教員採用倍率低下の要因 文科省の教育人材政策課長に聞く

教員採用倍率の低下が止まらない。文科省が昨年末に公表した調査結果では、2019年度教員採用試験の倍率が全国平均で4.2倍、小学校では2.8倍にまで落ち込んだことが明らかになった。どのような背景、要因が考えられるのか。調査結果の分析を行った文科省総合教育政策局の柳澤好治・教育人材政策課長に、分析を通じて見えてきた課題と対策を聞いた。


倍率低下は教職の人気低下ではない
――小学校の教員採用倍率が1991年度教員採用試験と並んで過去最低となったことの受け止めは。

小学校の受験者数の内訳

倍率が過去最低となったことについては、危機感を覚えている。そこで今回の調査では、倍率低下にどのような理由があるのか、重点的に分析を行った。

まず、倍率低下の最大の要因は、第2次ベビーブームの頃に採用した教員が大量退職を迎え、採用者数が増加していることがある。実際、小学校の教員採用倍率が最も高かった2000年度以降、受験者数は5万人前後を維持している一方、採用者数は5倍近くに増えている。

教員採用倍率の低下を巡っては、教員の長時間労働の問題がメディアで取り上げられ、学校現場はブラックであるというイメージから教職を避けるようになり、倍率低下を招いているとの指摘がある。そのような人が全くいないわけではないと思うが、今回分析したデータからは、むしろ、教職の人気が下がっているとは言えない結果が示された。

小学校についてみると、受験者のうち、新規学卒者は横ばい傾向にあるが、既卒者は減っている。このデータから言えることとして、学生段階から教員になりたい気持ちを持っている学生が教員採用試験を受ける状況は変わっていない。

一方で、例えば、最初の教員採用試験が不合格となり、その後も講師などを続けながら教員採用試験に挑戦し続ける人が減っている可能性はある。有効求人倍率が高いこともあり、採用に至らなかった人が民間に就職することが多くなっているのではないか。

また、中学校については、ここ数年の傾向として新規学卒者も減少している。中学校の場合は教科の専門性も高く、教員養成学部以外から受験する割合も小学校に比べ高いため、より民間に流れている可能性がある。

長期的な計画採用が鍵に
――採用倍率が2倍を切っている都道府県も多い。

小学校の教員採用試験における採用倍率が低い県と高い県の比較

小学校について、都道府県、政令市ごとに採用者数と採用倍率の推移を分析すると、ある傾向が浮かび上がった。

19年度に採用倍率が1.2倍で最も低かった新潟県、1.3倍だった福岡県、1.6倍だった佐賀県をみると、年度によって採用者数の変動が大きかったり、ここ数年で採用者数が急増していたりする。

それに対して、6.1倍と最も高かった兵庫県では、年度ごとの採用者数の差がそこまで大きくなく、倍率も安定している。

このことは、採用倍率を安定させるには、中長期的な計画に基づいた採用を行うのが重要だと示唆(しさ)している。

――計画的な採用が難しい要因は何か。

例えば、小中学校に特別支援学級を開設するかどうかは流動的になりやすく、当初の計画通りにいかないという話は教育委員会からよく聞く。また、産休や育休を取得する教員が想定よりも多いといったこともあるようだ。

採用側の予測イメージと実際のずれが、採用者数の急激な増減に影響しているとすれば、もっと予測を精緻(せいち)に行っていく必要がある。どのようなデータを基に予測を立て、採用者数を決めているのか、倍率が安定している自治体で参考になる事例があるかもしれない。

特別免許状の活用を検討
――教員志望者をどう増やしていけばいいか。

インタビューに応じる柳澤課長

まず、新規学卒者に関しては、教員養成学部での4年間を見通した取り組みが重要になる。入学当初は教員を目指していても、学年が上がるごとに意識は変化する。特に、教育実習を通じて、教員の志望度が高まる学生もいれば、自信を失ってしまう学生もいる。

これまで、各大学で、そうした教員志望の学生の意識変化が丁寧に把握されてきたわけではない。アンケートなどを通じて、大学でのどのような学びが教員への自信につながるのか、逆に、現状のカリキュラムにはどんな問題があるのかといったことを、分析し、改善していくことが求められる。

社会で活躍している人に教員になってもらう方法としては、教員免許状を持っていない人に付与できる特別免許状を活用することが考えられる。高い専門性や外部での経験を学校現場に生かしてくれれば、学校組織に多様性が生まれ、社会に開かれた教育課程の実現にもつながる。ただし、その効果を発揮するためには、学校現場が外部の人を受け入れる文化をつくることも重要だ。

現在、特別免許状の付与は年間で200人程度と多くない。もう少し制度を使いやすくしていくことを検討している。

また、教員免許状を持っていても、就職氷河期などで教員採用試験の倍率も高かった時期に当たり、教員になることを断念して民間で働いている人も多い。そうした人が今、もう一度教員を目指そうと考えたときに、現代の教育課題などを学べるようなリカレント教育の講座を大学で開設し、自信につなげてもらうことも考えている。

各自治体では、門戸を広げる狙いで実技試験を廃止したり、社会人特別枠を設けたり、採用年齢を撤廃したりといった工夫を行っている例が増えている。文科省として、そうした事例を共有し、横展開を図っていきたい。


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