麹町中×未来の教室 最新成果はSDGsの探究授業

AI教材を使って知識・技能を習得する効率を高め、生み出された授業時間を探究学習に振り向ける取り組みが昨年9月から東京都千代田区立麹町中学校(工藤勇一校長)で進められており、2月21日、中学2年生4クラスから選ばれたグループの学習成果をまとめた最終発表会が行われた。探究学習のテーマには、国連が設定した持続可能な開発目標(SDGs)の「質の高い教育をみんなに」を据え、発展途上国と教育の問題を取り上げた。生徒らはインターネット経由で現地の人々に英語でアンケート調査を行い、その結果を集計して事前に立てた仮説を検証し、解決策を考察した。

フィリピンの人々にWEBアンケートした結果を説明する麹町中学校の生徒ら

麹町中学校では、経産省が取り組んでいる「未来の教室」実証事業の一つとして、昨年度からEdTechベンチャー企業COMPASS社が開発したAI教材、キュビナ(Qubena)を導入。1年生の数学の授業で、授業時数62時間分の単元学習をわずか34時間で修了させる成果を上げた。それに続いて、今年度は英語の授業にキュビナを導入するとともに、生み出された授業時間のうち15時間分を使い、COMPASS社が開発している課題発見解決型ワークショップを中学2年生の探究授業として取り入れた。

このワークショックでは、生徒たちはSDGsの概要を学んだ上で、統計データやインターネット経由のリサーチを通じてひとつの発展途上国を選び、その国が抱える教育問題について仮説を立てることからスタートする。次に、統計の手法を学び、市場調査ツールのグーグル・サーベイ(Google Surveys)を使って、インターネット経由で調査対象に選んだ国に住む人たちに英語でアンケート調査を実施した。その調査データを統計の手法を使ってアンケート結果としてまとめ、最初に立てた仮説を検証。浮かび上がった課題の解決策を考えて、プレゼンテーションする。

一連の流れの中で、生徒らは英語を含めたコミュニケーション能力を磨き、アンケートの集計作業を通して数学的な知識やテクノロジーの扱い方を学ぶ仕組み。

発表会で生徒らのグループは、ナイジェリアやフィリピン、ウガンダの教育問題をそれぞれ取り上げた。

フィリピンを選んだグループは、まず事前リサーチの結果として、教育の障害と考えられる仮説について「親の学歴が低いから子供の教育への関心がない」「家計が苦しく学費が足りない」「勉強しても将来的に職と結び付かない」と説明。学歴や月収、教育に対する考え方などの項目についてアンケートを行い、「大学まで教育を受けていない人は収入が低い。一方で、大学まで教育を受けている人は収入が高い」「無職の人の割合が多い」「大学まで行きたかったと考えている人が多い」などの結果を導き出した。

これを受けて、生徒らは「みんなが大学へ行ければ収入が上がるかも…」「何らかの理由で親が大学に行けていない」「悪循環が生まれる。学歴の差によって貧富の差が生じる」「働く場所、職が足りない」と考察。解決策として、世代を超えた貧困の悪循環を改善するために「会社が学校を建て、卒業生を雇う」と提案。日本で企業が設立した学校の例を挙げ、「実際に日本に学校を建てた企業の人と話をしてアドバイスをもらい、このプロジェクトを実現してみたい」と感想を述べた。

審査員を務めた折茂美保・ボストンコンサルティンググループ・マネージングディレクター&パートナーは「とても論理的な説明だった。自分の仕事でも、こうした論理的な説明はいつも求められている」と評価し、社会で活躍するために論理的な思考が大切だと指摘した。続いて「みなさんが調べたフィリピンの教育事情には、日本の中にも当てはまるところがありそうだ。考えてみるといいのではないか」と課題を提起。生徒らとのやりとりが続いた。審査員には、浅野大介・経産省教育産業室長と神野元基・COMPASS社ファウンダーも参加した。

最後にマイクをとった工藤勇一校長は「SDGsには、誰も取り残さないという考え方がある。世界中の人たちがオーケーだという社会を作るのは大変なことだ。きょう、みなさんはその入り口に立った」と、生徒らに話した。

次のニュースを読む >

関連