【一斉休校】貧困家庭に早期支援を キッズドア理事長

新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の感染拡大を防ぐため、急きょ政府から要請された「一斉休校」。子供の貧困対策に取り組むキッズドアの渡辺由美子理事長は、経済的に厳しい家庭への支援や、休校解除の基準を早期に示す必要性を指摘する。

賃金補償は3月中に支払いを
――一斉休校となった今、どんな問題を感じていますか。

経済的に厳しい家庭の早期支援が必要との認識を示す渡辺理事長

学校給食がなくなったことで、保護者からは昼食やおやつの用意が大変だという声が聞こえてきます。特に経済的に厳しい家庭には、費用面の負担も重くのしかかります。新型肺炎は子供にも感染が広まりつつあるので、今回の一斉休校の是非を一概に判断するのは難しいですが、あまりにも急だったことで、こうした家庭への支援策にまで手が回っていない印象です。

また、保護者が仕事を休めない家庭の受け皿として、学童保育は夏休みと同じように朝から夕方まで開所することになりましたが、子供の密集度合いでいえば、学校よりも感染は広まりやすく、どこも感染防止対策や人手不足で大変なようです。今回の対応は、保育所や学童保育にも過度な負担がかかっていると言えます。

今回の政府の要請では、学校や保育関係者だけでなく、もっと経済界にも協力を呼びかけ、保護者が安心して休めるようにするなどの手を打つべきでした。

――子供のいる保護者が仕事を休んだ場合の賃金補償も行われますが

子供の進級や進学を控える3月は、ただでさえ出費がかさむ時期です。貯蓄がほとんどない家庭では、突然の出費に対しては借金するしかなく、返済のあてがあるわけでもないので、長期にわたり家計にダメージを与えることになります。

キッズドアとしても要請をしていますが、賃金補償はできるだけ早く、遅くとも今月中には保護者にお金が行き渡るようにすべきです。合わせて、政府には緊急の小口貸付制度を設けるなどの対応を求めています。

休校中に広がった学力格差をどう埋めるか
――休校が中長期化する恐れもあります。今後、どんなことが課題になるでしょうか。

とにかく先の見えないことが保護者に不安を与えています。政府は春休みまでと言っていますが、新年度になったら学校が通常通り再開するかは不透明な状況です。自治体はできるだけ早く「地域で感染者がいなければ、いつまでに学校を再開する」といった、休校解除の基準を定めて公表すべきです。それだけでも、見通しがつくので保護者は少し安心できます。

一斉休校の要請直後から、さまざまな企業や団体がインターネット上で学習教材を無料で利用できるようにしました。とてもありがたいことですが、経済的に厳しい家庭にはインターネット環境やパソコンがないところも多いのです。

この間に、こうした教材を利用できる家庭と、そうでない家庭の間で、子供の学力格差が広がってしまうことが懸念されます。例えば、春休みに入ったら、あまり家庭で勉強ができなかった子供に対し、学校で補習を行うなどの対応が必要になるでしょう。

――行政や経済界に対して求めることは。

新型肺炎によって、経済的にさまざまな影響が出ています。例えば、飲食店やスーパーの営業時間が短縮し、人件費が削られることになれば、そこにパートタイムで働いている保護者の収入に影響します。私は、それによって、子供の学習塾や進学の費用を賄えなくなるといった、負の循環が起こってしまうことを最も恐れています。

今回の新型肺炎対策では、教育や子育てにもっと必要な予算を投じるべきです。そうしないと、子供たちにしわ寄せがいってしまう。さまざまな企業や団体が支援に名乗りを上げていますが、もはや市民の努力で何とかなる問題ではない。政府だけでなく経済界にも、子供や保護者のために、仕事を休みやすく、雇用が守られるために、必要な支出を求めたいと思います。

教育は子供の人生を左右します。だからこそ「教育を維持するためにお金が必要だ」と教育界も声を上げてほしいです。このまま一斉休校が長引けば、どんどん現場は疲弊していきます。


プロフィール

渡辺由美子(わたなべ・ゆみこ) NPO法人キッズドア理事長。経済的に厳しい家庭の子供のための学習支援や居場所づくりなどに取り組んでいる。内閣府の「子供の貧困対策に関する有識者会議」構成員も務める。

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