【一斉休校】EdTechで学びを止めるな 佐藤教授に聞く

新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)による長期間の「一斉休校」では、自宅にいる児童生徒と教員をビデオ会議システムでつなぎ、遠隔授業などを始める学校や、EdTech企業が家庭学習向けにサービスを無償提供する動きが出始めている。そんな中、国内外のEdTechを推進する教育イノベーション協議会は、経産省と連携し「マナビを止めるな!プロジェクト」を立ち上げ、ロゴマークを賛同企業などに提供したり、EdTechの実証を試みたりすることを計画している。同協議会代表の佐藤昌宏デジタルハリウッド大学大学院教授に、「学校で学べない状況」におけるEdTechの可能性を聞いた。


授業は止まっても学びは止めない
――プロジェクトの狙いは何ですか。

新型肺炎の国内感染が広まり、全国の学校が長期間の休校を余儀なくされました。「学校で学べない状況」であるけれど、EdTechを活用すればいつでもどこでも、誰でも学ぶことはできます。プロジェクトではこれをむしろチャンスであると捉え、そうした取り組みができる自治体や学校にEdTech企業がサービスを無償提供し、実証を進めていこうというものです。もともと、こうした動きは、新型肺炎が最初に広まった中国でも、かなり早い段階で起こっていました。これを日本でもやらないといけないと考えたのです。

「マナビを止めるな!プロジェクト」をスタートさせた佐藤教授

現在、一斉休校に合わせて経産省が立ち上げた「学びを止めない未来の教室」と連携し、賛同する企業にプロジェクトのロゴマークを提供しています。また、そうした企業がどのような思いでサービスの無償提供に踏み切ったのか、具体的にどんなことができるのかなどを伝えるインタビュー動画も撮影し、ユーチューブ上で順次配信していきます。

GIGAスクール構想は持ち帰りも想定すべき
――こうした学びを実現する上での課題は何ですか。

将来的な課題として、大きく分けて2つあると思います。

1つは、家庭のネットワーク環境です。やはり、全ての家庭に無線LANによるインターネット環境が整っているわけではないので、使いたくても使えない現状があります。文科省のGIGAスクール構想でも、家庭への学習者用コンピューターの持ち帰りまではまだ想定していません。携帯電話の通信で使われているLTE方式や無線LANルーターを貸し出すなどの方法で、家庭でも利用できるようにすべきです。

もう1つは、教育の質の担保です。新しいサービスやソフトウエアが次々に登場する中で、学習指導要領の内容が本当に身に付くかを精査する必要があります。フィンランドでは「Kokoaエデュケーションスタンダード」という認証制度があり、国内外のさまざまなサービスについて、フィンランドの教育内容にどれくらい貢献するかを評価しています。

また、米国では民間企業が公教育にサービスを提供する際は、個人情報の保護や広告利用を行わないなどの「宣言書」を提出しなくてはならない制度があります。

日本でも、公的機関による民間のEdTechサービスの内容やセキュリティー対策などを審査し、質を保証する仕組みを整えることができれば、学校も安心して民間サービスを利用できるのではないでしょうか。

学校教育への「宿題」にどう取り組むか
――今回の一斉休校で、一部の学校ではICTを活用した授業に乗り出すところもありますが、大半の学校はそうではありません。

家庭のネット環境の問題は別として、民間のサービスでは、学習指導要領に準拠しているか分からないということであれば、まずは、Zoomなどのビデオ会議システムを使って、普通に教科書による一斉授業をやってみてはどうでしょうか。普段、教室で行っていた授業がオンライン上に代わっただけです。子供の学びはログを取ることで評価できますし、授業中の反応をこまめに確かめたければ、教員をもう一人参加させればいいと思います。

「教員」「教室」「学習指導要領」の3つがそろわなければ、本当に教育の質は担保されないのか。これこそが、今、デジタルテクノロジーがここまで進化した中で、学校に突き付けられた大きな課題だと思います。

今回のような急な一斉休校が二度起こらないとは限りません。そのときに備え、どんな体制を整えておくべきかが、私たちに与えられた宿題です。プロジェクトをトリガーにして、EdTechの成果や実現に向けた課題が実証されれば、毎年のインフルエンザによる学級閉鎖や、不登校児童生徒への学びの提供にも応用できるなど、可能性が広がります。

これを機に、遠隔授業やEdTechの活用などにチャレンジした学校や教員には、ぜひプロジェクトとしてインタビューさせてほしいと思っています。こんなときだからこそ、ICTに慣れていない教員や学校の環境を変えていくチャンスです。

【プロフィール】

佐藤昌宏(さとう・まさひろ) デジタルハリウッド大学大学院教授。教育イノベーション協議会代表理事。本紙「オピニオン」執筆者。内閣官房教育再生実行会議技術革新ワーキンググループ委員や経産省「未来の教室とEdTech研究会」座長代理などを務め、EdTechによる教育改革に取り組む。著書に『EdTechが変える教育の未来』(インプレス)。

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