【一斉休校】オンライン学習支援の対応続々 自民党

全国の小中高と特別支援学校の一斉休校で、児童生徒の保健管理や学習の遅れが懸念される中、自民党は3月3日、教育再生実行本部とEdTech振興議員連盟の合同会合を開き、文科、経産両省とオンライン学習支援に携わるEdTech企業や団体からヒアリングした。EdTech企業から無料のサービス提供など積極的な取り組みが次々と紹介される一方、NPO法人からは学校の休校期間中に児童生徒の居場所をオンライン上で提供し、生活リズムを整える試みなどが報告された。議員からは「素晴らしいサービスが提供されても、ネットにつながっていない児童生徒には届かない」と格差拡大への配慮を求める指摘をはじめ、個人情報の管理や情報セキュリティーへの配慮を促す意見が出された。

合同会合であいさつする自民党教育再生実行本部の馳浩本部長

会合では、文科省の矢野和彦官房審議官(初等中等教育局担当)が3月2日にインターネット上の学習支援コンテンツポータルサイトとして「子供の学び応援サイト」を立ち上げ、学校種や教科ごにコンテンツを整理して紹介している状況を説明。

経産省の浅野大介・サービス政策課長・経産省教育産業室長は、全国学習塾協会が文科省による一斉休校の通知と同じ2月28日に指針を出し、大手予備校や学習塾の多くが1、2週間の休校に応じたり、対面授業を中止してオンライン受講に切り替えたりしている状況を報告。経産省としても、EdTech企業によるオンライン学習機会の無償提供をまとめたサイト「#学びを止めない未来の教室」を開設したことを説明した。

これに続けて、EdTech企業やNPO法人から、▽株式会社Libry(リブリー)▽NTTコミュニケーションズ株式会社▽LINEみらい財団▽株式会社コードタクト▽認定NPO法人カタリバ▽グーグル合同会社――の6法人がそれぞれの取り組みを紹介した。

Libryの後藤匠・代表取締役CEOは、一斉休校の通知が出た2月28日午後3時に、EdTech企業各社の取り組みや関係省庁の情報を集約し投稿メディア「note」で公開。SNSを中心に拡散され、3日間あまりで閲覧回数が13万回に達したことを紹介。Libry社としても教科書会社の教材をデジタル化したコンテンツを中学高校向けに無償提供する支援策を説明した。こうした取り組みを通して感じた課題として「サービスを紹介しても、どう活用するかイメージをつかめない先生が多い」と述べ、学校現場での活用事例を共有する必要性を指摘した。

NTTコミュニケーションズの稲田友・スマートエデュケーション推進室担当課長は、デジタル教材やツールの教育クラウドサービス「まなびポケット」を臨時休校した学校に向けて無償提供を始めたところ、一斉休校の通知から3日間で454校、児童生徒19万5000人分の申請が殺到し、職員が休日返上で対応している状況を報告。

寄せられた学校現場からの声には「学校がなくても学べる、を証明する」とコメントする小学校教師が出ていることを紹介し、「一斉休校の窮地を乗り越えようと、挑戦する先生が全国各地に出てきていると実感している」と説明した。

また、課題としては▽学校によっては、児童生徒との連絡手段を持たない。学習内容を伝えられないので、学習指導を諦める学校が出ている▽学校のパソコンを「備品だから」「全員分ないから」「家庭にインターネットがないから」といった理由で持ち帰りできず、自宅学習ができないケースがある――といった例を挙げた。稲田課長は「最後は自治体職員、教職員、保護者の意識改革が最大の課題だ」と述べた。

LINEみらい財団の村井宗明理事は、日本数学検定協会、学研、市進学院などと連携して休校となった中高生を対象に、LINEアカウント上で「5教科の学習動画」「英語のヒアリング問題」などの無償提供を始めた、と報告した。また、10代ではLINEを利用する時間がウェブ上のホームページを見る時間の5倍になっている実態を紹介。文科省が公開したばかりのポータルサイトがウェブ関連に限定され、SNSアプリが埋め込まれていない現状は「実効性を持たない」として改善を求めた。

コードタクトの後藤正樹・代表取締役CEOは、ブラウザー上から児童生徒の学習状況をリアルタイムで把握できる授業支援システム「schoolTakt」(スクールタクト)を5月末まで小中高校を対象に無償提供し始めた。と説明。schoolTaktとウェブ会議サービス「Zoom」を組み合わせることで、学校で通常行っている「朝の会」をインターネット・ブラウザー上で展開するなど、学校生活のリズムを保つことができる仕組みを紹介。schoolTaktを通じて、調べ学習やグループによる学び合いなども行っている事例を紹介した。

認定NPO法人カタリバの今村久美代表理事は「学校が休校になる期間に、学校の代わりとなる居場所、生活のリズム、そして学びと探究に導くオンライン空間が必要だ」と述べ、「Zoom」を活用して子供たちに居場所を提供する事業をスタートさせたことを説明した。

「今回の一斉休校では、被災地と同じことが起こりそうだ。まず、生徒たちの生活のリズムが乱れ、昼夜逆転が起こる。家に長くいるので、ゲームやSNSへの依存が強まり、学習の遅れにもつながる。さらに、子供がずっと家にいることが、保護者にも子供にもストレスとなって、トラブルが起きやすくなる」と指摘。「トラブルの末、子供たちはリスクのあるコミュニティーに飛び込み、望まない妊娠や家庭崩壊につながることもある」と問題意識を示した。

こうした事態の発生を防ぐには、オンライン上で朝夕のホームルームを行うなど生活リズムを維持し、児童生徒の居場所をつくって心のケアに務める必要がある、と説明。課題として「インターネット環境のない子供たちに、こうした場所をどう届けるか。スクールワーカーなどと連携して取り組むべきだ」と話した。

グーグルの小出泰久Google for Education代表は、学校向けの端末「クロームブック」と無償のグループウエアツール「G Suite for Education」を組み合わせることで、ICT環境のある場所ならどこでも持ち帰り学習が可能になる、というグーグルのサービスを紹介。

「もともと無償のサービスで、学校の休校を特に想定しているわけではないが、学校からの問い合わせが急に増えている」と現状を説明。G Suite for Educationを活用した学校の事例を紹介した。

出席した議員による質疑では、ベテラン議員から「心配なのは、ネットにつながっていない子供をどうするか。避けて通れない問題だ。提供されているサービスは素晴らしい。しかし、そのサービスが届かない子供が圧倒的に多い。これが格差を助長するようになってはまずい」と、学校のICT環境整備が自治体によってばらつきがある実情を念頭に、格差拡大を懸念する指摘が出た。

また別の議員から「最先端の技術を進めるときには格差が問題になる。もうひとつはセキュリティーの問題だ。個人情報を集め、アクセスが増えれば広告と結び付くことも考えられる。そもそもオンラインの世界に入ることで子供たちの世界が広がれば、そこにはリスクもある」との指摘もあった。

締めくくりにあいさつした教育再生実行本部の馳浩本部長(元文科相)は「全国一斉の臨時休校は、EdTechを推進するチャンスでもある。EdTechを使って学べば、学習ログが残る。その評価をどう考えるかも重要だ。休校期間が終わったら、その成果を評価する機会を持ちたい」と述べた。

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