個々の伸びをみる埼玉県学力調査 県外でも導入広まる

個々の学力の伸びを測ることができる埼玉県独自の学力・学習状況調査を、県外の自治体が利用する動きが広まっている。来年度からは新たに鳥取県と島根県益田市が導入を決めた。従来の学力調査と一線を画す学力調査が広まる理由はどこにあるのか。その理由を探った。

2015年度から始まった「埼玉県学力・学習状況調査」は、さいたま市を除く県内の公立小中学校の小学4年生から中学3年生を対象に、小学校は「国語」と「算数」、中学校は「国語」「数学」「英語」の各教科で実施している。

個々の子供を継続的に追跡していることに加え、英語民間試験などで利用されている項目反応理論(IRT)に基づき、出題する全ての問題に同一の尺度で難易度を設定しているため、個人や学校ごとの学力の伸びを測れるなどの特徴がある。

IRTによる大規模な学力調査を実施しているのは世界的にも先進的で、経済協力開発機構(OECD)のアンドレアス・シュライヒャー・教育・スキル局長は昨年開かれた国際シンポジウムで「ワールドクラスの優れた事例だ」と高く評価した。

現在、同調査は埼玉県だけでなく、他の自治体でも活用が広まっている。すでに導入している宮城県白石市、福島県、高知県梼原町、北川村、大川村、三原村、広島県福山市の7自治体に加え、来年度には新たに、鳥取県と島根県益田市が導入を決定。他の自治体でも活用に向けた動きがある。

都道府県の参加としては福島県に続き2例目となる鳥取県では、来年度、試行的に鳥取市と米子市の小学4~6年生に実施し、再来年度には県内全ての市町村に広める考えだ。これまで、県としての独自の学力調査は実施しておらず、一部で独自に学力調査を実施している市町村もあったが、学校の働き方改革を推進する観点から見直しを迫られていたことも導入への追い風となった。

県教委小中学校課の岸田靖弘・学力向上担当係長は「規模が小さく、子供も少ない鳥取県では、そのスモールスケールを生かしたきめ細かな指導に力を注いでいる。一人一人の学力が前年よりどれくらい伸びたかをみる埼玉県の学力調査は、他の学力調査では分からないものがみえると考えた」と導入の経緯を語る。

市内に小規模校がある益田市では、来年度に小学4年生から中学2年生までで実施するが、中学生については英語を実施しない。

市教委学校教育課の森脇達也・学力育成推進室室長は「さまざまな規模の学校があるにもかかわらず、これまでの学力調査のように、平均点だけで学力を分析することには限界があった。個々の子供の伸びを確認できるようになれば、適切に学校で取り組みを振り返ることができる」とメリットを強調する。

また、埼玉県教委の鮫島弘樹・義務教育指導課学力向上推進担当指導主事は「参加した自治体はいずれも、子供の学力がどれだけ伸びたかを測るという調査の趣旨に賛同してくれている。スケールが大きくなれば、学校の規模や地域性による違いなどもみえてくる可能性がある」と期待を寄せる。

15~17年度まで埼玉県教委に出向し、「埼玉県学力・学習状況調査」の推進を担当した文科省高等教育局の大根田頼尚・専門教育課専門官は「子供の学力を評価する際、平均より高いか低いかだけでなく、その子がどれだけ伸びたかといった変化にも着目する必要がある。IRTはCBTとの相性もよい。『1人1台』が現実となれば、自治体を超えてこのデータを利活用して、さまざまな分析ができるようになるのではないか」と指摘する。

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