【コロナと学校】子供を守れない 養護教諭が抱く危機感

今回ばかりは子供たちを守り切れる自信がありません――。新型コロナウイルスの感染者数が全国的に増加している中での学校再開は危険だとして、一部の養護教諭らが休校の延長を求める署名活動をインターネット上で展開し、4月20日午後5時時点で1400人を超える賛同が集まっている。学校再開にはどんなリスクが伴うのか。署名活動を展開している「養護教諭有志の会」メンバーの1人である、公立小学校の養護教諭にインタビューした。


養護教諭がSNSでつながる
――署名活動を始めたきっかけは、何だったのでしょうか。
ネット署名サイト「Change.org」で行われている養護教諭らによる休校延長を求める署名活動

3月末に文科省から示された「学校再開ガイドライン」を読んだときに、「これでは子供を守るなんてとても無理だ」と感じました。その後、国が緊急事態宣言を出すなどして、休校を延長する自治体が増えたことで、正直ほっとしています。感染拡大が続いている状況で学校を再開するのは、あまりにも危険すぎます。

学校現場は3月から続く休校で先も見通せず、どの教員も学習の遅れや子供たちの様子を心配しています。しかし、日々状況が変わる中で一体何から始めればいいのか、不安ばかりが先行して、思考停止に陥っている面もあります。

学校の感染防止対策は養護教諭が中心に進めなければなりませんが、多くの学校では、養護教諭は1人だけで、相談相手が近くにおらず、情報が不足していると感じました。そこでSNSで養護教諭のグループをつくり、情報交換するようにしたのです。最初は少人数で始めたのですが、次第に大きくなり、現在は200人くらいのメンバーがいます。

SNSでつながった全国の養護教諭同士で議論しているうちに、やはり「学校再開ガイドライン」で示されている対応策は、学校が集団生活の場であることや子供の特性を考えると、実施はとても不可能であるという結論に至りました。学校再開を何とかして止めるしかない。そう考えて、署名活動を始めることにしたのです。

この状態で学校再開は矛盾している
――「学校再開ガイドライン」を実行できないと考える理由を教えてください。

学校によっては、マスクやアルコール、非接触型体温計の備品が十分にない状態です。それらを学校に優先的に配備してくれるかどうかも分からない状態では、感染防止対策を徹底できるわけがありません。

考えるまでもなく、学校は密閉、密集、密接の3密がいろんなところで発生します。学校が再開すれば、子供はうれしくて友達とハイタッチしたり、ハグしたりするでしょう。そういう行為を止めることができるのか。やめるように厳しく指導したとして、ただでさえストレスをため込んでいる子供に追い打ちをかけることにならないか。懸念は尽きません。

教室だけでなく、休み時間の遊び場所や登下校中も、子供は集団になります。もし子供に感染が確認されたら、学校内での濃厚接触者は同じ教室にいた子供だけとは限らない。そうなれば感染経路を特定することも、クラスター化も防げないと思います。

発熱などの症状が見られる子供が保健室で休養する場合も、新型コロナウイルスへの感染を念頭に対応すると、他の子供への感染を防ぐためには、風邪症状の子供と他の子供とで部屋を分けるなどしないといけません。さらに、養護教諭自身にも感染する危険があります。養護教諭の多くは女性で、子育て中だったり妊娠していたりする場合だってあります。感染リスクが高い環境で、子供や教職員だけでなくその家族も守れるのか。医療崩壊を起こさせないようにしなければいけない状況の中で、学校を再開することは矛盾しているとしか言いようがありません。

一方で、私たちは休校中の教育機会や安全の確保も重要だと考えています。ウェブをはじめとする、自宅でもできるさまざまな学習を充実させ、学校が再開しても、保護者や本人が安心できるまで自宅で学習を続けるという選択も認めるべきだと思います。また、保護者もストレスを抱え、虐待リスクが高まっています。これらへの対応は学校に丸投げするのではなく、行政が責任を持って取り組むべきです。

養護教諭の考えに耳を傾けて
――学校が再開できたとして、考えられる課題は何でしょうか。

例えば、子供に健康観察カードを提出させるとき、ふざけながら隣の子供のカードを見て「ウイルスに感染しているんじゃないの?」などとからかうようなことが起きないようにしないと、いじめや差別のきっかけになりかねません。そうした子供の言動に対して、アンテナを高くして注意深くみていく必要があります。

ただでさえ、子供たちはストレスや不安で安心して学べる状況ではありません。学校が再開したとたんに学級崩壊が起こらないかと危惧しています。

教員が感染する例も各地で起こっています。少しでも体調が悪ければ無理せず休み、周りがフォローし合えるような、職場の協働意識を高めていくことが、結果的に感染リスクを下げることになります。

養護教諭の仕事に関して言えば、健康診断が安全に実施できるのか心配です。特に学校医や学校歯科医と対面で行う内科、眼科、耳鼻科、歯科の健康診断では、問診と共に口腔(こうくう)や眼、顔、耳鼻咽頭などの健診があり、子供たちに触れるのを避けて通れません。1人の健診が終わるたびに消毒をしていますが、完全に感染を防ぐのも難しければ、子供を黙ったまま待たせることも難しいでしょう。

定期健康診断は例年、6月30日までに実施しなければならないことになっているのですが、文科省は新型コロナウイルスの影響でやむを得ない事情があれば、年度末までに実施すればよいことをすでに通知しています。しかし、健康診断の結果を踏まえ、1年間の教育活動に子供が安全で安心して参加できるよう配慮するという養護教諭の役割を十分に果たせるのかという懸念もあり、非常に悩ましいです。

きっと、今、全国各地の学校で養護教諭はこうした悩みを1人で抱えているのだと思います。養護教諭同士のつながりを広げつつ、同僚の教員も一緒に考えてもらえるようなつながりもつくる必要があります。どうか、学校の先生方には、養護教諭の考えや悩みに耳を傾けてほしいと思います。

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