集団感染の3条件を徹底排除 学校再開のポイントを読む

新学期からの学校再開を求めた文科省の3月24日付通知には、集団感染のリスクへの対応方法などを示した「学校再開ガイドライン」と、再開後に児童生徒や教職員の感染などが確認された場合に出席停止や臨時休校を判断する基準を示した「臨時休業の実施に関するガイドライン」の2つが、学校現場の指針として添付された。判断の背景にあるのは、前例のない3週間あまりの一斉休校で得られた、新型コロナウイルス感染症に対する知見の積み重ねだ。最大のポイントは、集団感染の発生につながるとされる、3つの条件(換気の悪い密閉空間、多くの人が密集、近距離での会話や発声)が同時に重なる場面を、学校現場から徹底的に排除することにある。平山直子・初中局健康教育・食育課長らの記者ブリーフィングから、ガイドラインの考え方を読み解いた。


保健管理の徹底を強調

ガイドラインを説明する文科省の平山直子・初中局健康教育・食育課長

新学期からの学校再開に当たり、萩生田光一文科相は「一斉休校を始めたときよりも状況が改善しているわけではない」と繰り返し、徹底した感染症対策が学校再開の大前提になっていると強調している。平山課長も「学校は、長時間、児童生徒教職員が一つの場にいる集団で、一度、感染が始まると集団感染のリスクが非常に高い」と、厳しい言葉で記者ブリーフィングをスタートした。

学校再開ガイドラインが強調するのは、保健管理の徹底だ。12ページのうち、半分以上を保健管理の具体的な対応に割いている。

まず、手洗いや咳(せき)エチケットに加え、毎朝の登校時に、児童生徒の検温と風邪症状の確認を徹底するよう、学校現場に求めた。平山課長は「一度感染が始まると非常に感染力の強いウイルスであることを踏まえ、体調チェックをしてから集団活動に入ってほしい」と説明する。多くの児童生徒が手を触れるドアノブ、手すり、スイッチなどは、地域の実態に合わせて、消毒液で清掃することも明記した。

なによりも強調しているのは、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が集団感染の起きる要件として示した、3つの条件が重なる場面を学校現場に作らないことだ。3つの条件は「密閉空間であり、換気が悪い」「手の届く距離に多くの人がいて、密集度が高い」「近距離での会話や発声がある」を指す。

この3条件を回避するため、ガイドラインでは、(1)換気の徹底。可能であれば、教室で2方向の窓を同時に開ける(2)近距離での会話や発声の際にマスクを使用する――と具体的に示した。

平山課長は「3条件のうち、密集度については、学校の場合には限界がある。このため、飛沫(ひまつ)を飛ばさないためにマスクの使用をぜひお願いしたい」と話し、マスクが入手困難な状況を踏まえ、手作りマスクを家庭や地域で作り、児童や生徒が使うように促した。

出席停止については、感染が判明した場合や濃厚接触者に特定された場合に加え、基礎疾患がある人は症状が重篤になりやすいとの報告を踏まえて、基礎疾患や医療的ケアが必要な児童生徒についても、出席停止または校長が出席しなくていいと認めた日として取り扱えるよう、ガイドラインに明記した。

また、部活動について、平山課長は「運動する前後の活動が、3条件が重なる可能性が非常に高い」と指摘。ガイドラインでは部室の利用について「短時間の利用としたり、一斉に利用しない」も明記した。

学校給食についても、配膳する児童生徒の健康観察を一層強化し、飛沫を飛ばさない工夫として、例えば、机を向かい合わせにしない、会話を控えるなど、具体的な対応を求めた。

臨時休校の判断基準

臨時休業の実施に関するガイドラインは、いったん再開した学校が、どういう場合に再び臨時休校に踏み切るべきなのか、その判断基準を具体的に示した。平山課長は「『児童生徒に感染者が1人出たから、すぐに臨時休校』とは考えていない。リサーチをきちんとしたうえで、必要で適切な規模で、出席停止もしくは臨時休校を判断してもらうのがいい。そういう観点で書いている」と説明する。

質疑に応じる田中義恭・初中局教育制度改革室長、平山直子・初中局健康教育・食育課長、滝波泰・初中局教育課程課長(左から)

ガイドラインの背景にあるのは、専門家会議が3月19日に示した「状況分析・提言」だ。爆発的な感染拡大(オーバーシュート)の発生を想定して、地域別の感染状況を「感染状況が拡大傾向にある地域」「感染が終息に向かい始めている地域、ならびに一定程度に収まっている地域」「感染状況が確認されていない地域」の3つに分け、状況に応じて対策をとるよう提起。「感染状況が拡大傾向にある地域については、一定期間学校を休校にすることも一つの選択肢」と明記している。

実際に、児童生徒や教職員の感染が判明した場合、どうするのか。ガイドラインによると、学校設置者は、感染者の症状、学校内の活動の様子、接触者の多寡、地域における感染拡大の状況、感染経路などを総合的に考慮し、都道府県などの衛生主管部局と十分に相談し、「感染した児童生徒や濃厚接触者の出席停止のみ」か「学校の全部または一部の臨時休業実施」かを判断する。

