休校で行き場を失くす子供たち 3keys森山代表に聞く

「家にいるのがつらい、死にたい」――。一斉休校や外出自粛が長引く中、家庭に居場所がない子供たちへの支援不足が深刻化している。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、多くの支援機関が閉鎖に追い込まれる中、何とか窓口を確保している機関には連日、子供たちの悲痛な声が寄せられている。貧困や虐待、家庭内不和など困難を抱える10代に、居場所の紹介や相談に当たるサービス「Mex(ミークス)」もその一つ。運営する3keysの森山誉恵(たかえ)代表理事に話を聞いた。


重篤な虐待が増加する可能性
森山誉恵代表理事(3keys提供)

「家にいることで、失われてしまう子供の命があることに、大人たちは真剣に向き合わなければいけない」と森山代表。

ミ―クスに寄せられる相談内容は、「自殺」「保護者や恋人からの虐待」「妊娠や性被害」が特に多い。ミークスではそういった過酷な環境にいる子供たちの声を拾い上げ、相談に応じて、適切な支援機関につなげる取り組みを続けている。

今回の一斉休校や外出自粛の影響を受け、問題は一層切実になっているという。親も子も自宅という密室で過ごす時間が増えた影響か、「虐待」についての相談がじわじわと増えているのだ。森山代表は「かなり危険な兆候だ」と危機感を見せる。

「これまで学校や職場それぞれ別の場所で過ごしていた親子も、密室で共に過ごす時間が増えている。その上、コロナの影響で給与が減ったり、最悪の場合は解雇されたりなど、経済的に打撃を受ける保護者もどんどん増えていくだろう。いら立ちやストレスの矛先が子供に向かうケースが、今後も後を絶たないと予測している」

さらに外出や通学をしないことで、家庭の中に第三者が介入する機会が圧倒的に減ることを踏まえ、より重篤な虐待被害が増加する危険性を指摘する。

一斉休校の影響が出始めた2月からこの4月にかけて、ミ―クスには家庭に居場所がない子供たちからの悲痛な声が寄せられている。その一部を紹介する。

「親からの暴言がひどい。暴力も振るわれる。助けて。親が怒鳴るから常に怯えてしまうし、食欲も無い。リスカもしてしまう。もう何もかも嫌だ」

「中一の時にできた義母とうまくやってけない。言い争いも何度もあったし、そのせいでストレスからか精神病にもなった、何度か本気で死のうとした事もある(結局怖くて出来なかったけど)ずっとずっと我慢してきてるのに、自立するまでまだまだ我慢しなきゃいけなくて、辛くて苦しいです。たすけて」

「親からの虐待に耐え続けて、言われたことも行っているはずなのに、食べもせずご飯を捨てて作り直しと、毎日のように言われるのが辛いです」

追い詰められていく子供たち

外出自粛が求められる中、繁華街や商業施設に繰り出す若者を巡っては、「危機感がない」「自分勝手だ」などと社会的にバッシングの的とされている現状がある。

「家にいることができない子供の背景まで、考えられていない。子供たちを責めるだけではだめだ」と森山代表。

そんな若者たちに向けて、さまざまな大人たちがテレビやSNSを通じて「若者の重篤化リスクは低いが、両親や祖父母、あなたの周りの人にうつしてしまう可能性もある。命を奪う可能性もある」と、声高に呼び掛ける。

これについても、複雑な思いを抱く。

「そういった子供、若者たちの中には、大人に大切にされた経験がない子も少なくない。そのため自分が大切にしたいと思える大人の顔が思い浮かばなければ、いたくもない家にいようとは、なかなか思えないだろう。これまで大人側が、どれだけ子供たちを大切にしてきたかが、表れていると感じる」

もちろん子供たちも、感染が怖くないわけではない。

「子供でも連日の報道を見ていれば不安に感じる。いまの社会はそんな子供たちに『感染するか』『家にとどまって死ぬか』、究極の2択をさせているようなものだ」と厳しく指摘する。

これまで居場所のない子供たちの受け皿となっていた自治体や民間機関は、軒並み閉鎖。何とか対応を続ける機関も、時間の短縮やスタッフの縮小などを実施し、支援が行き届いていないのが現状だ。それに加え、子供たちが連日足を運んでいた繁華街や商業施設も休業が増え、家庭の外に居場所を見つけるのは日ごとに難しくなっている。

支援機関が機能不全に

では家庭にいられない子供たちはいまどこで、何をしているのだろうか。森山代表によると、友達や恋人の家で過ごしたり、カラオケルームに長時間こもったり、親と会わないようにさらに部屋に引きこもるなどして、何とか忍んでいるケースが多いようだ。しかしそこにはリスクがある。

「人の目が行き届かない密室にこもっているため、性被害のリスクが高まる。さらにカラオケなど商業施設に滞在するためには、お金が必要だ。長時間過ごすために、援助交際に手を出して、その料金を捻出するケースもある」

現状を、東日本大震災直後の被災地の状況と対比してこう話す。

「震災直後、被災地を中心に虐待の報告が一時的に増加した。当時は被災地外のエリアから支援ができたし、ボランティアや寄付にも期待できた。ただ、今回は被害が日本全国、世界中に及んでいる。誰かに手を差し伸べられる、余裕のある人がいない。支援できる機関も人も圧倒的に足りない、とにかく危機的状況だ」

しかしこうやって過ごす今でも、助けを求め、危険な場所をさまよう子供たちは存在する。支援が必要な子供は、今後さらに増加するだろう。そうなれば対応する機関の数と質の充実が求められる。

「規模を縮小しながらも何とか続けている機関では、すでにここ1カ月間だけで、保護者からの相談が大幅に増加していると聞く。手が回っていない状況で、子供の相談に当たるより前にパンクする可能性が高い。もう支援機関の機能不全は始まっている」

ネット授業で子供に日常を

このような過酷な状況において、何が学校に求められるのだろうか。

「今は学校を通常再開するのは難しい。ただオンライン授業など、ネットを開けばいつもの学校があるという環境をできるだけ整えてほしい。ほんの少しでも日常を感じられるだけで子供自身も保護者も、心理的に落ち着くだろう」

特に虐待などの環境で育った子供たちは学習基盤が整っていないことも踏まえ、学習補償も重要だと強調する。

一方で貧困や虐待を受けている子供たちの感染リスクについては、特に配慮が必要とも説明する。

「外見から判別がつかなくとも、体力がなかったり、基礎疾患を抱えていたり、重篤化しないとは言い切れない。いま一番いいのは先生方が工夫をして、学校に行かなくても子供たちがどれだけ日常を感じられるか、学習面も心理面もケアすることだろう」

そして、「学校ももちろん社会全体の大人が、子供をコロナからも、虐待や犯罪被害のリスクからも守る方法を考えなければいけない。いかに弱い立場にいる子供たちにまで想像力を働かせて、守れるか、大人自身の底力が試されているときだ」と、森山代表は言葉に熱を込めた。

【プロフィール】

森山誉恵(もりやま・たかえ) 慶應義塾大学法学部卒業後、子供たちの生まれ育った環境によらず、必要な支援が行き届くことを目的としたNPO法人3keysを設立。東京都共助社会づくりを進めるための検討会委員。全国子どもの貧困・教育支援団体協議会幹事。現代ビジネスでの連載をはじめ、子供の格差の現状を講演・執筆・メディアなどで発信中。

『新型コロナウイルス長期化を踏まえた特設ページ』

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