高大接続改革の進め方に「反省」表明 入試改革検討会議

今後の大学入試について議論する文科省の「大学入試のあり方に関する検討会議」の第5回会合が4月14日、WEB会議で開かれ、大学入学共通テストにおける英語民間試験の活用延期と記述式問題の導入見送りという大きな混乱の原因は、大学入試改革を通して高校教育を変えていこうとした、いわゆる「高大接続改革」の進め方にあったとして、当時の経緯をよく知る委員から「本末転倒だった」「責任を感じている」などと明確な反省が表明された。高大接続改革が2020年の共通テスト導入という時間的な制約の中で進められ、結果として準備が不十分だったことが露呈し、大学入試を巡る社会的な大混乱を引き起こしたとの認識でほぼ一致した。今年1月にスタートした検討会議は、最初の課題だった経緯の検証について、議論の山場を迎えた。

WEB会議で行われた検討会議。左から2人目は萩生田光一文科相

この日の会議では、まず島田康行・筑波大学人文社会系教授が、共通テストにおける国語の記述式問題について意見を表明。本来は高校までに身に付けておくべき「論じる力」が、大学の初年次教育に持ち越されているとのデータを示す一方、50万人以上が受験して短期間に成績提供する共通テストの枠組みで、高大接続改革が求める「複数の情報を統合し構造化して、新しい考えをまとめるための思考力・判断力やその過程や結果を表現する力などを評価」するために、記述式問題を実施することは困難だとの見解を示した。その上で、高大接続改革の議論に関わった識者の1人として、2020年に共通テストがスタートするという時間的な制約の中で、当時の議論が進んだことを指摘した。

次に、荒瀬克己・関西国際大学教授が、同じく高大接続改革の議論に関わってきた立場から、共通テストの役割について、知識や思考力を1点刻みではなく段階的に評価するかたちで「(大学入学の)資格試験にすることを望んでいた」と説明。一方で、高校教育の成果について、京都市立堀川高校で校長を務めた経験を踏まえ、「社会で生きていく上でも必要な学力で、『生涯にわたって主体的に学習する基盤』になる」と位置付け、高校教育が大学進学の準備に振り回されてしまう実情に触れた。

その上で、高大接続で共通テストを導入した狙いについて、「共通テストによって高校教育の在り方に注文を付けるというのは、よいやり方ではない」とした上で、「順番からすれば逆だが、高校教育に対して影響を及ぼそうとした」と率直に指摘。「禁じ手」と知りながら、大学入試改革を通して高校教育を変えようとした試みが高大接続改革の狙いだったと話した。

さらに、英語民間試験と記述式問題を採用した理由について、「英語の外部検定について、経済格差や地域格差に対する配慮がなかったという指摘は重い。国語の記述式について、自己採点とのぶれ(自分の解答と正答例とを比較できる力は重要だと考えるが)、民間による採点に関する守秘や正確さについての指摘も重要だ。ただ、実施するとしたら、ほかに方法がないように思われた」と述べ、当時の判断を説明した。

質疑応答では、末冨芳・日本大学文理学部教授が「2人に聞きたい。(2020年に共通テストをスタートするという)時間的な制約について、なぜ当時問題にしなかったのか」と単刀直入に切り込んだ。

島田教授は「(高大接続改革の議論には)いくつかの会議が段階的にあって、(結論が)先の会議、さらに先の会議へと送られていった。先の会議になればなるほど、(試験の内容など)具体的な議論だけになってしまい、(2020年のスタートがいいのかという)議論がなくなった」と答えた。

荒瀬教授は「高大接続改革では、会議が3つ動いた。いくつも案があったが、だんだん『これは難しい』『こちらも難しい』となり、最後に残ったのが英語民間試験と記述式問題だった。正直に言って、自分は実現できると思っていた。ここには責任を感じている」と説明。さらに、「英語が先導して、(1点刻みではなく)段階別に評価する入試を導入しようとした。これは私自身が望んでいたし、できると思っていた。昨年、それができないと、いろいろな指摘でわかった。反省している」と続けた。

次に発言した川嶋太津夫・大阪大学高等教育・入試研究開発センター長は「今後の大学入試センターの役割をどう考えるか」と聞いた。

荒瀬教授は「大きな組織になっていくのが望ましいと思っている。大学入試センターに、もっと人員と資金が注がれるのが大切だ」と答え、英語4技能試験の実施などに大学入試センターが積極的に関わっていくべきだとの見解を示した。

続けて、吉田晋・日本私立中学高等学校連合会会長(富士見丘中学高校長)は、高大接続改革に関わった1人として、「段階的評価は、私も可能だと思っていた。今後は2024年まで現状のまま続け、その間に当面は大学入試センターが英語4技能試験や記述式問題にどこまで対応できるか見極めるのがいい」と、見通しを述べた。

さらに、渡部良典・上智大学言語科学研究科教授は「大学入試に力を持たせて、高校教育に影響を与える。この考え方は健全ではないと思う。それを踏まえて、今後を考えるべきだ」と発言。島田教授も「共通テストあるいは大学入試で高校教育を変えるのは、本末転倒。それは私も同じ考えだ」と同調した。

萩生田光一文科相は「さまざまな議論があるが、方向性が出てきた。過去の議論に加わってきた島田、荒瀬両委員から振り返りがあったのはよかった。(英語民間試験と記述式問題を巡る経緯は)問題意識を持ちながらも、だんだん隘路(あいろ)に入ってしまったのが現実だったと思う」と総括した。

こうした議論を経て、検討会議では、昨年、学校現場に大きな影響を与えた英語民間試験と記述式問題を巡る混乱は、大学入試改革を通して高校教育を変えていこうとした高大接続改革の考え方と、それを2020年に共通テストを導入するという時間的な制約の中で実現しようとした進め方に、基本的な問題があったとの認識がほぼ固まってきた。

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