【特集2019 トップ5】閲覧数でみる教育界の1年

教育新聞では、教育関連のテーマを現場取材を通して深掘りしたり、学校現場の最前線を報告したりする特集を常時お届けしている。2019年に閲覧数が多かった特集記事のトップ5を紹介し、今年の教育界を振り返ってみたい。さまざまなニュースが飛び出した1年だったことがよくわかる。


第1位は、鈴木寛・東大教授のロング・インタビューを4回に分けてお届けした「【AI時代の教育を探る】改革の現在位置」の第2回「いまこそ大学入試を変える正念場だ」となった。民主党政権時代に文科副大臣、自民党の安倍政権下でも文科大臣補佐官を務めた鈴木教授は、経済協力開発機構(OECD)が教育の将来像を世界レベルで検討するEducation 2030のメンバーでもある。4回のシリーズでは、AIが5割の仕事を代替するSociety5.0時代に向け、子供たちの生き抜く力を育むために、日本の教育改革がどうあるべきで、現在位置がどこなのか、つぶさに語っている。

この記事を公開した後、大学入学共通テストにおける英語民間試験の活用延期と記述式問題の見送りが決まり、大学入試改革は大揺れに揺れた。その結果に対する鈴木教授の批判は、第4位となった「我々は何を失ったのか 鈴木寛・東大教授に聞く」をご参照いただきたい。

【AI時代の教育を探る】改革の現在位置 鈴木寛教授② >

第2位は、井藤元・東京理科大教職教育センター准教授にインタビューした「【先生の先生】己を知った教師は輝ける」だった。教員の実践に関わる記事は、教育新聞にとって読者ニーズの高いコンテンツだが、そのなかで最も読まれた特集となった。

「漫才×教育」「落語×教育」「新聞記者×教育」――。井藤准教授は教職志望の学生に向け、斬新な授業プログラムを次々に生み出している。プロの漫才師や新聞記者を講師に迎えて実施するプログラムは一見、学校教育と何ら関係のないように見える。

だが、プログラムのベースには、小学1年生の時にスイスで自ら経験したシュタイナー教育による理想の教師像がある。その上で、井藤准教授は漫才、落語、新聞記者などを通してあるべき教育者の姿を考えさせ、学生が独自の教育観を磨いていくよう仕向けていく。教職に必要な力とは何か、しばし立ち止まって考えさせてくれる特集だ。

【先生の先生】己を知った教師は輝ける >

第3位は、北欧教育研究会がお届けする「『北欧』の教育最前線」シリーズから10月に公開した「教員不足にあえぐスウェーデン」がランクインした。スウェーデンでは、大学入学者の6人に1人にあたる約1万8000人を教員養成課程で受け入れているが、それでも慢性的な教員不足に苦しんでいる。教員不足は世界的な課題で、団塊世代の大量退職を経た日本でも事態は楽観視できない。

この「『北欧』の教育最前線」には、日本の教育が抱える課題を考えさせられる指摘が多く、読者に人気のシリーズだ。例えば、11月に公開した「高校生は偽ニュースを見破れるか」は、12月の生徒の学習到達度調査(PISA)2018で明らかになった日本人の読解力低下を考える上で示唆に富んでいる。PISAでは、日本の生徒はインターネット上に飛び交う虚実が判然としない情報を的確に読解して判断する記述式問題が苦手だった。ノルウェーで行われた偽ニュースを巡る実験は、日本の教育現場にとっても多くの材料を提供してくれている。

【北欧の教育最前線】教員不足にあえぐスウェーデン >

第4位は、大学入学共通テストの英語民間試験活用延期の決定を機に、鈴木寛・東大教授にインタビューした「我々は何を失ったのか 鈴木寛・東大教授に聞く」だった。英語4技能の重要性は2009年改訂の学習指導要領で明記されているのに、多くの高校が大学受験への対応に追われて放置してきた実態や、世界の有力大学が採用しているTOEFLやIELTS(アイエルツ)を避けることで、日本の教育が新たなガラパゴス状態になってしまう懸念などを整然と指摘している。

英語民間試験の活用を巡り、教育新聞は、導入反対派の代表格となった全国高等学校長協会(全高長)の見解をはじめ、英語民間試験を巡る賛否両論を手厚く報道してきた。その中で、延期決定後、逆風にあらがうように、国際標準を意識した大学入試改革の必要性を論じた鈴木教授のインタビューが、多くの読者を集めたことも銘記しておきたい。

我々は何を失ったのか 鈴木寛・東大教授に聞く >

第5位は、学校の働き方改革について、現場の教員と専門家の声を集めた2回シリーズ「教員が考える働き方改革」の(上)にあたる「現場のことは現場で」が入った。まず、中教審学校における働き方改革特別部会の部会長として答申のとりまとめにあたった小川正人・放送大学教授に、現場教員の声を代弁する形で「教員の大幅増員をなぜもっと強く押し出さないのか」「『ただ働き』を放置してきた給特法の抜本的見直しに踏み込んでいない」といった批判をぶつけ、答申の背景や文科省が示した「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」の意義を聞いた。そこから現場教員の意見を再び取材し、「現場に求められる改革のことが分かるのは、現場の教員だ」という声を紹介している。

教員が考える働き方改革(上) 現場のことは現場で >

(教育新聞編集委員 佐野領)