震災後に生まれた子供の発達の遅れを報告 被災地で調査

東日本大震災で被災した岩手・宮城・福島3県で実施した調査の結果から、震災後に生まれた子供に語彙(ごい)力や記憶力などで発達に遅れが生じている可能性があるとの報告が、仙台市内で2月11日に開催された「子どもの育ちを支える地域づくりシンポジウム」(宮城県精神保健福祉協会「みやぎ心のケアセンター」主催)であった。

宮城県内で実施された検査の結果(「みやぎ心のケアセンター」紀要より)

報告されたのは「みちのくこどもコホート」と名付けられた研究の結果で、研究の正式名称は「東日本大震災後に誕生した子供とその家庭への縦断的支援研究」。被災3県の精神科医や臨床心理士らから成る研究チームが、震災を経験した親から震災後1年以内に生まれた子供約220人の発達について、2015年から縦断的に追跡調査していた。

実施したのは表現力、記憶力、語彙力の3分野を測る6種類の検査。調査報告では、4つの絵の中から説明内容に適した絵を選ぶ語彙力の検査で、平均を10とした際の得点が8.9だったとし、同年齢の子供の平均と比べて約8カ月の遅れが見られたとした。

また、手の動きを覚えて同じ動きをさせる検査で得点が8.6となるなど、記憶力と表現力の検査でも数カ月から半年の遅れが見られたとした。

研究チームは発達に遅れが生じた背景について、被災した保護者が生活再建に追われたり、うつや不安で心の健康を崩すなどしたりして、子供の発達に影響を与えた可能性があると指摘。「子供一人一人の状況に応じ、家族に対する支援を長期的に行う必要がある」と訴えた。

報告後のディスカッションで、登壇した岩手県巡回型スクールカウンセラーは、自身が実施したアンケート調査から、「沿岸部に住む子供は、内陸部の子供よりストレスを抱えている割合が高かった。被災した親の体験を身近に聞くことが影響しているのではないか」と発言。

また、同じく登壇者で研究チームの調査に協力した宮城県東松島市の幼稚園の副園長は「震災後に生まれた子供は、話を聞いてほしがる傾向が高い」とし、「『話を聞いて』と言われた保護者が『ちょっと待ってね』と言わざるを得なかったのではないか」と話した。

研究チームは長期的な追跡調査が必要だと考えた背景について、「震災後に生まれた子供について、被災地域の保育士や行政担当者から相談を受けることが少なくなかった。子供たちに対しては、『落ち着きがない』『集団行動になじめない』などの印象を抱いた」と説明。

特に被害が大きく復興に時間がかかり、現在も支援が十分ではない沿岸地域でその傾向が顕著だとして、大規模な自然災害後の子供の発達や保護者の精神心理学的評価についての研究や、子供とその家庭に対する長期縦断的な介入研究が必要だと判断したという。

同調査は対象となった子供全員が義務教育の終わる15歳まで、継続して実施する計画だとしている。

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