「自己調整力を高める機会」 教諭と保護者がオンライン対談

休校期間中の自宅学習の進め方に不安やストレスを抱える保護者に向けて、オンライン対談イベント(オリジナル子育て主催)が4月18日と19日の両日に開かれた。全国から計150人の教育関係者と保護者らが参加し、ビデオ通話やチャットを使って活発に意見を交わした。初日は、ICT教育の先進校として知られる東京都小金井市立前原小学校の蓑手章吾教諭と、長男の不登校をきっかけに、公教育と保護者独自の学校外教育を組み合わせる「ハイブリッドスクーリング」を実践する松浦真氏(「G-experience」プログラムディレクター)がメインスピーカーとなり、教員と保護者双方の視点から、休校期間中の家庭学習の在り方を話し合った。

「自分で学んでいけるようになってほしい」と語る蓑手教諭

蓑手教諭は自身が受け持つ5年生児童を対象に、授業支援ツール「スクールタクト」を使用し「オンライン自習部屋」を学年合同で運営している。オンライン自習部屋は、児童が自分で「めあて」と呼ばれるその日の目標を設定し、夕方に実際に行動した結果を振り返る取り組みで、各自がオンライン上に写真やテキストを使った自由形式の日報を投稿する。

蓑手教諭は「オンライン自習部屋への参加はあくまで任意で、目標も課題も教員からは与えていない。宿題のような課題を出すと、ただでさえストレスの多い外出自粛生活の中で、保護者と子供の衝突を増やすリスクがある。今の状況を楽しむために、あえて自分の好きなことを自由にやって良いルールにしている」と語った。

実際に児童らが「めあて」として設定している行動は、漢字の練習や計算ドリルなどの教科学習だけでなく、人気アニメの絵を描く、ローストビーフを作る、ピアノで好きな曲を演奏する――など、バラエティーに富んでいる。オンライン自習部屋を通じて、児童同士がお互いの「めあて」や振り返りを共有できるので刺激になるという。日中1人で過ごしている児童もいるため、オンラインで教員や友達とつながれるのは、孤独感の解消にもつながっている。

オンライン自習部屋の時間割

以前からアクティブ・ラーニングを通じて児童の自己調整力を高めることを大切にしてきた蓑手氏は「休校期間は、むしろ自己調整力を高めるいい機会。遊びでも良いから、児童自身が計画を立ててやりたいことに取り組むという経験が積めたらいい」と強調した。

家庭学習の実践者である松浦氏も「やりたいことを自分で決めることが、自己決定力を高め、自己決定することがその人の幸福につながるので、自己決定の機会を与えてあげることが大切」と述べた。

松浦氏はオンラインセミナーの中で、日本の教育システムのチャートを見せながら、「小学校から高校までは、何を学ぶかは基本的に学校側から提供されるので、学びの自己決定ができる機会はとても少ない。学校の教育だけに頼っていると、子供の自己決定力が育たないリスクがある」として、家庭学習は自己決定力を高めることに主眼を置くといいと説明した。

一方で、参加した保護者からは「子供の自己決定を優先すると、教科学習がおろそかになる」「ゆとり教育のように、コロナ世代と呼ばれるようになるのでは」と不安の声も上がった。

松浦氏は「小学生のレベルで言えば、学習指導要領にある教科学習をこなすだけなら、実はそんなに時間はかからないと思っている。しかし、自分で学びたいものを見つけて自律的に学び続けていく力の方は、一朝一夕では身に付かないので、この休校期間中に自分の好きなことを通じて自己調整力や自己決定力を高めるのは、保護者が無理に教科学習をやらせること以上の価値がある」と強調した。

参加者らも活発に議論した

他にも教育関係者から、ICTの取り組みが進んでいたアドバンテージを持つ前原小の事例に対し、「児童が使えるデバイスがない家庭もあるので、1人1台が実現しないと通常の公立校での実施は難しいのでは」という質問が出された。

蓑手教諭は「状況が整うのを待つより、今できることをまずやって、解決すべき課題は走りながら考えていけばいい。実際に、前原小も休校が始まった当初は、学校の端末を持ち帰ることができず、参加できる家庭のみが参加する形でスタートしている。その後、僕が学校や教育委員に掛け合って、現在は必要な家庭には持ち帰りの許可を出せるようになったが、利用申請は80人以上いる1学年の中で7~8人だけだった」と説明した。

また蓑手教諭、松浦氏ともに、「一律ではなく、学び方に選択肢があることが大事だ」とし、今回の臨時休校をきっかけに、学び方や学校の在り方そのものについても再定義していくべき段階にあるのかもしれないと指摘した。

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