【入試改革】経緯説明に批判続出 文科相「課題は文科省」

今後の大学入試の方向性を議論する文科省の「大学入試のあり方に関する検討会議」の第2回会合が2月7日、同省内で開かれ、大学入学共通テストにおける英語民間試験の活用延期と記述式問題の導入見送りに至った経緯の検証をスタートさせた。経緯の説明を受けた委員からは「2020年度に英語民間試験と記述式問題を導入するスケジュールが先にあり、制度設計が追いつかなかった」と批判する意見が相次いだ。議論に加わった萩生田光一文科相は「課題があるまま進んでしまった。大きな課題は文科省そのものにもあったのかと自分自身の反省も含めて思っている」と述べ、文科省の組織的な体質にも問題があったとの見方を示した。

大学入試検討会議で発言する萩生田光一文科相

報告された経緯の検証は、文科省の大臣官房政策課がまとめた。

英語民間試験の活用については、▽教育再生実行会議、中教審高大接続特別部会、高大接続システム改革会議などで、英語4技能の評価に民間資格検定試験の活用促進の方向性が示されたが、深く議論されなかった▽英語4技能の評価について本格的な議論は「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)検討・準備グループ」で始まり、大学入試センター単独実施案、民間委託、民間資格検定試験活用などが検討された▽民間資格検定試験を活用する方向が決まり、同時に、受検回数、受検日程、受検場所、検定料、経済格差・地域格差への配慮、障害のある受験生への配慮などさまざまな課題が示された▽これらの課題解決に向けた取り組みが行われたが、大学入試センターが民間の実施団体と協定を締結する枠組みの下、実施団体や大学に配慮を求める形での対応となり、課題や懸念を十分に払拭(ふっしょく)できなかった――と総括した。

記述式問題の見送りについては▽中教審高大接続特別部会、高大接続システム改革会議などで、記述式導入の是非も含め、さまざまな課題や懸念点が早い段階から委員より指摘されていたが、具体的課題の解決は、その後の専門的・実証的検討に委ねるとされた▽共通テストでの記述式問題の導入とともに、各大学が個別実施する2次試験との関係を検討する必要性が指摘されたが、共通テスト改革に議論が集中した▽大学入試センターと各大学との共同採点や試験時期の変更も検討されたが、大学や高校から困難との意見が出され、民間事業者による採点が採用された――とまとめた。その結果、採点の質向上は図れるが採点ミスをゼロにするのは極めて困難であり、自己採点の大幅な改善も難しいとして、導入見送りになった。

続いて、報告された経緯について、委員が意見を交わした。

益戸正樹・Uipath特別顧問は「大きな問題を考えるときには、事前に課題や問題点、リスクを多角的に検討しなければならない。入試のように技術的な内容を含むものは特にそうだ。ところが、今回の議論では、結論が先にあり、制度の細かな設計が追いついていなかった」と述べ、結論ありきの議論で具体策の検討が不十分だったとの見方を示した。

その上で「なぜそうなったかと言えば、2020年のターゲットイヤーに縛られすぎたからではないか。この反省を踏まえると、24年度という今回の議論のゴールも実現可能性を考えていかなければならない」と述べ、現実を踏まえたスケジュールを構築する重要性を指摘した。

芝井敬司・日本私立大学連盟常務理事(関西大学学長)は「高校で英語4技能を教える必要があるのと、共通テストで英語4技能を問うのは、別問題だ。共通テストに過大な課題を押し付けることが、今回のベースとなる問題ではないか」と指摘。

柴田洋三郎・公立大学協会指名理事(福岡県立大学理事長・学長)は「20年の導入はあまりに早く、準備ができていなかった。こうした基本設計はどこでなされたのか」と述べ、スケジュール上の問題を強調した。

また、各国の大学入試制度に詳しい川嶋太津夫・大阪大学高等教育・入試研究開発センター長は「大学入学者選抜は、今後、大学と学生のマッチングになる。大学はアドミッションポリシー(AP)が問われる。高校の学びが変わるなら、大学入学者の選抜方法も変えないといけない」と説明。

今後の論点として▽検討会議のアジェンダと射程を明確化する合意形成が必要▽初等・中等・高等教育の学習プロセスの中で大学入試をどう位置付けるか▽高校の学習成果の評価を誰が行い、それを大学入学者選抜でどう扱うのか▽大学入試の共通テストと各大学の個別試験の役割をそれぞれどう位置付けるか▽大学入試における公平性をどう考えるか――を示した。

こうした議論を受け、萩生田文科相は「過去の経緯の検証は、国民が納得できる、よりよい制度を構築するために行う。資料を読むと、実は、私が最後に立ち止まらざるを得なくなり、記者会見などで言った内容は、これまでに多くの識者が指摘してきたことばかりだった」と述べた。その上で「課題があるまま進んでしまった。大きな課題は、文科省そのものにもあったのか、と自分自身の反省も含めて思っている」と踏み込んだ。

続けて「だからといって、文科省を信用しないで議論してくれ、とはいかない。信用してほしい。それに応え、この改革を乗り越えていかなければいけない、と心に決めて、この会議を開いている。過去の教訓から得られるものを生かし、未来に向けた検討をしていきたい」と議論を引き取った。

会合終了後、記者団の取材に応じた座長の三島良直・東京工業大学名誉教授(前学長)は「経緯の検証が一番大事。きょうが始まりだと思ってほしい。かなり問題点は見えてきている。共通テストでどういう科目をどこまでやらなければならないか。まず高校教育と大学教育の間にある入試の位置付けを明確にして、基本的な考え方をしっかり提示したいと思っている」と話した。

検討会議は月1~2回程度の頻度で開催し、当面は経緯の検証をさらに深めていく見通し。年末までに方針の取りまとめを目指す。

次のニュースを読む >

関連
関連記事