【一斉休校の現場から】非常事態に最優先すべきこと

臨時休校中、情報が錯そうする中で、学校は生徒や保護者とどのように向き合うことが大切なのか。家庭学習や4月以降の取り組みなど、学校現場に課せられた課題の解決は、一筋縄ではいかないだろう。その中で、教員は何を最優先に考えるべきか。全国高等学校長協会(全高長)会長の萩原聡・都立西高校長に聞いた。


学校方針を早期に共有

都立西高校は2月25日、校内独自に新型コロナウイルス拡大防止の取り組みを話し合い、翌26日に学校の方針や予防策をまとめたプリントを生徒に配布した。

≪予防≫
▽せっけんでの手洗いの徹底(マスクを外した時や登校直後、食前など)
▽授業が終わったら、教室の換気を徹底(5~10 分間、2カ所以上の窓を対角線上になるように開ける)
▽感染リスクの高い行為の禁止(ペットボトルの回し飲み、タオルの共有、他人と対面になり、至近距離で接触するなど)
≪学校の方針≫
▽学校は安全・危険区域を分けることが困難なため、一般の基準より早めに対応する
▽学校で発熱や咳(せき)などの症状が出た生徒は、保健室で休養させずに、早退を促す
▽今後ウイルスの性質が解明される、または、感染の拡大状況などに応じて、柔軟に対応を変更する。流行が収束したら、速やかに通常どおりの対応に戻る

さまざまな情報が錯そうするなか、早い段階で学校の方針を示して生徒や保護者と共有した。そのため一斉休校が要請された後も、特に生徒や保護者が混乱することなく臨時休校期間に入ったという。

休校中の生徒について、「高校生は生徒自身も自主的に動け、自宅で1人でも過ごせる年代。ただ小学生はそうはいかない。今回の休校を巡っては、学校種で直面する課題がそれぞれ違うだろう」と萩原会長は話す。

家庭学習の課題点は

同高は新年度の教科書を購入する目的で、各学年3月中の別々の1日を登校日に指定。登下校時間をクラスごとにずらすなど、集団になる状態を避け感染リスクを下げる。

休校前の段階で、全学年、授業の未履修はない。期間中の家庭学習については課題を休校前に配布し、生徒はメールなどで教員と連絡を取り合いながら進める。

「当校の生徒は、比較的、自ら学習する癖がついている子が多い。ただ教員が隣でアドバイスを送ったり、すぐに質問に答えたりできる環境ではないので、不安な生徒もいるだろう。さらに高校と一口にいっても、全国にはさまざまなタイプの学校がある。家庭学習の取り組みについて、苦慮している先生は多いと思う」

その他に、同高が日頃から運営する連絡用のツイッターや学習支援サービスClassiを活用して、休校期間中の生徒の生活や学習を支える。

「生徒は東京の各地から通っているので、担任が一人一人を家庭訪問するのは難しい。生徒間ではLINEなどSNSを活用して頻繁にコミュニケーションをとっているようだ」

学校が感染源になってはいけない

萩原会長は政府の「全国一斉休校」の要請について、「非常事態である現状を踏まえると、適切だったのではないか」と評価する。

学校がクラスターになってはいけないと強調する萩原校長

「感染拡大防止の観点から、国が休校を始めるタイミングを主導してくれたのはよかったのではないか。目安を決めていなければ、各自治体もなかなか踏み出せなかったように思う。新型コロナウイルスは子供の感染例が少ない、深刻化しないという情報もある。ただ3月に入り、国内でも子供の感染者が目立っている。これらの状況を踏まえると、休校にせざるを得なかったと思う」

さらに「何より、学校がクラスターになることは避けなければいけない」と強調する。

「当校の場合、生徒と教職員を合わせると1000人近くに上る。もしその規模で感染源になったとしたら、大変なことだ。インフルエンザなどを経験してきたわれわれ現場の教員は痛感しているが、学校の感染症対策はどれだけやっても、完璧とはいいがたい。さらに、新型コロナウイルスについては正確な病状や治療法も判明していない。その段階では子供たちの感染リスクを最大限下げることや、学校がクラスターになることを防ぎ、社会全体の感染者を増やさないことが最善策なのではないか」

いつまで続くのか

一方で「いつまでこの状況が続くのか」と不安も感じるという。

生徒たちが楽しみにしているのは、4月に控えた新入生歓迎会。同高の臨時休校期間は24日までのため、25日の修了式以降の春休み期間を準備に充てようと計画しているという。

「どんな状況になれば休校が解除されるのか。一斉に解除されるのか、地域ごとなのか、学校種ごとなのか。分からないことが多すぎる。万が一4月以降も休校が続くのであれば、新入生への対応など課題が山積みだ。ただ今回の休校要請のように『明日から解除しますよ』などと、急に言い出すことはやめてほしい。しっかりと準備して、生徒や保護者に説明しながら、学校再開を迎えたい」

影響は学校現場だけではない。5月にさいたま市で開催予定だった全高長の総会・研究協議会は、中止になる見込みだ。

今年度に引き続き次年度も会長を務めるが、「とても残念だが、全国から2500人が一堂に集まるとなると現実的ではない。大学入試など大きな課題はあるが、大会は今回見送ることになりそうだ」と説明する。

全国の校長や教員に向けて「新型コロナウイルスを巡ってはわからないことばかりで、学校としての判断を下す際も難しい。ただ生徒の安全と健康を第一に考えて、各学校の状況に合わせた取り組みを続けてほしい」と語った。

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