【一斉休校の現場から】 オンライン登校を追究するN高校

新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)による一斉休校で、オンラインによる遠隔授業を始める学校が増えている。そんな中、広域通信制高校のN高校は、生徒が各地の校舎に登校して授業を受ける通学コースについて、政府の休校要請よりも前からオンラインによる遠隔授業に切り替えた。同校の上木原孝伸副校長は「オンラインでできることを究極まで突き詰めれば、校舎でしかできない学びが逆説的に見えてくる」と語る。

要請より早くオンライン登校に切り替え
オンライン登校の成果を説明する上木原副校長

N高校には、オンラインによる受講が中心のネットコースと、全国13キャンパスに日常的に登校する通学コースがある。今回、全ての授業をオンラインに切り替える決断をしたのは、約1700人が通う通学コースだった。

国内での感染が広まる中、同校は2月21日に、通学コースについて、25~28日の4日間、自宅から授業に参加するオンライン登校にすると発表。その後、政府の一斉休校の要請を受け、オンライン登校は現在も継続している。

オンライン登校を実施するにあたり、N高校では事前に生徒のコンピューターにビデオ会議アプリ「Zoom」をインストールさせ、使い方などをレクチャー。最初の1週間は、まずは使い方に慣れることを目的に、個人ワークなどを中心にした遠隔授業を行った。

授業後は教員が振り返りシートに気付いたことを入力し、うまくいったことや改善点を共有。PDCAサイクルを回しながら、遠隔授業の質を上げていった。

上木原副校長は「生徒からは、校舎に通えなくなり、友達に会えないのは残念だという声もあった。しかし、少しずつ『みんなでいいものをつくっていこう』という雰囲気ができ、改善点などを前向きに提案してくれた。授業の満足度も次第に上がっていった」と振り返る。

2週目からは次第に、普段の校舎での授業と同じようなグループディスカッション形式の遠隔授業も始まった。参加者を複数のグループに分けられる「Zoom」のブレークアウトルーム機能を活用し、参加者が意見を投稿し合ったり、議論の結果を発表し合ったりした。

「Zoom」を使って展開されているオンライン授業

普段の授業ではグループ作りに時間がかかってしまうこともあるが、オンライン上ではそうした時間もかからず、むしろスムーズにできた面もあったという。

その他にも、教員が二人一組になり、ラジオ番組のような掛け合いをしながら授業を進行したり、BGMを付けて生徒の注意を引いたりする工夫が教員間で広がった。遠隔授業は、教員が自宅から行うこともできるが、どの教員も「教室で新しいことにチャレンジしたい」とキャンパスに通常通り出勤し、教室からよりクオリティーの高い授業配信を目指しているという。

生徒が主体的に学べなければ意味がない

こうした成果があった一方で、課題も見えてきた。オンライン登校を開始してからしばらくして、生徒の授業出席率が低下してきたのだ。この問題については、先週は授業に来ていたが今週になって来なくなった生徒などをピックアップし、オンライン授業で不安なことがないかなど、電話で状況を確認することで対応した。2週目から出席率は下げ止まり、授業に再び参加する生徒も増えてきた。

上木原副校長は「オンライン上では、授業のリアクションはいつもよりオーバーにしないと生徒に伝わりにくい。本校では業務用チャットアプリのSlackを使って生徒との連絡を行っているが、スタンプを多く付けたり、盛り上げるようなコメントをしたりすることで、生徒のモチベーションも上がる」と指摘する。

また、国内感染が終息していない状況を受け、N高校では卒業式に加え、来年度の入学式もオンラインで実施する。 学習を継続する上では、教員や友達とのつながりは非常に重要になる。対面での人間関係づくりができない中、オンラインでどうやって関係性を築いていくか、工夫して取り組んでいくという。

こうした試みによって、N高校での学びはさらに進化しようとしている。一斉休校により、民間企業がさまざまなサービスを無償で開放している状況を踏まえ、上木原副校長は「いくら良質なコンテンツが無料で使えても、生徒が主体的に学ぼうとしなければ意味がない。そして、オンライン上でこれだけ学べることが分かった今、『校舎に通う意味とは何か』を教員も生徒も考え始めた。オンラインでできることを全力で究極まで突き詰めれば、校舎でしかできないことが逆説的に見えてくると思う」と語った。

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