【入試改革】浮上した共通テストと個別入試の役割分担

「大学入試のあり方に関する検討会議」の第1回会合が1月15日開かれ、大学入学共通テストでの英語民間試験の活用延期と記述式問題の見送りを受けた、大学入試改革の見直し論議がスタートした。初回の議論で浮かび上がってきたのは、大学入学共通テストとそれぞれの大学が独自に行う個別入試の役割分担だ。特に個別入試で英語4技能や記述式問題をどのように組み入れていくのか、各大学のアドミッションポリシーが問われる方向性が出てきた。参加者の発言から議論のポイントを探った。(編集委員 佐野領)


英語4技能・記述式問題 重要性を確認

初会合では、見直し論議のきっかけとなった英語4技能や記述式問題を大学入試に課す必要性について、参加者から異論はなかった。

萩生田光一文科相は冒頭あいさつで「グローバル化が進展する中、次代を担う若者が英語によるコミュニケーション能力を身に付けること、そして、大学入試で英語4技能について適切に評価することの重要性に変わりはない」「初等中等教育を通じて育んだ論理的な思考力、表現力を評価する記述式問題が大学入試で果たす役割は重要」と表明。

座長となった三島良直・東京工業大学名誉教授(前学長)も「英語4技能を育成すること、あるいは思考力、判断力、表現力を大学入試で評価することについては、共通テストでその要素を測るべきかどうかは別として、非常に重要なことだと考えられることは確かだ。高大接続改革の観点から議論していきたい」とあいさつした。

こうした課題を踏まえ、現実問題として、大学入試に英語4技能への評価や記述式問題をどのように取り入れていくのか。ここが議論のスタート地点となることが確認される展開となった。課題になるのは、英語民間試験の活用延期で批判された経済格差や地域格差への対応であり、記述式問題の見送りで問題視された採点ミスの可能性や、自己採点と採点結果の不一致の解消だ。

「大事だと思ったら、なぜやらないのか」

検討会議の席上、「大事だと思ったら、なぜやらないのか」と大学側に疑問を呈する萩生田光一文科相

各大学の個別試験を巡り、議論の口火を切ったのは、萩生田文科相だった。冒頭あいさつで記述式問題について個別試験での対応を求めていく考えを示した上で、途中退室する前には「英語4技能、記述式が大事だと大学関係者はみんな私に言ってくれた。でも、文科省が共通テストで英語4技能の成績提供をやらないといったら、自力でも英語4技能試験をやる大学は、これ(23.5%)しかない」と指摘。さらに「本当に大事だと思ったらなぜやらないのか、私は不思議でしょうがない」と畳み掛けた。

高校側や保護者からも、大学側に対応を求める意見が相次いだ。日本私立中学高等学校連合会会長の吉田晋・富士見丘中学高等学校校長は「日本の教育が世界の中で遅れてきている。それに対応するために、これまで英語4技能や記述式をやろうと積み上げてきたのに、すべて白紙にするのか」と批判。

牧田和樹・全国高等学校PTA連合会会長は「子供たちは大学を選択する自由を持っている。英語4技能や記述式はそれぞれの大学が対応すべきことで、まず大学がしっかりすることが基本だ」と述べた。

予防線を張る大学

これに対し、大学側からは、今後の議論に備えて、予防線を張る発言が目立った。

国立大学協会(国大協)入試委員会委員長の岡正朗・山口大学学長は「英語4技能も、記述式問題が問う思考力などの技能は新しいことにチャレンジしていくために重要だと誰もが考えている」とした上で、「英語のスピーキングをテストしろと言われても、何千人もの受験生に等しく評価するのは、一部の外国語大学を除いて、困難だという実情を理解してほしい。一方、民間英語試験の活用をなぜやめたかと言えば、国から支援を受けている国立大学が、国がやめると言った民間英語試験を使うという判断は非常に難しかった。ここは冷静になって議論し、できること、できないことを明確にしてほしい」と訴えた。

また、記述式問題については、2015年調査で国立大学の試験の88%で、文章や数式で答える問題が採用されている実績を示した。

公立大学協会指名理事の柴田洋三郎・福岡県立大学理事長兼学長は「(英語民間試験を活用する)英語成績提供システムは大学にとっては大変ありがたい仕組みだった。このアドバンテージがなくなったとき、どうするのかなあというところ」と述べ、英語4技能の試験について対応を決めかねている実情を明らかにした。

私立大学からは、日本私立大学連盟常務理事の芝井敬司・関西大学学長が「私立大学には、それぞれのアドミッションポリシーがある。なにより、経済的格差、地域的格差への公正性を担保する案を作ってほしい」と指摘。

日本私立大学協会常務理事の小林弘祐・北里研究所理事長も「私立大学は本当に多様。理想と現実を踏まえて、制度設計を考えてほしい」と述べた。

共通テストと個別入試は両輪

議論の最後には、オブザーバーで参加した大学入試センターの山本廣基理事長が発言を促された。

山本理事長は「今週末に行われる最後のセンター試験は、55万人が同日同時刻に受験する。大規模かつ学力面で幅広い受験生を対象にしており、各大学のアドミッションポリシーとの適切な役割分担の中で行われる試験だ。後継となる共通テストも同じ。それなのに、英語4技能と記述式問題の全部を共通テストに入れようとしたのが、混乱の元だった」と一連の経緯を総括。

見直し論議については「共通テストと個別試験の両輪で、入試制度を考えるべきだ」と述べ、両者の役割分担を巡る検討を深めることが必要だとの見方を示した。

検討会議のスケジュールは、それほど余裕がない。新学習指導要領で育成された生徒が受ける最初の大学入試となる2024年度に制度改正を間に合わせるためには、文科省は21年夏ごろには、制度改革の内容を通知しなければならない。逆算すると、検討会議は今年末までに答申を取りまとめる必要がある。

会合終了後、参加した委員からは「24年度の大学入試は先に思えるが、実は見直し論議にかけられる時間はあまりない。高大接続改革を根本的に議論する余裕はないのではないか」「英語4技能への評価と記述式問題について、共通テストと個別入試でどう役割分担していくのか、その方向性を定めるのが精いっぱいだろう」といった感想がもれていた。

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