このガイドラインの狙いについて、平山課長は「感染した児童生徒が、どの程度活動したか。濃厚接触者がどのくらいいるか。感染経路は明らかなのか。いろいろなことを総合的に勘案して、必要な規模の臨時休業、もしくは本人や濃厚接触者の出席停止のみにとどめるという措置を検討してほしい」と話した。

□  □  □

2つのガイドラインの概要説明に続き、記者団との質疑応答が行われた。出席者は、平山課長のほか、滝波泰・初中局教育課程課長、田中義恭・初中局教育制度改革室長。主なやりとりは、次の通り。

〈学校の再開にリスクはないのか〉

3つの条件がバラバラではなく、重なったときに、感染のリスクが高まるというのが専門家会議の見解です。これは教室の換気を十分にすること、飛沫を防ぐためにマスクをすること、普段の生活でも密着密集を避けることで十分可能だと思っている。(平山課長)

〈学校現場で、3条件が重なると想定される場面はどこか〉

閉め切った教室に大勢が密集して、大声で話している状態が相当する。(平山課長)

運動部の部活動であっても、屋外であれば換気はいいが、屋外に出る前後に、狭い部室で大勢の部員がわいわい楽しく話している場面は3条件が重なる。文化部の活動でも、吹奏楽や合唱の練習を閉め切った部屋でやれば、3条件が重なる可能性はある。(田中室長)

柔道の組み手や寝技のように、互いに近接した距離で組み合うといった場面でも注意が必要だ。(滝波課長)

〈休校のメリットとデメリットをどう考えているか〉

休校措置を通じて、子供の感染に対する教育関係者の意識が非常に高まったと思う。この高まりを一切緩めることなく維持してもらい、万全の感染症対策をして、学校再開の日を迎えてほしい。

休校を通じて児童生徒に与えたストレス、学習の遅れというデメリットも、教育関係者は非常に感じていると思う。集団活動によるリスクをいかに抑えながら、子供の学びを保障していくのか。このバランスの問題だと思う。子供の学びを保障して、心身共に健康な生活を送ってもらう、学校・家庭・地域を挙げて、感染症対策に取り組むことが絶対に必要だ。(平山課長)

〈今後の学校への支援策をどう考えるか〉

いま与党で経済対策を検討している。その提言を踏まえて、文科省でも財政当局と相談しながら何ができるか検討したい。与党では、出席停止になった児童生徒に学習の機会を保障するため、遠隔教育の整備などの指摘が出ている。(平山課長)

〈一斉休校を要請した2月28日付通知と、今回の臨時休校を巡るガイドラインで、休校の判断基準が違うのではないか。どのように変わったのか〉

新型コロナウイルス感染症に対する分析が相当進んできた。専門家会議からは「3条件が重なると感染するリスクが高い」と明確に指示を受けている。2月の段階では、未知のウイルスでどうなるか分からないところもあった。それから事例が蓄積され、以前よりもきめ細やかな対応が可能になってきたと思う。

感染した児童生徒がどのような行動をしたのか十分に分析した上で、当該の児童生徒と濃厚接触者の出席停止でいいのか、学級閉鎖や学校全体の休校が必要なのか。それを学校設置者が判断するのがいいと考え、今回の通知の書きぶりになった。(平山課長)

〈休校の判断基準は緩和されたのか〉

緩和したとか、強めたとかいうことはない。ガイドラインでは、休校を判断する際に、具体的に考慮すべき要素をきちんと示したと思う。例えば、症状があるかないか、感染経路がどうなっているか、いま分かっている知見を踏まえ、地域の保健衛生部局と相談した上で、正確に判断するよう求めている。

それは、隣の学校で感染者が出たから休校するといった判断ではない。例えば、千葉県市川市では、政府が要請する前に、北海道の次に一斉休校を決めたが、地域全体の感染の広がりをみて判断したと理解している。(平山課長)

〈再度の休校判断について、感染者数などの目安を提示する考えはあるのか〉

出すつもりはない。新型コロナウイルス感染症には無症状の感染者があり、症状の出ていない児童生徒が他の人にどのくらいの強さで感染させるのか見解が分かれている。家庭内で児童生徒が感染し、その児童生徒だけを出席停止にして、学校はそのまま開校し続けた事例もある。いろいろな要素が複雑に絡み合って感染が広がっており、(感染者数など)一律の基準は出せないと現時点では考えている。(平山課長)

〈学校再開と感染者が出たときの再度の休校判断は自治体に委ねられている。自治体が判断するときの難しさについて、文科省はどう認識しているのか〉

保健衛生の観点からは、それぞれの地域で学校外での感染状況もみながら判断する必要がある。クラスター(集団感染)の発生状況や感染経路などは、地域の保健衛生部局がもっとも把握しているはず。休校の判断については、各地の情報や事例を文科省で集めているので、必要に応じて相談に乗ったり助言したりしたい。(平山課長)

次のニュースを読む >

関連
関連記事