全国で夜間中学の設置を促すため、文科省は1月15日までに、教育委員会の担当者を対象とした夜間中学設置推進説明会を、夜間中学が設置されている東京都世田谷区立三宿中学校で開いた。教育機会確保法成立後に初めて開校した夜間中学である千葉県松戸市立第一中学校みらい分校の事例発表が行われ、三宿中の夜間中学の授業が公開された。文科省では、来年度予算案で夜間中学の新設準備や運営補助の新規事業を計上し、未設置地域での夜間中学の開校を支援する方針。

松戸市では、不登校による義務教育既卒者や、増加している外国人居住者の学びのセーフティーネットを充実させる目的で、閉校した旧古ヶ崎南小学校の施設を改修し、昨年4月にみらい分校を開設。
現在は10代から70代まで、市外からの通学や外国籍も含め、22人の生徒が在籍している。授業は生徒の理解度に応じたコース別に学べるようになっているほか、日本語指導の支援も充実させている。
みらい分校の開設にあたって、市教委では関係機関との協議や設置場所の選定、アンケートによるニーズ調査などを実施してきた。
事例を発表した市教委の西郡泰樹・学校教育部学務課課長は「夜間中学を開設する際は、一般的な中学校と異なり、生徒数の予測が困難で、配置教員数や管理備品の数の予測も難しい。夜間中学の運営は財政負担も大きく、課題は多い。しかし、みらい分校の生徒は、本当に勉強したい生徒ばかりだ。学びたい生徒が通える学校を目指したい」と話した。
夜間中学をめぐっては、2016年に成立した教育機会確保法で、全ての都道府県に少なくとも1つの夜間中学を設置することを目標としている。現在、夜間中学は19年度にみらい分校と埼玉県川口市立芝西中学校陽春分校が開校し、9都道府県27市区に33校ある。また、高知県や徳島県、茨城県常総市、札幌市などの自治体で、開校に向けた動きがある。
文科省では、夜間中学が設置されていない地域での開設を促すため、来年度予算案に夜間中学の新設準備や運営補助の新規事業5500万円を計上し、2023年度までに全ての地域で夜間中学を設置することを目指す。補助では、新設準備の2年間と開校後の3年間を支援。夜間中学の教育活動や教材整備の経費と人件費を補助する。
説明会には、教育委員会の職員ら約50人が参加。参加者は三宿中の夜間中学の授業や給食の様子も視察した。文科省では、同様の説明会を1月17日に大阪市立天満中学校でも開催する。
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