経済協力開発機構(OECD)は3月23日、国際教員指導環境調査(TALIS)2018の第2次報告を発表し、教員や校長が抱えるストレスの要因について、初めて国際的に比較調査した結果を明らかにした。日本の小中学校教員は、事務的な業務の多さや、保護者への対処にストレスを感じている割合が参加国平均を上回った。また、小中学校の校長は、児童生徒の学力に対する責任と保護者への対処に関するストレスが高かった。
日本の教員が、国際的にみても、事務的な業務の多さや保護者への対処にストレスを感じる割合が多いという調査結果は、教員の働き方改革による事務量の削減や、地域社会が保護者と教員の緩衝材となるコミュニティスクールなどの重要性が改めて示唆されるかたちとなった。こうしたストレス要因は教員の職業イメージにも重なり、教員採用倍率の低下などに関連しているとみられている。
同調査では、小中学校の教員に業務に関するストレスを聞いたところ、「非常によく」あるいは「かなり」ストレスを感じることとして、「事務的な業務が多すぎること(例:書類への記入)」が最も多かった=表1参照。中学校教員は52.5%で参加国平均(46.1%)を6.4ポイント上回り、小学校教員は61.9%だった。小学校については、参加国・地域が少ないため、参加国平均の値は示されていない。
次に「保護者の懸念に対処すること」が多く、中学校教員は43.5%で参加国平均(32.0%)を11.5ポイント上回り、小学校教員は47.6%だった。さらに「児童生徒の学力に対して責任を負っていること」(中学校37.7%、小学校45.1%)、「国、地方自治体からの要求の変化に対応すること」(中学校34.7%、小学校42.8%)、「学校の規律を保つこと」(中学校33.4%、小学校37.9%)と続いた。
小中学校長では「児童生徒の学力に対して責任を負っていること」が最も多く、中学校長で61.7%と参加国平均(50.1%)を11.6ポイント上回った。小学校長では58.7%だった=表2参照。
次に「保護者の懸念に対処すること」が多く、中学校長は54.6%で参加国平均(43.0%)を11.6ポイント上回り、小学校長は46.3%だった。さらに「事務的な業務が多すぎること」(中学校51.4%、小学校50.9%)、「学校の規律を保つこと」(中学校49.0%、小学校42.5%)、「国、地方自治体からの要求の変化に対応すること」(中学校48.4%、小学校45.1%)と続いた。
TALISは教員・校長の勤務環境や学校の学習環境に焦点を当てた国際調査。2008年に第1回、13年に第2回を実施しており、今回は3回目の調査となった。日本は第2回から参加し、今回から中学校(前期中等教育段階)に加え、小学校(初等教育段階)も参加した。
OECDはすでに昨年6月、TALIS2018の第1次報告を公表。日本の小中学校教員の仕事時間が13年調査に続いて世界最長で、自身の指導法に自信を持てず、仕事に満足感を得ていない実態が明らかになっている。
調査では、参加した国・地域ごとに小学校200校、中学校200校を抽出し、1校につき非常勤を含む教員20人と校長を対象にした。中学校は48カ国・地域が参加し、小学校はそのうち15カ国・地域が参加した。
日本では、中学校196校(校長196人、教員3568人)、小学校197校(校長197人、教員3321人)から有効回答を得た。小学校は国公立が98%、私立が2%、中学校は国公立が88%、私立が12%を占めている。
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