【学校再開に備える】時差通学から入試まで 高校の課題

新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の感染拡大が続き、4月から本当に学校を再開できるのか、全国の自治体は難しい判断を迫られている。特に高校では、通勤時間帯を避けた時差通学への対応から、就職や大学入試への影響まで、さまざまな課題がある。全国高等学校長協会(全高長)会長の萩原聡・東京都立西高校校長に、学校再開に向けた今後の見通しを聞いた。


通勤時間帯を避けた時差通学を実施

文科省の方針を踏まえ、都教委は3月26日に、学校再開に向けたガイドラインを都立学校に通知した。しかし、その後、都内の感染者数は跳ね上がり、記者会見で小池百合子都知事はロックダウン(都市封鎖)の可能性に言及。当初の方針だった4月の学校再開は5月の連休明けまで延期されることになった。

学校再開に向けた高校の課題を話す全高長会長の萩原校長

萩原校長は「感染の終息に見通しが立たない。長期化すれば学校教育が成り立たなくなる状況にある」と危機感をあらわにする。

都教委のガイドラインでは、通勤ラッシュを避けて登下校する「時差通学」の実施が求められた。同校では、休校に入る直前の2月下旬、登校時間を午前10時とし、授業時間を40分に短縮した時差通学を2日間試行していたが、実際に行ってみると、下校時刻が帰宅ラッシュと重なってしまうことが明らかとなった。

国が企業にオフピーク通勤を呼び掛けた影響もあり、現在はラッシュ時間がさらに予測しにくくなっている。時差通学を実施した結果、公共交通機関が混雑する時間帯に登下校させれば、感染リスクはかえって高まってしまう。

そこで同校では、4月から学校が再開できた場合には、生徒の通学ルート上にあるターミナル駅での乗り換えなども踏まえ、再開後の登校時刻は試行時より30分早め、午前9時半に設定。午後4時には完全下校とし、多くの生徒がラッシュ前に帰宅できるようにする予定だった。

萩原校長は「時差通学や分散登校は、学校の所在地や公共交通機関の状況で変わってくる。通勤と通学の時間をできるだけ分けられるように、各学校で判断する必要がある」と話す。

4月も休校で新学期の学習に大きな影響

4月からの学校再開に向けて、同校では、時差通学中も授業は従来通り1日7時間とし、40分の短縮授業で乗り切る方針だった。そうしなければ、科目数が多い高校では、時間割の調整が難しいという。

中でも懸念されるのは、感染拡大が収まらず、学校再開が延期になった場合の学習への影響だ。

萩原校長は「3月までの臨時休校は1年間の復習を中心に課題を出せばよかったが、4月からは学年も上がり、新しい内容を学ぶことになるので、課題を与えるだけでは難しくなる。特に新入生は、高校での学び方についてガイダンスを受ける機会がなく、高校の学び方をどう習得させればよいのか悩ましい」と打ち明ける。

また、部活動の練習も実質的にできなくなる。例年、4月下旬からは全国高等学校総合体育大会(インターハイ)の地区予選が始まる種目もあるが、休校により長期間にわたって練習もできず、体を十分に動かせていない状況で、いきなり試合に臨むことは現実的に厳しい。

さらに、このまま感染が終息しなければ、運動会や文化祭、修学旅行など、さまざまな学校行事が大きな見直しを迫られることになる。

こうした課題を踏まえつつも萩原校長は「学校の教育活動よりも子供の健康や安全を最優先にしなければならないことは明白だ。病院や福祉施設でクラスターが発生している状況で、国や自治体が示した感染防止策を取らずに、学校がクラスターとなってしまうことだけは絶対に避けなければならない。地域や生徒の状況に応じて、校長のリーダーシップの下で学校が判断をしていくことが重要だ」と強調する。

就職や進学への懸念、入試改革にも一石投じる

長期化によって経済が停滞すれば、高校生への進路にも影響が出る。すでに企業での採用取り消しが懸念されているが、今後は、高校生に対する求人募集が一気に減少する恐れがある。また、保護者の経済状況が悪化したことにより、進学を断念する生徒も出てきかねない状況だ。

萩原校長は「高校生の就職先が確保できるのかを一番心配している。高校が企業にお願いしようにも、企業も厳しい状況がある。国の経済対策や労働政策を注視していきたい。自治体による就学支援のさらなる充実も必要だ」と強調する。

また、新型肺炎は、日本の大学入試を巡る議論にも一石を投じる可能性がある。

全高長では昨年9月、大学入学共通テストでの英語民間試験の活用は、現状では問題が多いとして、文科省に対して実施見送りを要請。萩生田光一文科相は、今年4月から予定されていた英語民間試験の活用延期を表明し、文科省に「大学入試のあり方に関する検討会議」が設置された。

検討会議の団体代表委員でもある萩原校長は「もし予定通り英語民間試験の活用を開始していたら、この新型肺炎で学校の休校や民間試験そのものの中止が相次ぐ中、さらなる混乱が生じていただろう。検討会議においても、大規模な感染が発生した場合の大学入試の対応策が議題に上がるかもしれない」と指摘した。

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