【コロナと学校】N高生が感染経路の分かるアプリ開発

新型コロナウイルスの問題を、高校生がプログラミングで解決――。広域通信制高校のN高校に通う加藤周さんが、新型コロナウイルスの感染経路の特定に役立てようと開発したスマホアプリ「足あとトラッカー」が注目を浴びている。加藤さんにインタビューした。


感染経路が分かる「足あとトラッカー」

開発した「足あとトラッカー」について説明する加藤さん(ビデオ会議システムで取材)

北海道函館市に住む加藤さんが開発した「足あとトラッカー」は、GPSを使ってその人がその日に行動した経路や時刻をマップ上に記録できる、iPhone用のスマホアプリだ。

新型コロナウイルス感染が分かった場合、保健所は感染した人に2週間ほど前からの行動を聞き、感染経路の特定を行う。詳細な記録がすぐに確認できるようになっていれば、正確な行動をたどれ、感染経路も特定しやすくなる。

そう考えた加藤さんは4月になってからアプリ開発に着手し、わずか10日ほどで完成させた。4月12日にリリースされると、瞬く間にダウンロード数は9000を超え、ツイッターやアプリのダウンロードサイトで反響を呼んだ。

こうした「足あとトラッカー」の評価に対して、加藤さんは「これまで開発したアプリの中で一番ダウンロードされ、応援のメッセージや使った感想も多く寄せられた。しかし、9000ダウンロードでは拡大防止に寄与するという目標は達成できない。もっと多くの人にアプリを活用してもらい、感染リスクへの意識を高めてほしい」と話す。

学びがシフトするチャンス

加藤さんはこれまでに13個のアプリをリリースしている。例えば、質問に答えるだけで読書感想文が作れるアプリや、整数で割り切れない場合に余りの数が表示される電卓アプリなど、自身が「あったらいいな」と思えるものを多く手掛けてきた。

そんな加藤さんがプログラミングと出合ったのは、小学4年生のとき。母親の勧めで、プログラミング教育のイベントや教材開発などを行う「Life is Tech」主催の、中高生向けの体験会に参加したことがきっかけだ。コードを入力した通りにプログラムが動いた瞬間の達成感や、アプリがダウンロードされたり、ユーザーからフィードバックのコメントをもらったりしたときのうれしさは、何物にも代え難い財産になったという。

そして、中学2年生になった加藤さんは、一般社団法人の「未踏」が主催する17歳以下のクリエイター支援プログラム「未踏ジュニア」に応募し、ウェブページを作成する際の必須となるHTMLを、ブロックをつなげるだけで簡単に組める「DrawCode」を提案。テキスト入力する必要がなく、初心者でもHTMLを手軽に扱える点が高く評価され、未踏ジュニアの参加者の中でも優秀な人が選ばれる「スーパークリエイター」に認定された。

その未踏ジュニアの「先輩」にN高校の生徒がいたこともあり、加藤さんは一般的な高校に通うよりも自由に時間を使える通信制高校を、進路の選択肢として考えるようになった。中学3年生だったときの担任が、通信制高校に入ってプログラミングにもっと力を入れたいという思いを理解してくれたこともあり、N高校に入学を決めた。

加藤さんは「今年1月に沖縄でのスクーリングに参加して、初めて友達と出会った。通信制高校に通ってくる生徒は普通の高校にはいないようなすごい人材がいっぱいいると感じた」とN高校での学びを振り返る。

コロナ危機で多くの学校が休校となり、教室での授業ができなくなる中、もともと大半の授業をオンラインで実施しているN高校では、休校することなくいつも通りの授業が続いている。

加藤さんは「高校の学びであれば、もっとオンライン授業や通信制のような選択肢が増えてもいいと思う。オンラインならば、専門家から高度な内容を直接学ぶこともできる。この新型コロナウイルスは、そういう学びにシフトするチャンスになる」とみている。

プログラミングに親しめる環境を

小学校では今年度から新学習指導要領が全面実施を迎え、プログラミングが必修になった。コンピューターが得意な子供も、そうでない子供も、全員がプログラミングを学ぶことになる。

プログラミング教育の在り方について、加藤さんは「用語や言語の書き方などから入ると、難しいと受け止められてしまう。まずはやってみて、できたアプリを友達同士で見せ合うことなどから始めれば、きっとプログラミング人口は増える。プログラミングにはパソコンが欠かせないが、パソコンがない家庭も多い。子供がプログラミングに興味を持ったら、保護者はスポーツを習わせるような感覚でプログラミングに親しめる環境を用意してほしい」とアドバイスする。

加藤さんは将来、アプリ開発を手掛けるクリエイターとして自立することが当面の目標だ。今のところ、大学は必要になったら後からでも学べると考え、進学するつもりはないという。

「いつか米国の実業家で、テスラ社CEOのイーロン・マスクのように、誰もが考えもしないようなことで社会を変えていく仕事をしたい」と夢を語った。

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