し、幼虫では冬の寒さに耐えられずに死亡してしまうのではないか」と仮説を立て、温度を変えた卵のふ化実験を行った。

成果を発表した大津大空さん(同校2年生)は「仮説の証明には、ヤゴの致死温度を実験で明らかにし、幼虫が越冬できないことを証明する必要がある。しかし、ヤゴの飼育は難しく、これからの課題だ」と意気込んだ。

児童生徒らによるポスターセッション

埼玉県東松山市立市の川小学校では、6年生の理科の授業で、日本国内でも自生地がわずかしかない多年草「サワトラノオ」の栽培や研究に取り組み、3年目を迎えた。昨年の6年生のアンケートで「もっと他の学校にも広めたい」といった意見が出たことから、今年は近隣の幼稚園や小学校などにもサワトラノオの株を分けたり、幼稚園児に児童がサワトラノオの植え方を教えたりした。

さらに今年は、サワトラノオが虫ではなく風によって花粉を媒介させている可能性が高いことなどを、研究で突き止めた。

同校の岡島孝徳教諭は「サワトラノオは地域でもほとんど知られていないが、子供たちは休日も水やりをするなど、熱心に世話をして、身近な希少種の存在を広めている。先行研究も少なく、児童の発見は大きな意味を持っているのではないか」と話した。

成果発表会には、児童生徒、教員ら約300人が参加。12月22日には、岡山県でも西日本大会が開かれた。


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