【入試改革】全高長、自治体ら4技能評価支持 自民党WT

大学入学共通テストでの英語民間試験の活用延期を受けて、今後の大学入試における英語試験の方向性を検討している自民党のワーキングチームは2月10日、第6回会合を開き、全国高等学校長協会(全高長)をはじめ、英語教育に力を入れる自治体や大学団体などからヒアリングを実施した。自治体からは、地理的格差への対応策を求める声が上がる一方、大学入試における英語4技能評価の実施を支持する意見が相次いだ。座長の原田義昭衆院議員は、英語民間試験の活用を前提とした延期決定前の実施案の一部を取り入れながら、3月末までに方針をまとめることに意欲を示した。

「制度見直しは当然。入試センターが実施を」

自治体や関係団体からヒアリングを実施した自民党WT

全高長会長の萩原聡・東京都立西高校校長は、昨年7月と9月に、文科省に、英語民間試験の活用への高校側の不安をまとめた異例の要望書を提出した経緯を説明。その上で、私見として「課題が解消されていない以上、制度の見直しは当然だ。高校で身に付けた英語4技能の評価は、大学側が主体的に責任を持ってやらなければならない。英語4技能評価を共通テストで実施するのであれば(民間試験団体ではなく)大学入試センターが実施すべきだ」と述べた。

また、英語4技能のうち、スピーキングやライティングを高校の授業に盛り込んでいくには、授業時数や教員の負担、費用面で困難が伴うと指摘。「国の支援が必要だ」との認識を示した。

「共通テストの日程内でやってほしい」

へき地を多く抱える北海道教育委員会は、延期前の段階で、ベネッセコーポレーションのGTECや英検については、大学入試センター試験と同程度の試験会場の確保にめどが立っていたとして、地域格差への一定の配慮があったとの認識を報告。一方で、道教委の佐藤嘉大教育長は「やはり共通テストを受けるのとは別に、高校3年生でさらに2回、場所によっては宿泊を伴う形で英語民間試験を受けるのは生徒の負担になる。もう少し会場を増やしたり、交通費を補助したりしてほしい。可能であれば、共通テストと同じ日程の中でやるのが望ましい」と述べた。

文科省が2018年に公表した英語教育実施状況調査で、中学生、高校生、教員共に、国が定めた目標達成率が最も高かった福井県は、小学校中学年以上での外国語の授業の先行実施や、中学校と高校での外国語指導助手(ALT)の1校1人配置、中学校3年生での英語民間試験の受験料1回分の全額補助などの施策を紹介した。

私立を含む県内の中学校と高校の英語教員が加入し、長年、教材研究などに取り組んでいる福井県英語研究会会長を務める田中宏明・福井県立武生高校校長は「県内の学校では、以前から4技能統合型の授業に取り組んでいたので、大学入試での英語4技能評価は歓迎していた。ただ、民間試験はそれぞれ目的や対象者が異なるので、授業で受けた内容が適切に評価されるのか、経済的格差、地理的格差の問題にも不安があった。来年度の共通テストの英語では評価されないスピーキングやライティングについては、大学の二次試験で評価するようにしてほしい」と訴えた。

英語が初めて実施された2019年度の「全国学力・学習状況調査」で、政令市の中で最も平均正答率が高かったさいたま市は、同市が16年度から始めた小1~中3までの英語教育一貫カリキュラム「グローバル・スタディ」の成果を報告。同市教委の青木俊憲・主席管理主事は「全国学力調査の結果に満足せず、今後はICTを効果的に活用して児童生徒の英語4技能を伸ばす授業に取り組みたい。高校生には、4技能を発揮する場が必要だ。生徒の海外留学などについて、国からの支援があればよいと思っている」と要望した。

「成績提供システムはありがたい制度だった」

自民党WTの冒頭にあいさつする原田座長

国立大学協会は、英語4技能評価を大学入試で実施することは必要だとした上で、文科省の「大学入試のあり方に関する検討会議」で関係者からの意見を取り入れつつ、混乱が生じないように決定事項を速やかに情報発信するよう求めた。同協会の山本健慈専務理事は「英語民間試験の認定は大学入試センターが行ってきたが、その審査過程を検証する必要がある。CEFRの段階別表示も専門家による再度の検証が求められる」と指摘した。

公立大学協会理事の柴田洋三郎・福岡県立大学長は、公立大学で英語民間試験を活用予定の大学が、導入延期の決定前は78大学あったにもかかわらず、延期決定後は1大学のみとなったことについて「(大学入試英語成績提供システムは)大学にとっても受験生にとってもありがたい制度だった。共通IDで管理するので、受験生は出願時の手間を省けるし、大学も総合型選抜などで利用できるので画期的だった。もしこの制度が導入されていれば、積極的に利用したいと思っていた」と説明した。

「英語4技能評価は各大学の判断で」

日本私立大学協会は、高校や大学教育における英語4技能の重要性は認めつつも、大学入試で英語民間試験を活用したり、英語4技能評価を各大学が独自に実施したりすることについては、あくまでも各大学のアドミッション・ポリシーに基づいて判断すべきだとの立場を示した。同協会の大学教務研究委員会委員長である安井利一・明海大学学長は「各大学としては、英語4技能評価を一つのポイントとして捉え、積極的に活用していく方向に間違いはない。しかし、高校から大学への接続の在り方が、入試だけでいいのかは議論の余地がある」と述べた。

日本私立大学連盟は、英語民間試験の活用について、目的と手段の整合性を再検討すべきだとし、議論の方向性として、英語民間試験の活用を一律に禁止することや、共通テストで英語4技能を画一的に測定することに過度にこだわるのは問題だとした。同連盟教育研究委員会委員の沖清豪・早稲田大学文学学術院教授は「高校教育が多様化する中で、私立大学に進学する学生の全員がCEFRのB1レベルであるわけではない。A2にも達していない志願者もいる中で、大学におけるリメディアル教育(基礎学力を補う教育)も重要になる。中学や高校で英語4技能が重視されるとすれば、大学での教員養成でも英語4技能の能力が高い学生を育てていかなければならない」と大学教育の課題も挙げた。

「議論に耐える案を出したい」

関係団体などからのヒアリングを終えて、原田座長は「本日までの議論を踏まえ、外部の議論にも耐えられるような案を出したい。(英語民間試験活用についての延期決定前の)原案の良さを取り込みながら、最後につまずいたところを、どうすれば皆さんが納得するか、しっかり頑張って(検討して)いきたい」と述べた。

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